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第6話 襲撃II

僕は魔導書や日記を隠した。

これを敵が奪いに来るかもしれないからだ。

魔法の杖は、僕が肌身離さず持っている。

桜花の寝室や屋敷の窓という窓には、桜花が魔法で封印をほどこした。

もし敵を探知すれば分かる仕掛けだ。


「桜花。君には負担をかけるけど、覚悟してもらいたい。その代わり、桜花のことは、僕が絶対に守る。」

「大丈夫。覚悟はできてる。守ってくれるって信じてるから。前の世界でも、そうだったでしょ?」


前の世界か、、、


確かに、旅の途中、僕の魔法で窮地を脱したことが何度かあった。

でも、それは勇者ユウが居たから出来たことだ。

彼が居なければ、僕は、命をかけて戦うことが出来なかった。

今の僕に、桜花を守ることが出来るだろうか?

考えても仕方ない。やるしかないんだ。

僕も覚悟をきめよう。




数日後。



「ハク、おやすみなさい。」

「おやすみ、桜花。」

僕もそろそろ寝るか。

念の為、明かりをつけたまま、2階に上がる。

今日も無事に終わりそうだ。

ベッドに入って、目を閉じた。



そして、数時間後。


キャー。



僕は悲鳴を聞いて飛び起きた。

直ぐに、桜花の部屋に向かう。


「桜花!」

ドアを開けると、ベッドに桜花が怯えて座っている。

その視線の先に、男が、桜花がほどこした結界に囚われていた。

男は逃れようともがいているが、動けない。

僕は魔法の杖を男に向けた。

「桜花!無事か!?」

「うん。大丈夫。」

「結界を強化してくれ。」

「わかった。封じよ。シール!」

「ぐわっ!」

男が苦しそうに呻く。


僕は魔法の杖を男に向けたまま言った。

「お前は誰だ?」

「・・・。」

男は何も話さない。

「じゃあ、お前のボスは誰だ?」

「・・・私は、何も話さない。」

「そうか、わかった。炎よ、出でよ。フレーム!」

僕が魔法を唱えると、男に炎が襲いかかる。

「ぐわーっ!」

「どうだ、話す気になったか?」

「クククッ、甘いな。」

男は不敵な笑みを浮かべた。

「何がだ?」

「今日のところは退散しよう。」

「逃がさないぞ。」

桜花の結界魔法は、そう簡単に逃れられない。

「テレポート!」

「ああっ!」

次の瞬間、桜花が弾き飛ばされた。

「桜花!」

「さらばだ!」

男は宙に消えた。僕は桜花に駆け寄る。

「桜花、大丈夫か?」

「う、うん。だ、大丈夫。」

「よかった。」

桜花は、守れたが、男からは何も聞き出せなかった。

成果無しか。

僕は、自分が情けなかった。

作戦を練り直さないといけないようだ。



今回、男の侵入を許してしまったが、桜花の結界は効いていた。

僕らの魔力でも敵に十分対抗出来ると言うことだ。

もっともっと鍛練する必要はあるけれど。

まだ、敵は諦めていないだろう。

今まで以上に気を引き締めていかなければいけない。


僕と桜花は、その日、眠れぬ夜を過ごした。

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