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第93話 呪いの代償

それは、王から賜った多くのアイテムの中に有った。


何気なく、装着すると外れない呪われた腕輪。鑑定スキルで確認するが詳細は判明できず、また、呪い解除の呪文も跳ね返す。途方にくれた時に頭の中に声が聞こえる。

「安心しろ。俺はお前の装着した腕輪の精だ。お前には危害を加えない、反対に願いを2つ叶えよう。但し代償は頂くがな。どんな願いでも叶うぜ。」


半信半疑な勇者。だが暫く装着したが、マイナス効果が見られない事からそのままで動き始めた。


冒険は続き、苦戦の末、四天王を倒した。だが、代償も大きかった。二人の仲間を失った。敬愛するナイト。愛すべきシーフ。


二人を失なう事は戦力的にも厳しいが、それ以上に共に戦った友を失った事は、とても悲しかった。

突如、「心での願いを聞いたぞ。どうする!代償で失った命を救えるぜ!!」心の中に響く希望の声が。

「頼む!必ず代償を払う。願いを聞いてくれ。」

「判った。」


横たわる二人の体に淡い光が纏わりつく。・・・。暫くの後、目を開ける二人。

「代償は、お前の声を貰おうか。」

「・・・。あぁ。解った。」


仲間の復活を喜び会う傍らで勇者は、彼らに掛ける声を失った。

それを悲しく見つめる聖女。


戦力が整い、魔王との戦いとなる。

・・・・・・。戦いは死闘を極めた。そして悲しい結末と共に魔王は倒れた。


倒れる聖女。泣き悲しむ勇者。

泣き声を失った勇者は、涙しか流せない。

心に思う。「聖女を助けてくれ。代償は、俺の命でどうだ。」


突如に声が聞こえる。

「聖女を生き返らすか。お前の命より、表情を頂く。それが代償だ。どうする?」

勇者は、即座に思った。「解った。頼む。」


「本当に良いんだな。・・・。祈りは叶った。まぁ、後は楽しむんだな。楽しめればだが。ヒャハハハ!。あぁ、俺が居る限り死ね無いぞ。ヒャハハハ。」


笑い声と共に腕輪は鈍く光った。


生き返った聖女と表情を失った勇者。

心の中の喜びを表現出来ず冷たさしか感じられない。


心から慕う聖女。冷たい表情の勇者。


勇者は、耐えきれず誰言うと無く、静かに旅に出た。

死ねず、愛する人に冷たい表情しか表せられない苦しさに耐え切れずに・・・。


そして呪いの腕輪が、更に鈍く何時までも光っていた。




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