アリスが目を覚ますと、もう日が昇っていた。
「寝過ぎちゃったかしら?」
アリスはそう言うと、窓から外を見た。
「良いお天気。今日は畑を見に行きましょう」
アリスはパンとチーズで簡単な朝食を済ませると、祖母の日記に書いてあった畑があった場所に移動した。
「あら、井戸があるわ。おばあさまはきっと、ここで水をくんでいたのね」
畑は雑草が伸び放題で、ただの荒れ地のようだった。
「しかたないわね、草を抜いて畑を耕さなきゃ」
アリスは屋敷の土間にあった、鍬を振り上げる。
「もう雑草の根が張っていて中々耕せないわ」
アリスはため息をついた。
「ちょっとごめんね、草たち、枯れて頂戴」
アリスがそう言って地面に手を触れると、元気良く生えていた草がみるみると萎れて枯れて行った。
「これで、土地が耕せるわ」
アリスは鍬で土を掘り起こし、森の土を混ぜて畑の土を軟らかくした。
「おばあさまが遺して下さった種が色々あるから少しずつ、まいてみましょう」
アリスはそう言って、トマトやひまわり、なすやトウモロコシの種をまいた。
「今からお水をあげますよ」
アリスは種の上に軽く土をかけたあと、水をあげた。
「……」
アリスが大地に両手をつけて、話しかける。
「さあ、大きく育ちなさい」
すると、今まいたばかりの種から芽が出て、蔓が伸び花が咲き、実がなった。
「やった。これで今日の食事も何とかなりそうね」
アリスは出来たてのトマトやなす、トウモロコシやひまわりの種を収穫すると屋敷に戻っていった。
「ひとりは寂しいけど、木や花と話をしていれば大丈夫よね」
そう言ってアリスは森をじっと見つめていた。
しばらくすると、屋敷の周りに人の気配がするのにアリスは気がついた。
「どちらさまですか?」
アリスはドアのチェーンをかけたまま、扉を開けた。
「あの、緑の魔女様ですよね? ケリーと申しますが、うちの子が熱を出してしまって。 薬を分けて下さいませんか?」
「まあ、大変! どうぞ、ちょっと待って下さいね」
アリスはエルバの町のイル・ケリーとまだ幼い男の子を屋敷に招き入れた。