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第9話

ととす・・・だがと・・・は、そのまま、しばし2人で無言のまま睨み合っていました。ととす・・・はなにも言わず、ただ悪霊が憑いたような表情で、突き刺すようにだがと・・・を見ていました。彼は明らかにだがと・・・に殺意を持っていましたが、すぐに襲いかかってこようとはせず、まるで何かを待っているようでした。


そして彼の頭上には、ぷらりぷらりと揺れる、2匹の大きな蓑虫がありました。いや、頭が逆さまになっていましたから、それは蓑虫ではありません。むしろ枝にぶら下がって安眠を貪る昼の蝙蝠こうもりです。


しかしこの2匹は、蝙蝠のように安らかではありませんでした。彼らは両方とも激痛にもだえ苦しみ、大きな声で叫びながら、片足を吊った樹の蔓を外そうと必死です。だがと・・・は、友を助けないといけない、そう思いました。このままでは、空中でのたうつ2人の友たちは、いつか力つきて、逆さまのまま死んでしまうでしょう。しかし、その下にはまるで人の変わったようなととす・・・が控えています。次の彼の動きが予測できず、だがと・・・は珍しく逡巡しました。


しかし、やがて遠方よりしゅっ、と何かが飛来する音が聞こえ、だがと・・・の頭上を飛び越え、友のうちの1人、逆さまになった頭に命中しました。狙いあやまたず、ピンと標的に突き立って・・・あまりに見事なヘッドショット。哀れな標的は、一瞬で動かなくなってしまいました。そして、続いてもう一撃。この場に唯一残った友も、ただ惰性でぷらぷら揺れるだけの、肉の塊になりました。


そして、だがと・・・は、その射手が誰なのかを、正確に推測することができました。そして次に狙われているのが他ならぬ自分であることも。姿なき射手はすでに三の矢をつがえ、狙いをつけ・・・頭にガツンとした衝撃を感じ、だがと・・・の世界は、まっくらになりました。

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