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第73話 勇者の成長

息子が失踪して、はや一年が経とうしている。


あの日、息子は何時も様に何時の時間に通学した。


昼が過ぎた頃、学校からの突然の電話、「息子さんが、突然の光と共に消えた事、他の同級生の数名も光と共に消えたこと。未だに行方がわからない事。と校長からの釈明。」

私と妻は、急ぎ学校に向かった。


目にしたのは、ガラーンとした教室。机や椅子も無い空虚な空間。

半狂乱の妻を抱き、茫然と立ち竦む。急な呼び掛けで我に帰り、その時の模様を漠然と聞いている。


どうやって家に着いたのか。

とうすれば・・・。


それからは、警察の事情聴取や見境いの無い報道等で苦しみの連日が続く。


ある日、別の凶悪事件が起こり、過熱報道の関心が移ると、ホッとした。


息子の失踪後、妻の意識は此処になく、体だけが生命維持の為に存在する様だ。


私は、息子の失踪の手掛かりを捜す毎日が、心の支えとなっている。


それから半年が過ぎた頃、突然夢の中に男が現れ、「わたしは、あなた方の言うところでは、神と呼ばれる存在だ。突然に息子さんを召喚した事を謝る。息子さんは元気でいる事と私たちを心配している事を伝えて欲しい」との伝言を伝えてくれた。


私は、自称神と言う男に、「息子を還してくれ。」と願ったが、返答は「否」。ただ、筆者○△のラノベに出てくる勇者が息子であり、活躍を逐次小説で書き表す事が告げられた。勿論、筆者○△は、この事は知らない。彼の無意識に働きかけて、表している事が伝えられた。


最後に息子さんは、私たちに「

心配しないで、心は何時も一緒だ」と伝えて欲しいと。


自称神からは、息子さんと私たち夫婦に大きな加護を与えたと伝え、夢は終わった。


ラノベに疎い私は、何とか筆者○△の小説を探し当て読んでいる。


小説の中の勇者は輝いている。

苦悩、苦戦を笑いながら跳ね返す力強さが漲っている。

何時しか妻も私と共に読み始め、二人で息子の成長を今も見守っている。




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