「三郷。近々会えないか?」
わたしは大学時代の親友に電話をかけた。
「いいけど・・・・・・どうかしたのかい?お前が連絡してくるなんて珍しいじゃないか。美紅さんの葬式以来だ。元気にしてるのか」
「まあ、それなりに。実はちょっと気になることがあってな」
「気になることって?」
「うん。電話じゃちょっと話しにくいことなんだ。三郷ならなにか知ってるかと思って」
生真面目な三郷の細面の白い顔が目に浮かんだ。
「ふうん、わかった。週末でどうだ?」
「なるべく早く会いたいんだ」
「仕方がないな。あした仕事で吉祥寺に出るんだけど」
「それなら喫茶モアを覚えてるだろう?」
わたしは最初のラブレターに出てきた喫茶店が気になっていた。
「ああ。プチロードにある二階のジャズ喫茶だろう。あそこ、まだあるのかい?」
「だいじょうぶだ。電話帳で確認してみた」
「ふむ。それじゃあ2時でどうだ」
「助かるよ」
わたしは電話を切った。持つべき物は親友だ。わたしは誰かの助言を必要としていた。慰めの言葉ひとつでもいい。美紅へのラブレターの件を、わたしひとりでは抱えきれなくなってきていたのだ。とにかく誰かにこのことを話さなくてはいられなかったのである。