男は幼き頃の夢を捨てきれず、心の片隅に残したままで大人になる。
それが他の人から見ると笑われるモノで有れ・・・。
[ ヒーロー ] になりたい。
子供の頃、テレビにかぶり付く様に見た特撮ヒーローに。
思う存分に遊び尽くしたゲームの勇者の様に。
何時かは成れると信じていた子供の頃。
成れると筈が無い事を知っている大人の自分・・・。
ある日 男は召喚された。
瞬く間の出来事だった筈、意識が現実に追い付いた時は彼の姿は、華やかな鎧を纏った勇者だった。
喜びを隠しきれない。
喜びが表示に表れている事だろう。
さあ!これからどの様な冒険が始まるのかワクワクが止まらない。
その時、予期せぬ言葉に振り返る。
「勇者 あああよ。
魔王からこの世界を救ってくれ。」
そこには、いかにも王様らしい人物が見下ろしていた。
「勇者 あああ?俺の名前?」
思い出した。俺もゲームの勇者の名前を簡単にひらがな最初の [ あ ] から始めた事を。
一文字では、物足りなくて二文字では時数が中途半端な感じがして、三文字の [ あああ ] にしていた事を。
これはゲームなのか?
誰がプレイヤーなのか?
神様?
俺はこれからどうなるのか。
不安がいっぱいだが、少しワクワクもしている。