老人達の前でわたしはふてくされた顔をして突っ立っていた。
「風間くん。分かっているとは思うが」上品な白髪の理事長がデスクに座って書類に見入っている。「きみの学力で、うちの大学に入ることは到底できなかった」
「はい」
わたしは学長に呼ばれて理事長室に立たされていたのだ。
「しかしだ・・・・・・スポーツ特待生であれば話は別だ。うちの大学の名声を世間に知らしめてもらえると嬉しいのだが」
「野球部に入れということですか。それは父の意向ですか?」
「そうだ。だが残念ながらきみのお父上はもうこの世におらん。きみが入学した後、すぐにお亡くなりになられたのだ」
そうだったのか・・・・・・。
「・・・・・・もしお断りしたら」
「即退学だ」痩せ細った顔に黒縁眼鏡の学長が、細い目をさらに細くしてわたしを睨みつけた。「なんでもきみは、甲子園では代打でしか出場していないにもかかわらず、ホームラン数が出場校でトップだったそうじゃないか。打率にしたら8割5分3厘。こりゃ驚異的な数字だ」
「でも・・・・・・」
学長がさらにたたみ込むように言った。
「なのにきみは練習が嫌いなんだって?」
「まあ・・・・・・」
「なら所属だけしたまえよ。その代り野球部以外の声のかかった部すべてにだ。各顧問にはピンチになったらきみを起用するよう伝達しておく。いわゆる助っ人外人みたいなものだな」
「よろしくたのむよ」理事長は興味を失ったという顔をして書類から目を離した。「帰ってよろしい」
わたしは奥歯を噛みしめてうつむいた。