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第157話 命の厚み ➁

神より与えられたスキル【重厚】。

男は冒険者として活躍を夢見た。

初めての薬草採取で魔物ウルフに狙われた。



男を目掛けて突進するウルフに、咄嗟の事で体が動けない。

ウルフは男の首筋に狙いを定めて噛み付く。

男は首筋を守るために左腕で追い払おうとするが、その腕に鋭い牙が襲いかかる。

腕を噛まれた瞬間、「しまった。」と後悔したが・・・。痛みが無い?


ウルフが噛み付いたままの左腕。右手で剣を掴み、無我夢中で何度もウルフの首筋を切り裂くと、やがてウルフは力尽きて地に落ちた。

頭の奥で レベルアップした事が感じ取れる。


そして男は噛まれた左腕を見つめて動かしてみた。

何の支障無く動く、まして傷痕も痛みすら感じない。


何なんだ。俺の体はどうなったんだ。

何となく結び付くのは、スキルの影響なのか。もしも、スキルに依るものなら、魔物の攻撃すら受け付けない、これって無敵なのではないのかと心に邪な思いが生まれた。


取り敢えず、倒したウルフを担ぎ上げて城門を抜け、ギルドの扉を開け入ると、今まで冒険者で賑やかだったギルドが静まりかえる。

冒険者の視線が男に降り注がれる。


気まずそうな中を男は静かにカウンターに向かい職員にウルフの解体と薬草採集依頼達成を申告する。


職員は唖然としながらも男に「あなたは、初級クラスなのに何でこんな危険な事をしているのですか。ウルフは初級クラスでは危険過ぎます。偶々助かったのは、奇跡と思って下さい。くれぐれも過信しないで下さい。」と釘を差される。


思わず、男は静かに ハイ と呟いた。



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