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第八話 電話

「三郷。近々会えないか?」

 わたしは大学時代の親友に電話をかけた。

「いいけど・・・・・・どうかしたのかい?お前が連絡してくるなんて珍しいじゃないか。美紅さんの葬式以来だ。元気にしてるのか」

「まあ、それなりに。実はちょっと気になることがあってな」

「気になることって?」

「うん。電話じゃちょっと話しにくいことなんだ。三郷ならなにか知ってるかと思って」

 生真面目な三郷の細面の白い顔が目に浮かんだ。

「ふうん、わかった。週末でどうだ?」

「なるべく早く会いたいんだ」

「仕方がないな。あした仕事で吉祥寺に出るんだけど」

「それなら喫茶モアを覚えてるだろう?」

 わたしは最初のラブレターに出てきた喫茶店が気になっていた。

「ああ。プチロードにある二階のジャズ喫茶だろう。あそこ、まだあるのかい?」

「だいじょうぶだ。電話帳で確認してみた」

「ふむ。それじゃあ2時でどうだ」

「助かるよ」

 わたしは電話を切った。持つべき物は親友だ。わたしは誰かの助言を必要としていた。慰めの言葉ひとつでもいい。美紅へのラブレターの件を、わたしひとりでは抱えきれなくなってきていたのだ。とにかく誰かにこのことを話さなくてはいられなかったのである。

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