「先ずは、
「どりょうこういし?」
「身体に異常がないか…と、長さ・体積・重さを測る専門の医官の事よ。アタシのような上級な妃は、定期的に診てもらうのが決まりなの。生まれも育ちも恵まれた妃候補は心配いらないけど、稀に妓女から妃候補として引き抜かれる娘も居るからねぇ…。」
自分の身体を売っていた女性を「妓女」と言うらしい。何処の馬の骨かも分からない男性と交わる事で、病気を移されて死んでしまった人も居たとか……。
「妓女出身の子は、色んな殿方と性接待を交わしているから、性病を持っている事も少なくはないの…。」
「どんなに美しい容姿をしていても、身体が寄生されてるなら意味がないのよねぇ……。だーかーらー、アンタも万が一って事がないように…診てもらうのよ」
「あ、あ、あたしそんな病気なんて持ってないよ!?。ファ、ファーストキスだって…ま、まだしてないしぃ~……ごにょごにょ…」
「あーそうよねぇ~♪、まだ
「な、な、な、なによーーー怒」
「そういえば、
「ほら、動物ですって~、豚だから丁度良かったんじゃないの?」
「あら、
「怒!!
「
夜も更けたというのに、麒麟宮は賑わい、今まで静寂に包まれていた後宮に明るい兆しが見えていた。
。
。
ガラガラガラガラ─────
馬車の中では年老いた医官三名と、蒼く長い髪の毛を左右に二つ、輪っかに結った、口許を白い布で覆った青年が一人……。落ち着いた様子で瞳を閉じながら、老医達の話に耳を傾けていた。
「いや~、
「それに、動物まで診れるとは……、
「そしてこの中性的な美しさ……、妃達も嘸かし御喜びになるでしょう。」
「いえ…、先生方には敵いませんよ」
「はっはっは…──その上、謙虚と来ましたか……」
「
「そう言えば…、
「ええ!?、麒麟宮はあの気の強い妃しか居らぬ筈では……」
「それが……何やら訳ありらしく……。」
「噂によれば、陛下の正妃として決まっているとか……いないとか」
「そうだとしたら一大事ですな」
「しかし……、また
「?……
「嗚呼…、
「
「毒殺……?」
「正妃として選ばれる前夜に、何者かが妃に毒を盛ると言う……」
「毒味役もお手上げな難関事件……と言うより、呪いですな。」
「だとしたら……、その麒麟宮の…正妃として決まっているかもしれない妃は……」
「……殺されるかもしれませぬ」
その瞳は、深みがかかった真紅色だった。