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第172話 静かなる戦い ①

「宰相。今度の連中は大丈夫だろうな。」

「王様。前回の様な失態は有りませんよ。」

宰相と王様が、コソコソ話をしている。


大理石に画かれた魔方陣の中に一団の群れが心配顔でたたずんでいる。


異世界より召喚されたクラスと言う30名程の団体である。


「ようこそ、女神様の召喚に応じて頂き、感謝致します。・・・。」と宰相より、魔王軍に攻められ苦境に立つ王国を守って欲しいとの話が続いた。


「なぜ、僕たちは見も知らない貴方がたの為に戦わなければならないのですか。

私たちは、学生で戦い方を知らないし、その能力も持っていません。」と男子学生が答えた。


宰相は、無情な表情を浮かべて発した。

「まず最初に、君らは元の世界に帰れない事。

希望は、魔王が帰る手段を知っているらしい事。

そして、召喚時に各々に適した能力とスキルが与えられる事。」と


学生達からは、嘆きや怒りの声が飛び交う。

一人の学生が飛び出して

「お前たちは、勝手に俺たちを拐い、人殺しの道具にするつもりか。

俺は、犯罪者の手先にはならない。」と罵倒した。


宰相に目で合図されたひとりの騎士が歩みより、罵倒する学生を一太刀で切り捨てた。


その光景を目の当たりにした学生たちは、静まり帰り、もはや抗する気力すら失っていた。


宰相は、静まり返った学生に指示する如く、

「さあ、時間の無駄です。順番に並んでこの鑑定珠に手を翳して下さい。

あなた方のスキルと能力そして、職業が映し出されます。」


学生たちは、指示された通りに並び、鑑定される。

鑑定を受け、各々のステータスと職業が判明すると、先程の恐れを忘れては、【ファンタジーだ】と叫ぶ一団も現れ、活気が少しずつ現れ始めた。


鑑定結果は、

【勇者】【聖女】【剣豪】【賢者】【大魔導師】

と定番の職業持ち。

【魔法士】【剣士】【盾士】【シーフ】等の

戦闘に特化した職業。

【鍛冶】【商人】【農民】等の戦闘以外の職業に別れた。


一人の学生【農民】が、何やら見付けて宰相に尋ねた。


「宰相さま。壁の模様は独特の色の配合が成されておりますが、何方が作られたのですか。」


宰相は最初は胡散臭いに聞いていたが、抗議ではない事から、賑やかになり、

「先々代の勇者殿の発案で作られた自慢の壁なのでな、この城中な各所に築かれておる。そなたは、この芸術に興味が有るのかな。」


学生は、

「ハイ。大変素晴らしい壁です。是非とも全て確認させて頂きたいのですが、宰相さまの許可を頂け無いでしょうか。」


宰相は、上機嫌となりアッサリと城内を自由に動ける許可を与えた。





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