アリスが朝食の片付けをしていると、ドアをノックする音がした。
「はい、どちら様ですか?」
「おひさしぶりです。ブルーノです」
アリスは驚いてドアを開けた。
「おひさしぶりです、ブルーノ様。足の具合はもう大丈夫ですか?」
「おかげさまでこの通り、ピンピンしてます」
そう言ってブルーノはその場で飛び跳ねてから、アリスににっこりと笑いかけた。
「今日はどんなご用事ですか?」
「先日のお礼と、一応心配事があるのでご連絡だけしにきました」
ブルーノの言葉を聞いて、アリスはブルーノを家に招き入れた。
「どうぞ、おはいりください」
アリスの家は綺麗に片付いていて、窓の脇には木の実が飾られていた。
「可愛らしい家ですね、アリスさん」
「ありがとうございます。ブルーノ様」
ブルーノが家に入ると、アリスは客間にブルーノを案内した。
「今、お茶を入れますね」
「おかまいなく」
アリスはブルーノが席に腰掛けるのを見届けてからキッチンに向かった。
しばらくしてアリスが紅茶とスコーンを二人分持って、客間に戻ってきた。
「紅茶とスコーンです。お口にあうと良いんですけど」
「ありがとうございます」
ブルーノは入れ立ての紅茶を一口飲むと、ため息をついた。
「実は、町の医者がアリスさんのことを良く思っていないようです」
「まあ、そうなんですか?」
「はい」
ブルーノはまた紅茶を一口飲んだ。
「お金持ちしか相手にしない医者なので、もともと評判が良くなかったんです」
「そうですか」
アリスはブルーノの向かい側に座ると、自分も紅茶を一口飲んだ。
ブルーノはちょっと難しい顔をして言った。
「さらに最近はアリスさんの評判が高まったせいで、お客さんが来なくなっているんです」
「それは悪いことをしてしまいました」
「いいえ、アリスさんは少しも悪くありませんよ」
ブルーノはそう言って微笑むとスコーンを一囓りして話を続けた。
「とにかく、近いうちに医者のマークがアリスさんのところに敵情視察に来ると思います」
アリスは困った顔で頷いた。
「まあ、あまり気にしなくても大丈夫だと思いますが。なにかあったら、私は町の宿屋にいますから声をかけて下さい」
「ありがとうございます。ブルーノ様」
ブルーノは残った紅茶を飲み、スコーンを食べ終えると立ち上がった。
「今日はごちそうさまでした。アリスさん、おきをつけて」
「はい、ブルーノ様」
アリスは町に帰っていくブルーノをドアの外で見送った。
「お医者さんの患者さんをうばっていたなんて、悪かったかしら……」
アリスはしょんぼりしながら家の中に戻っていった。