男が召喚された。
王様より、「勇者さま。召喚を受けて頂き、ありがとうございます。今、魔王軍の激しい侵攻の前に、我が王国は苦戦を強いられております。ご尽力をお願い致します。」
「詳細は、この宰相が説明致します。魔王軍の激しい戦闘で前線は破られ、各都市は蹂躙されております。勇者さまは召喚時に高い能力と優れたスキルを頂けます。王国を。王国民をお救い下さい。」
「人の命が掛かっている事、全力で
戦いましょう。」
少しの訓練で優れた力を見せた勇者は、他の戦士と共に魔王軍との戦いに赴いた。だが、魔王軍が弱いのか、武器が強いのか、勇者が優れているのか、たちまち魔王軍は崩れて敗走した。
「こんなに敵は弱いのか・・・。」勇者は一言呟いた。
城に帰ると王たちが迎える。
「ありがとうございます。あんな強敵を蹴散らす。流石ですな。」
「はぁ?強敵?」不思議がる勇者。
暫くすると、宰相より「今までに何人かの勇者さまを召喚しました。全ての勇者さまが、貴方の同じ表情をされるのです。何か有りましたか。」
「有るも無いも、あんなに弱い敵を強敵とは思えなくて・・・。あれ?俺の前の勇者?彼らは今何処に居るのですか?」
「彼らは、皆さん途中で精神をやられて、自害されております。なぜ、私どもも原因が不明で困っております。」
「自害ねぇ。」
その後、勇者専用の武器防具が渡されて、魔王討伐の旅が始まる。
旅は、順調に始まった。だが耳の奥で微かな声が。ただ、小声で聞き取れない。さほどの気にもならない。
魔物も徐々に強くなる。それに従い声も大きくなる。だが、まだハッキリと聞き取れない。しかし、鬱陶しい。
Aランククラスの魔物を倒すと、始めてハッキリと聞こえた。
( 武器の事なら、○✕武器屋。防具の事なら△○防具屋 )
敵を倒す度にコマーシャルが聞こえる。
そして、呪われたかの様に、脱げない防具。
こんな声が鳴り響けば堪らない。
暫く後に、勇者の自害が発見された。