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第17話 「赤蛇」

南にある 火龍果ほりゅうか国と呼ばれる、常夏の国のとある酒場────

そこでは、国一番の盗賊集団・ 赤楝蛇ヤマカガシの一味が噂話に花を咲かせていた。


「おい、白梨はくり国に伝説の美豚ビトンが現れたってウワサ本当かよ?」


「え、でも、それは皇帝が自ら処分したんじゃないのか?」


「ひぇ~~勿体ねーの。美豚ビトンを喰えば、願いが叶うってーのに…」


「まあ、俺等の様な盗賊には無縁の話だな……」


ゴクゴク────カタン!


「…美豚ビトンだ?」


酒を片手に…目付きの悪い"ヤマモモ"のような見た目のこの男は、 赤楝蛇ヤマカガシの一味の一人、赤蛇チージャという名の男だ。

耳には小さな輪っかの形をした耳飾りを沢山付けており、近寄り難い雰囲気を醸し出している。

そんな彼に臆せずに話せるのは 赤楝蛇なかまくらいであろう。


「お、赤蛇チージャも興味あるか?」


仲間の一人が豪快に笑うと、赤蛇チージャの隣に座っていたヨボヨボの老人が震える手で酒を呑み干した。


「アレじゃ………美豚ビトンは生きて……おるzzz……」


「「「「えぇぇぇ!?ホントですかかしら!!!」」」」


「……爺さん、起きろ」


赤蛇チージャかしらと呼ばれた老人の鼻提灯を割ると、老人は「ハッ……」として我に返る。


「よし、お前達……漸くワシらの時が来たのじゃ……。美豚ビトンを手に入れ……あの達に仕返しをするのじゃ!!。ワシをこの様な老人の姿に変えた事を後悔させてくれる……zzz」


「うっひょー!!!、美豚ビトンが生きてるって事は……」


「一攫千金も夢じゃない!!!」


「女にもモテ放題!!」


「酒も飲み放題!!」


酒を片手に大はしゃぎをする 赤楝蛇ヤマカガシの一味────一人を除いて……


(…が護ろうとした餓鬼が、この世界に……)







グッギョグルゴオオオオオオオオオ


「お……お腹空いた……」


夜の麒麟宮に神美かみの腹の虫が響き渡った────


(お風呂に入ってこいとは言われたけど……この空腹じゃ……湯船で気絶しそうだよ……)


重い足を引きずりながら湯浴み場に到着すると、先客が居たのか翡翠色の質素な衣が綺麗に畳んで置いてあった。


「この、衣の色……くんくん──そしてこの甘い香り………もしかして、黄龍ファンロン!!?」


神美かみは服も脱がずに洗い場に突入する───


黄龍ファンロン!!元気になっ───」


ビュオォォ…………───


風で湯煙が晴れ──そこに居たのは、"胸を切り落とした"痕が残った身体を持つ女人……


「っ……!?──神美かみ……」


黄龍ファンロン………?」



《その犯人は、きっと自身も病にかかっていたのでしょう……》


青龍チーロンの言葉が脳裏を過った


黄龍ファンロン……貴方……」


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