僕は魔導書や日記を隠した。
これを敵が奪いに来るかもしれないからだ。
魔法の杖は、僕が肌身離さず持っている。
桜花の寝室や屋敷の窓という窓には、桜花が魔法で封印をほどこした。
もし敵を探知すれば分かる仕掛けだ。
「桜花。君には負担をかけるけど、覚悟してもらいたい。その代わり、桜花のことは、僕が絶対に守る。」
「大丈夫。覚悟はできてる。守ってくれるって信じてるから。前の世界でも、そうだったでしょ?」
前の世界か、、、
確かに、旅の途中、僕の魔法で窮地を脱したことが何度かあった。
でも、それは勇者ユウが居たから出来たことだ。
彼が居なければ、僕は、命をかけて戦うことが出来なかった。
今の僕に、桜花を守ることが出来るだろうか?
考えても仕方ない。やるしかないんだ。
僕も覚悟をきめよう。
数日後。
「ハク、おやすみなさい。」
「おやすみ、桜花。」
僕もそろそろ寝るか。
念の為、明かりをつけたまま、2階に上がる。
今日も無事に終わりそうだ。
ベッドに入って、目を閉じた。
そして、数時間後。
キャー。
僕は悲鳴を聞いて飛び起きた。
直ぐに、桜花の部屋に向かう。
「桜花!」
ドアを開けると、ベッドに桜花が怯えて座っている。
その視線の先に、男が、桜花がほどこした結界に囚われていた。
男は逃れようともがいているが、動けない。
僕は魔法の杖を男に向けた。
「桜花!無事か!?」
「うん。大丈夫。」
「結界を強化してくれ。」
「わかった。封じよ。シール!」
「ぐわっ!」
男が苦しそうに呻く。
僕は魔法の杖を男に向けたまま言った。
「お前は誰だ?」
「・・・。」
男は何も話さない。
「じゃあ、お前のボスは誰だ?」
「・・・私は、何も話さない。」
「そうか、わかった。炎よ、出でよ。フレーム!」
僕が魔法を唱えると、男に炎が襲いかかる。
「ぐわーっ!」
「どうだ、話す気になったか?」
「クククッ、甘いな。」
男は不敵な笑みを浮かべた。
「何がだ?」
「今日のところは退散しよう。」
「逃がさないぞ。」
桜花の結界魔法は、そう簡単に逃れられない。
「テレポート!」
「ああっ!」
次の瞬間、桜花が弾き飛ばされた。
「桜花!」
「さらばだ!」
男は宙に消えた。僕は桜花に駆け寄る。
「桜花、大丈夫か?」
「う、うん。だ、大丈夫。」
「よかった。」
桜花は、守れたが、男からは何も聞き出せなかった。
成果無しか。
僕は、自分が情けなかった。
作戦を練り直さないといけないようだ。
今回、男の侵入を許してしまったが、桜花の結界は効いていた。
僕らの魔力でも敵に十分対抗出来ると言うことだ。
もっともっと鍛練する必要はあるけれど。
まだ、敵は諦めていないだろう。
今まで以上に気を引き締めていかなければいけない。
僕と桜花は、その日、眠れぬ夜を過ごした。