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第40話

 私とモアがションボリとしていると、お姉さんは「少々お待ちください」と言って奥の箱から宝石のついた高そうな杖を取り出した。


「こちらは上級魔法使い向けの品なんですが、上についている魔法石に魔力を溜めることで魔力の消費を抑えることができます」


 私はちらりと値段を見た。70万フェル。だめだ。とても払える金額じゃない。


「もうちょっと安いのは……」


「そ、そうですね」


 お姉さんはゴソゴソと積み上がった箱の中を探し始める。


「あ、ありました! これはアレスシアに住む有名な魔女が愛娘のために作ったとされるものなのですが、魔力コントロールのしにくい子供の為に、魔力の出力量を一定に保つ機能がついておりまして」


「へー、どれどれ」


 しかし、その杖を見た俺とモアは思わず固まってしまう。


 竹でできたその杖はピンクとシロのペンキで雑に色付けされており、その先端には汚い熊の飾りがついている。


 どう見ても子供のおもちゃ、それも四、五歳が持つような子供っぽさである。モアにはちょっと、いやかなり幼すぎる。


「お値段もお手頃なんですよ! たった300フェルです」


 確かにそれは他の杖に比べたら安い。


 でも、こんな手作り感満載なちゃちで子供っぽい杖にそんなにお金を出すのも気が引ける。


 私がモアをちらりと見ると、モアは迷いなく杖を手に取った。


「お姉さま、モア、これ買う!」


 なんとモアは子供っぽくてダサいこの杖を買うと言い出した。


「だって安いし、これがあれば魔力を抑えられるんでしょ? モア、お姉さまの役に立ちたいし、子供っぽい杖でも頑張る!」


 そう言って笑うモア。

 ああ、なんていじらしいんだ!


 私はモアの心の美しさに思わず涙しそうになった。


「これください!」


 モアがクマさんの杖と初球の魔導書をレジに持っていく。


「はい。こちらの魔導書は割引してあげますね」


 お姉さんがにこやかに会計をしてくれる。割引してくれるだなんてありがたい。


 するとお姉さんがレジ横のアクセサリーを指さした。 


「一緒にこちらの商品もいかがですか? 今人気ですよ」


「これは……」


 お姉さんが出してきたのはドングリや木の実をかたどったビーズのネックレスだった。


 私たちが街に来たばっかりのころに出店で買ったあのネックレスと同じものだ。


 しかも私たちは100フェルで買ったのに、この店では50フェルで売っている。


 あの親父、何が「負けてやる」だよ。騙したなー!


「い、いえ」

「同じものを持っているので……」


 私たちは苦笑いをしてお姉さんの薦めを断った。


「ではこちらは?」


 お姉さんが次に出してきたのは、白いゴワゴワした安くさい手袋だった。


 うん、何か私、こういうの見たことあるぞ。これはあれだ、向こうの世界で言う軍手ってやつだ。


 私がドン引きしていると、モアがお姉さんに尋ねた。


「これにはどんな効果があるんですか?」


「これは手の怪我を防ぎパワーをプラスする効果があります。しかもお値段たったの50フェルでお得ですよ!」


 それを聞き、は軍手をキラキラした目で手に取った。


「買おうよ! お姉さまも折角だから何かアイテムを買ったほうがいいよ!」


「うーん、モアがそう言うなら」


 モアの薦めもあり、仕方なく私は軍手を購入した。まあ、これはこれで重いものとか持つ時に便利かも知れないし。カッコ悪いけど。



 こうしてモアはクマさんステッキを、私は軍手を装備したのであった。


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