聖剣は朧気な意識で、昔の夢を見ていた。
暗い洞窟の中で勇者を待っていた日々を思いだしながら。
勇者と共に多くの魔物を倒していた頃の興奮を。
勇者の仲間達と笑い合い、楽しかった時間が有った事を。
苦闘の中で魔王と対峙した緊張感を。
魔王を倒して、仲間と共に王国民の歓声の中を歩んだ誇らしさを。
勇者と別れて、王国の宝物庫を捕らわれた悲しみを。
あれから長い年月を一人寂しく待ち続けていた。
そして聖剣は心身共に錆び付き、かつての輝きを失い、煤けた遺物となった悲しみの中で。