「ほう、これは珍しい! 五色元素属性じゃないか!」
お爺さんが声に出すと、辺りが急にざわめきだした。
「なんだって?」
「こりゃ珍しい」
「あんな小さな娘が。これは大物になるぞ!」
わらわらと寄って来る周りの冒険者たち。
どういうことかと言うと、要するにモアは火、水、風、闇、光の五属性の魔法を使えるということらしい。
エルさんが解説してくれる。
「普通の人間は大体一属性、まれに二属性や三属性がいるくらいで五属性というのは非常に珍しいですよ」
「へー、そうなんだ」
私はモアの顔をしげしげと見た。
モアはみんなに注目されて恥ずかしそうに下を向いている。
「しかも見てください」
エルさんが羊皮紙を指さす。
「このメモリが最大まで染まっているでしょう? これは五属性が使えるだけでなく、魔力の貯蔵量も普通の人間と比べるととんでもなく多いということを示しています!」
「へー!」
よく分からないけど、モアにはすごく魔法の才能があるということらしい。
「そうだったのか。いいなー」
私は心底モアが羨ましくなった。
まるでチートじゃないか!
「子供の場合は魔力が大人よりも多いというのは良くあるのですが、同年代の子供たちと比べても20倍からさ30倍の魔力をお持ちのようですね。すごい才能ですよ、これは」
モアは急に注目されて恥ずかしそうにモジモジしている。
「そ、そうなの……?」
私は身を乗り出した。
「わ、私は? 私の属性はどうだったんですか?」
モアにそれぐらい才能があるってことは、姉妹なんだし私にもそれなりの魔法の資質があってもおかしくないのでは?
しかしエルさんはニッコリと笑ってこう言った。
「無属性ですね。魔力量も、まあ普通と言ったところでしょうか」
「あ、そうすか」
私はがっくりと肩を落とした。
「それではカードができ次第お呼びいたしますので、掛けてお待ちくださいね」
病院の待合室のようなソファーに腰掛ける。
「いいなあ......モアは魔法の才能があって......」
私は大きなため息をついた。
あーあ、せっかく剣と魔法のファンタジーの世界に来たんだし、魔法も使ってみたかったなあ。
闇魔法とか、火の魔法とかカッコいいし、使うところを密かに妄想してたのに。
モアが慌てて首を横に振る。
「でも属性が沢山あるだけで、モア、魔法なんて全然使えないよ?」
「そんなことないさ、凄いよ。いいなー、そんなに沢山属性があってさ」
私は天井を見上げた。
そういえば、爺やや兄さんにモアは魔法の才能があるのだと聞いたことはあった。
でも、モアは私の前で魔法を使ったりどんな魔法を使えるなんて自分から話はしたことが無かった。
私が何か聞いても「大した魔法は使えない」としか答えないし。
でもそれはもしかして、全く魔法の使えない私に遠慮していたんじゃなかろうか?
姉より妹の方が才能があるなんて知れば、私が悲しむから……。
そう考えると、なんだか胸が痛くなってきた。
「ここを出たら、モアに魔法使い用の装備や魔術書を沢山勝ってやらないとな。折角の才能なんだし、もったいない」
私が言うと、モアは首をブンブンと振った。
「そんな! 私はお姉さまが勇者になれさえすればそれでいいの。お姉さまの装備を優先して……」
「バカ言わないで。最強の勇者の相棒は、最強の魔法使いでなきゃいけない。そうでしょ?」
そう言ってウインクしてやると、モアは少し赤くなってコクリとうなずいた。
よーし、こうなったら二人で最強の冒険者、目指してやるぞー!