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第41話 勇者たちの帰還

「エー!本当に帰れるんですか?」

「大丈夫ですよ。魔王城から [ 帰還 ] の魔法書が見つかりました。全ての皆さんを日本とやらに無事帰せそうです。時間軸に尽きましては、魔法書の解読待ちですが、そう時間は掛から無いでしょう。」

「やった!皆で日本に帰れるんだ。」


魔王軍の執拗な攻撃で危機にあった王国。打開策として召喚された勇者30名は、5年の年月を経て、魔王を倒し王都凱旋の最中に知らされた朗報は、皆を歓喜させるに充分だった。


翌日から、彼らは勇者では無く、旅行者となり、帰還の期日を待ち望んだ。

あるグループは、仲間と連れだって王都観光。

女性たちは、宝石店や衣服店を見て回り。

ある者は、珍しい物を探して買い物ツアー。

皆それぞれの休暇を満喫している。


「武器や防具類は持ち帰れないだろう。お金は持ち帰っても使えないし、やはり持ち帰って便利なのは鉱物の類いかな。」

「そうだね。ポーションなどの薬品類は、どう!有ると便利じゃない。」

「そうだそうだよ。Aのスキル [ マジックボックス ] に入れればOKだよ。収納大で時間経過無しだからな。冒険中には、だいぶお世話になったし。」


帰還当日、勇者たちは買い漁った品々を [ マジックボックス ] に積めて、何時もの旅立ちで待ち望んでいる。誰の顔も緊張感が漲り、ゆとりは感じられない。


王宮の広間には、帰還の魔方陣が書かれて多くの術者が、魔力を込めている。

全て準備が万端整って、今や遅しと勇者たちを待っている。


勇者たちは、王様を筆頭に王妃・王子王女の王族、そして、宰相を始め王国の重鎮貴族たちと握手をしている。

騎士団長や騎士たちと別れを惜しんでいる者たちもいる。

冒険者の仲間と泣きながら語り合う者も。


召し使いが帰還の時間が着た事を皆に告げる。


魔方陣が光り出す。勇者たちは続々と手を振り、魔方陣の光の中に歩いて行く。

ひとり。また一人と勇者の姿は霞み始めて消えて行った。

全ての勇者が帰って行った。


日本の学校の教室。

一人ひとりと、生徒が現れた。

「帰って着たんだ!自分たちの教室に帰れたんだ!・・・!!」

生徒たちは、召喚前の教室に、誰ひとり欠けること無く帰ってきた。


異世界で5年もの年月が経っているはずなのに、召喚前の。5年前の姿で全員が立っている。

全員の目には嬉し涙が溢れている。

抱き立って喜び合う者もいる。

ポケットのスマホを見て、受信アンテナが有る事を喜ぶ者もいる。

早速、スマホで電話をして満面の笑みを浮かべる者もいる。


全ての皆さんが喜んでいる?


・・・!ひとりだけ、喜び半分、落胆半分の生徒がいた。

[ マジックボックス ] のA君だ。


「魔力が無くて、[ マジックボックス ] が開かない。全てのお土産が取り出さないよ。」

悲痛の叫びが、皆に伝播し、複雑な笑い声が教室にコダマした。


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