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第5話 薬



 アリスはイルの息子をゲストルームのベットに寝かせると、ラズベリーを煮詰めて作った温かいジュースを飲ませた。


「美味しい」



 男の子はそう言って、ジュースを飲むとまたぐったりとして眠ってしまった。


「イルさん、息子さんの様子を見ていてあげて下さい」


「はい、緑の魔女様」


「私の名前はアリスです。アリスと呼んで下さい」


「分かりました、アリス様」



 アリスは自分の部屋からカバンを持ってくると、イルに言った。


「今から熱を冷ます薬草を採りに森に行ってきます」


「ありがとうございます」




 アリスは畑の傍に流れている川の周辺を見て歩いた。


「確か、熱冷ましの草は川辺に生えているはず」


 少し歩いていると、熱冷ましの草が沢山生えていた。


「よかった。これで薬を作れるわ」



 アリスは草を摘んでカバンに詰めると急いで家に戻った。


「ただいま、もどりました」


「アリス様、息子の熱が上がってきているようです」


「すぐ、薬を調合しますからもう少しお待ちください」


 アリスはそう言って、摘んできた薬草と、いくつかの種や木の皮をすりつぶし煎じた。



「出来ました。まだ熱いので、冷ましてから上げてください」


「ありがとうございます、アリス様」


 イルは出来たての熱冷ましを息子に飲ませた。


「うーん……」



「イルさん、お薬はこの水筒に入れてあります。熱が下がるまで、食事の後に飲ませてあげてください」


「はい、分かりました」


 イルはアリスに礼を言うと、町に戻っていった。



「早く治ると良いのだけれど……」


 アリスは残っていた熱冷ましの草を日陰に干した。


「おばあさまのメモに薬の作り方が載っていて助かったわ」


 アリスは書斎から持ってきていたマリーのメモをもう一度開いて微笑んだ。


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