目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第4話 休息

魔法使いとヒーラーにも休息が必要。

ということで、中級魔法習得のお祝いも兼ねて、隣町のショッピングモールに気晴らしに行くことになった。

「お出かけなんて久しぶり♪」

「桜花、あまり無駄遣いするなよ。」

「大丈夫♪大丈夫♪ハック様はお金持ちだから♪」

「僕のお金だったとしても、無駄遣いするなっ。」

「はいはい。」

「はい。は、一度!」

「は~い。」

・・・子供か!


そうこうしているうちにショッピングモールに到着した。

この辺りでは、一番大きな商業施設だ。

映画館にボーリング場まである。


「ボーリングやろう!」

「よし。いいだろう、勝負だ。」

大魔法使いとしては、小娘ヒーラーには負けられない。


数十分後。

「私のリード♪」

マズイ。このままでは負ける。

大魔法使いのプライドにかけて負けられない戦いがここにはある!

僕は、渾身の一球を投げた!

ボールは右へ曲がっていく。

このままではガターで負けだ!

次の瞬間。


「・・・風よ吹け。ウインド!」

一陣の風がボールに向かう。

ボールは左に向きを変え、全てのピンを倒した。

「ずるい!魔法使った!!」

「魔法禁止とは言ってない!」

「ずるい!ずるい!」

「勝ちは勝ちだ!!」

我ながら大人げなかったか。


「わかった。フルーツパフェ奢るから許してくれ。」

「うーん、いいよ♪」

女子はスイーツに弱い。


カフェで休憩しながら、2人の転生の話になった。

「私たちって、なんで日本に転生したんだろうね?」

「うーん、なんでだろう?僕らは魔法使いとヒーラーの能力を持ったまま、日本に転生してきた。そのことに何か大きな意味がある気がするんだ。」

「大きな意味?」

「分からないけど、僕の家の前の住人は、魔術の研究をしていたみたいだし。今、この世界に魔法は無いけど、過去にはあったのかも知れない。」

「過去・・・。過去の魔術を復活させようとしてるとか?」

「あり得ない話じゃないな。」

「でも、魔法を復活させようとしている人がいるとして、私たちの転生と何の関係があるんだろう?」

「それは分からないから、調べるしかないな。あの地下室にヒントがある気がする。」

「じゃあ、それは、大魔法使いハック様に任せるね♪」

「だから、その呼び方はやめてくれ。日本での僕は博(ハク)だ。」

「私、ハックとまた会えて良かった。」

「僕もそう思うよ。オウカと再会できるなんて思ってもいなかった。」

一瞬、桜花の目に涙が浮かんでいたように見えた。


とにかく、あの地下室の本を手当たり次第に調べるしかないだろう。


「じゃあ、次はショッピング行こう!」

桜花は元気だ。。。


ショッピングモールには、様々な店が入っている。

桜花の買い物の付き合いも流石に疲れてきた。

「ちょっと、疲れたから、そこのベンチで休んでるよ。」

「ハク、わかった。私一人で大丈夫だから、休んでて。」

・・・行ってしまった。僕は、広場の隅にあるベンチに座った。

広場は吹き抜けになっていて、中央にはフリークライミングの施設がある。

なかなかに本格的だ。

何人かの子供が壁に挑戦している。

僕は、それをぼーっと眺めていた。


きゃー!


叫び声が聞こえて、そっちを見ると、子供が一人、壁の上の方にぶら下がっていた。

命綱が切れたのか、ロープを付けている様子はなく、手の力だけで体を支えているような状態だ。

このままでは、落ちてしまう。


次の瞬間。子供が力尽きて手を放してしまった。


「風よ吹け。トルネード!」

僕は咄嗟に魔法を唱えた。

つむじ風が子供を掬(すく)い。

子供をそっと地面に着地させた。

周りの大人たちは唖然としている。

泣き出した子供に、母親らしき人が駆け寄る。

助かってよかった。


僕は、黙ってその場を立ち去った。




この時の僕は、まだ、知らなかった、

その様子を遠くから監視する者がいたことを。




一方そのころ、


「重い~。たくさん買い過ぎた~。」

桜花は、一人で買い物中だった。

「ハクはどこ~?どこ行っちゃったの~?」

その場に座り込んでしまった。


「待たせたね、桜花くん。私が来た。」

ヒーローのように、かっこ良く僕が現れる。

「どうでもいいけど、早く荷物持って。」

「ど、どうでもいい・・・」

僕は大量の荷物を両手に抱えた。

「さ、次の店いこー!」

・・・まだ、買うのか?

僕の顔は引きつっていた。




そのあとも散々連れ回された。

「あー、楽しかった。ご飯なに食べる?」

「がっつりステーキとか食べたいな。」

「よし、買い物に付き合ってくれたから、晩ご飯は私が奢るよ。」

・・・いや、買い物のお金は全部私が出してるんですが・・・

「たくさん食べてよ♪」

その日は、桜花にステーキをご馳走になった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?