宮殿にて─────
「───この香り……」
鼻をすんすんとさせ、
何処か懐かしいような……、しかし嗅ぎ慣れない
その様子に周りに居た家臣達も
「へ……陛下!!…嗅いではなりませぬ!!───ヴヴ……ッ!」
バタン!────と、家臣が一人…二人と、次々と倒れていく。
「これは…!───媚薬?」
「キキッ!」
「…お前は……────」
「キィーイ?」
首を傾げながら、
「うへ……うへへ……
抱き起こした家臣の口から聞き慣れない名前。
「…
「キィ!キキキキッ!キィーキッ!」
「……着いて来いと……申すのか?」
「キィ!」
「まさか……
。
。
「覚悟────」
「ひえぇぇぇぇ!?」
どうしよう……、
「……」
おばあちゃん……こんな時、おばあちゃんだったら────
《冷静な相手程、隙がねぇ……───だからこそ、油断させるんじゃ……、それも……突拍子もない事でな》
(突拍子もない……───そうだ!!)
「…お猿のお尻は赤いのよ~♪なんてプリプリ桃のケツ~♪ずる賢いのは親猿がぁ~♪しっかり教育したからよぉ~♪あーらよいさモンモンキッキッ♪みんなお尻を出しましょいっ♪喧嘩した相手ともぉ~盃交わせば仲直りぃ~♪お友達ぃになりましょ~♪」
少し頬を紅潮させ、歌い切った
「あ……あれ?」
「プッ────…あははははっ!!ははははっ!はははっ!!ああ……ッ!!腹部が……腹部がっ!!」
「笑って……る?(え……意外に笑い上戸?とゆーか…笑いのツボが浅め?)」
「……ったく、笑い上戸なのは昔から変わってないわね」
「あ!
「なんとかね…───あんたは……大丈夫そうね」
「えっへん!この通りっV」
「なぁーに威張ってんだか……。それより…───随分と手荒な真似するじゃないの?。どっかの馬鹿な
「フフフ……──彼等と一緒にされては、少々困りますかね」
「東を放棄してまで、此処に来た理由は何?。
「いや…
「何ですってぇ!?どの口がそういう事言ってんのかしらぁ~!?怒」
「いででででで!?ひょっほぉー!!ほおひっはははひへほ~!!(ちょっとぉー!!頬引っ張らないでよ~!!)」
「驚きました……、
「はあ!?懐くぅぅ!?」
「これの何処が懐いてるの!?」
「ふふ、今は気付かなくても大丈夫ですよ」
「なんか……不思議な人だね……」
「此奴だけは、なーんか喰えないのよねぇ…。ああ……猿を手懐けてるだけでも恐ろしいって言うのに────ん?」
「キキッ?」
「わあ~、小猿だ~!可愛いっ」
「キィ~♪」
「ぎゃあああああああああ!?ちょ、ちょちょちょちょちょっと!!!この小猿なんなのよーーーーッ!!!!?」
「!…、お師匠!」
「おししょう?」
「キィーイ!キキッ!」
小猿が
「───何をしている」
肩に置かれた力強く優しい手─────
庇うように、高貴な衣の袖で顔を隠された。風で靡く、美しい艶のある黒い髪───
そっと鼻腔に運ばれた、脳内に浸透するような白檀香の香りに
自然と紅潮する頬────そのときめいた人物の胸に、自然と顔を埋める体勢となっていた。
「……
「大丈夫か?
「あ、あ、あ、あたしはだ、だ、だ、だ、大丈夫!!!!」
「そうか……、なら
そう呼ばれた
「…お久しぶりです、
「……あの悲惨な……事件の事か───」
「今まで、正妃として迎えられようとしてきた妃達だけが、必ず毒を盛られて死んで行ったと……老医達に聞かされました。……もしそれが必然であるとならば……、そちらの妃は殺されます。」
「え…!?」
「しかし、妃達に毒を盛った下手人は捕らえた……。もうあの様な事は…起きない筈だ──」
「……それが偽物で、また別に指揮している者が居たとしたら?」
「何──!?」
すると───
(毒殺事件……?)
「……」
「ねぇ、
そして蚊の鳴くような声で
「ごめんなさい…………」
そう呟いた