「そうは言ってもさー。」
ロックがソファに座って足をバタバタさせている。
「簡単にアジトの情報なんて見つからないよねー。」
桜花は片肘をついている。
「転生者や魔法に関する事件なんて、そうそう起きないしねー」
イボンヌは、ビールを飲みながら横になっている。
確かに、この日本で魔法が関連するような事件が起きたら、すぐに大ニュースになる。
そんな不思議な事件はそうそう起きないものだ。
だからこそ、注意して見ていないといけない。
「最近、動きがないし。暇だから、気晴らしに行かない?」
イボンヌがぼそっと言う。
「大賛成!気晴らししようぜ!」
ロックは、すでにノリノリだ。
「そうだね。気晴らしも必要じゃない?ハク?」
桜花も乗り気らしい。仕方ない。
「よし、明日は気晴らしにショッピングモールに行こう。」
「やったー!」
・・・桜花が一番喜んでいた。
翌日。
約束通り、ショッピングモールにやってきた。
「買い物♪買い物♪」
「ゲーム♪ゲーム♪」
3人とも楽しそうだ。
息抜きと言っても油断はできない。
僕は、周りを注意深く警戒しながら、歩いていた。
そして、気が付いた。。。3人ともいない!!!
他の3人とはぐれてしまった。
今、襲われたらマズイ!
僕は、慌てて3人を探し回った。
ゲームコーナー。
「よし、ぬいぐるみゲット!」
円盤キャッチャーで遊んでいるのはロックだ。
「200円の投資でゲットだぜ!おいらって天才♪」
「ロック!見つけた!」
僕の声にロックが驚く。
「見てよ!ぬいぐるみゲットだぜ!」
「一人になったら危ないだろ!襲われたらどうする?」
「こんなに人が多いところで襲わないよ。」
「うるさい!単独行動禁止!」
「わかったよ。」
僕はロックと合流した。
同じころ、ショッピングモールの3階。
「買い物、楽しいね♪イボンヌ。」
「こんなに買って大丈夫か?桜花。」
「大丈夫。大丈夫。大魔法使いハック様はお金持ちだから♪」
「そうなのか?」
「そうだよ。あんなお屋敷に住んでるんだもん。」
「確かにそうだよな。」
2人の背後から忍び寄る、黒い影。
「・・・誰がお金持ちだって?」
「ひゃー!」
「何してるんだ?2人とも!」
「か、買い物です。。。」
「誰のお金で?」
「は、ハック様のお金で。。。」
「さあ、2人とも、一緒に来い!」
「ごめんなさい~!!」
・・・まったく、もう。
僕は、イボンヌ・桜花と合流した。
僕らは、フードコートで休憩することにした。
「モックバーガーにしよう♪」
みんなでハンバーガーを食べる。
「これ、美味いな!びっくりだ。」
ロックとイボンヌは、初めてだったか。
「本当だ。この肉は、何の肉だ?サーバルタイガーか?」
「牛の肉だよ。」
「牛って美味いんだな!」
喜んでくれてよかった。
ロックとイボンヌには、初めて見るものばかりで、大満足だったようだ。
あれこれ質問されて、僕は少々疲れたけど。
こうして、僕らの息抜きは終わった。
遡ること、数日前。関東地方某所。
光竜は、アバンの元に戻っていた。
「情けないぞ、弟よ。今は人間の姿とは言え、誇り高きドラゴンが、このような失態を晒すとは。」
「・・・た、助けてくれ。兄上・・・。」
「父上、いや魔王様もご立腹だ。」
「兄上、父上と話させてくれ!」
「お前は、もう助からぬ。せめて、我が血肉となって、生きよ。」
「・・・や、やめてくれ!兄上!」
「さらばだ、弟よ。」
「グワーッ」
光竜は、一瞬にして光の玉になってしまった。
そして、アバンは一気にそれを飲み込んだ。
アバンの体が青白く光る。
ウォーーーーーー!!!!
光が消えると、アバンはフーッと息を吐いた。
アバンからは、明らかに以前と違う闘気がみなぎっていた。
「もうすぐだ。もうすぐ、父上を、魔王を超えられる!」
ハハハハハハッ!!
アバン高らかに笑った。
現在。ハクの屋敷。
「つ、疲れた。」
大量の荷物を持たされた僕とロックは、荷物を床に置くとそのまま、倒れこんだ。
「こ、こんなに何を買ったんだ?」
「全部、必要なものよ。服とか、お化粧品とか。」
「こ、こんなに要らないと思うけど、おいら。」
「使うから、買ったんだよ。文句あるか?」
イボンヌが睨みを利かせて言う。
「・・・ないです。」
僕と、ロックは返す言葉が無かった。
その夜。
風呂に入りながら、僕は考え事をしていた。
光竜は、勇者一行に倒されたから、日本に転生してきた。
そして、『日記の男』アバンの仲間になった。
ほかの四天王も同じように転生していたら、かなりの強敵だ。
・・・僕も桜花もダークドラゴンに倒されて、そのあとのことは分からない。
もし、勇者が、ダークドラゴンと魔王を倒していたら、日本に転生している可能性があるんじゃないか?
僕は背筋が寒くなった。
勇者ユウが居ないこの日本で、魔王を倒すことなんて出来るのか?
どちらにしろ、今の僕の力では太刀打ちできないだろう。
とにかく、今はアバンを倒すことだけを考えよう。
ダークドラゴンと魔王が日本に転生している可能性があることは、他の3人には伏せておくことにした。