「勇者殿。旅立ちの祝いに名剣を贈りましょう。」
「王様。ありがとうございます。必ずや、ご期待に添える結果を報告致しましょう。」
「宰相。あの鍛冶師は、どうかな?」
「あの男は、腕は良いのですが、癖が強すぎて 勇者殿では無理では無いでしょうか。」
「そうかやはりな。」
「王様。その鍛冶師は、どの様な方なのですか。」
「あやつの腕は、王国いち、いや、世界でも有数だが、癖が強すぎてなぁ。勇者殿でも難しいだろう。」
「王様。是非この鍛冶師を説得して、名剣を鍛えて頂きます。序盤から難敵を避けていては、目標を達成出来ません。紹介をお願い致します。」
「勇者殿の熱意を感じ取りました。頑張って下さい。」
「頑張って・・・?」
勇者は、鍛冶師の工房に向かった。
「頼みます。王様の紹介で参りました。是非とも私に剣を打って頂け無いでしょう。」
奥から強面のドワーフが顔出し、
「王から連絡が着ている。まぁ、座れ。」
「ありがとうございます。」
勇者と鍛冶師は、世間話から始まり色々な話題で会話が弾んだ
[ 顔は強面だが思ったより、話やすい方の様だ。癖が強いと言うが気に言って貰えた様だな。] 勇者は、安堵と共に喜びを感じた。
「鍛冶師殿。私に剣を打って頂け無いでしょうか。」
「いいよ。」鍛冶師は、すんなりと承諾する。
「ありがとうございます。」ほっと一息の勇者。
[ 癖が強すぎてと言うが、呆気無かったなぁ ] と思っていたが、
「勇者よ。剣の材料は、・・・。」
「材料の打ち込み温度が・・・。」
「あれが・・・。」
「これが・・・。」
・・・・・・・・・・・・。
材料の条件だけで一時間。
長さや重さで、数時間。
強さが・・・。
付与が・・・。
条件出しだけで時間が、過ぎていく。そして日にちが過ぎていく。
「今日も、行かなければ。憂鬱だ。」
彼処が違う・・・。
やり直して・・・。
「・・・。行くのもう、いや!」
未だに、剣にたどり着けない勇者。
勇者は、未だに魔王打倒に出発すら出来なかった。