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第13話

 レオ兄様を襲おうとした賊が自害しただって?

 爺やの一報に私が首をかしげていると、アオイとヒイロがサッと目配せをし、顔色を変えた。


「賊が自殺?」

「一体どうして……」


 アオイとヒイロどうしたんだろう。

 不思議に思いつつも、私は爺やに尋ねた。


「ってことは、レオ兄様を狙った黒幕は分からずじまいってことなの?」


「そうなの?」


 モアが身を震わせる。


「ではまたいつ狙われてもおかしくないわね」


 アビゲイル義姉様もハンカチで口元をぬぐいながら眉根を寄せる。


「ああ、そう?」


 だが当のレオ兄様ときたらとぼけた顔だ。

 全く、自分が狙われているというのに呑気なものだ。


 私があきれながらお兄様の顔を見ていると、不意にアオイが手を挙げた。


「そういうことでしたら、姉にその死体を見せて頂けませんでしょうか?」


「えっ、ヒイロ様に……でございますか?」


 困惑した表情の爺やに、アオイはにっこりと笑ってこう言った。


「ヒイロ姉様は透視能力の持ち主なのですわ」


 へえ、透視能力……。


 私がヒイロの顔をチラリと見ると、ヒイロはいきなり自分の右目を押さえだした。


「ふふ……どうやら私の暗黒邪鬼魔眼を見せてやる時が来たようだな……」


 足を組み換え偉そうにするヒイロ。

 えっと……中二病かなにかですか、あなた。


「えっと……姉は魔眼により、生前の記憶を読み取れるのです」


 私たちにヒイロの能力をかみ砕いて教えてくれるアオイ。


「魔眼! いいなー、カッコイイ!!」


 レオ兄様まで目を輝かせる。

 こいつの知能はきっと小学五年生辺りで止まっているに違いない。


 その反応に、ヒイロは気を良くしたように鼻で笑った。


「ふん、当然だ。私の力、見せてやる」


 ……魔眼ねえ。


 どうにも半信半疑のまま私たちは食事を食べ終えた。


 食事が終わると、私とモア、そしてヒイロとアオイは爺やの後について、賊の捕らえられていた地下牢へと向かった。

「……で、どうしてミア様とモア様までいらっしゃるので?」

 爺やがあきれ顔で私たちを見るので、私は頭をポリポリ書きながら答えた。

「どうしてって……なんとなく、魔眼が見たくて。モアは?

 私の問いに、モアが答える。

「決まってるでしょ、お姉様が他の美少女といちゃつくなんて許せないもの!」


 いや、ただ単に自殺した賊を見に行くだけで、いちゃつく要素なんてこれっぽっちもないんだけど。


「全く、お二人とも、遊びではありませんぞ」


 眉を寄せしかめっ面をする爺や。


「まあまあ、怖そうだったらすぐに帰るよ」

「私も遠くからちらっと見たら帰る」


 そんな話をしながら地下牢へと続く階段を降りると、さっそく私たちは暗殺犯の死体と対面した。


「ウッ」


 苦しげな顔の遺体を見て、私は少し吐きそうになる。


「お姉さま~、怖い~!」


 だが、モアが柔らかな体を押し付けて抱きついてくるので、私は一瞬にして気分が良くなった。なんて柔らかくていい匂い! 


「どいて」


 モアの匂いを嗅いでいる私を押しのけてヒイロが遺体に近づく。


 そしてカッ、と目を見開いたかと思うと、ヒイロの目が炎のようの赤く輝き出した。


 すごい、これが魔眼か。何が起きてるのかさっぱり分からないけど!


 ヒイロはしばらく赤い瞳でしたいと見つめ合うと、紙にサラサラと何かを書き始める。人の似顔絵のようだ。


「どうやらこの人物が殺しを依頼したみたいだ」


 ヒイロが爺やに似顔絵を渡し。


「これは」


 すると似顔絵を受け取った爺やの顔がみるみるうちに青くなり、表情が固まった。


「どれどれ、どんな奴?」


 私も横からのぞき込むと、そこには金髪で髭を生やした細面の男の絵があった。この顔、どこかで……。


 私が首をかしげていると、横でモアが蚊の鳴くような声を上げた。今にも倒れそうだったので、私は背中に手を回し支える。


「嘘でしょ、グンジ叔父さんが」


 グンジ叔父さん?


 モアの声に、私はもう一度似顔絵を見た。


 言われてみれば、その似顔絵は先代国王、つまり私たちの親父の弟、グンジ叔父さんに似ていなくもない。


「まさか。なんで叔父さんが?」


「でもありえるね。あのおじさんのことだ」


 私はあの細面のギラギラした瞳を思い出した。


 いつも父上や兄さんを馬鹿にした態度をとって、私やモアを舐めるような目で見ていた叔父のグンジ。


 はっきり言って私はあまりグンジ叔父さんが好きではない。でも……。


「そうだな。陛下が居なくなれば次の王になるだろうし、動機もある」


 ヒイロが無い胸を張りながら言う。


「ですが、透視結果だけでは証拠になりませんぞ」


 爺やが神妙な顔をする。確かにそれだけじゃ証拠としては弱い。


 その時、私の頭に妙案が浮かんだ。


「みんな、聞いて。私にいい考えがある!」


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