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第14話 休息II

「そうは言ってもさー。」

ロックがソファに座って足をバタバタさせている。

「簡単にアジトの情報なんて見つからないよねー。」

桜花は片肘をついている。

「転生者や魔法に関する事件なんて、そうそう起きないしねー」

イボンヌは、ビールを飲みながら横になっている。

確かに、この日本で魔法が関連するような事件が起きたら、すぐに大ニュースになる。

そんな不思議な事件はそうそう起きないものだ。

だからこそ、注意して見ていないといけない。


「最近、動きがないし。暇だから、気晴らしに行かない?」

イボンヌがぼそっと言う。

「大賛成!気晴らししようぜ!」

ロックは、すでにノリノリだ。

「そうだね。気晴らしも必要じゃない?ハク?」

桜花も乗り気らしい。仕方ない。

「よし、明日は気晴らしにショッピングモールに行こう。」

「やったー!」

・・・桜花が一番喜んでいた。


翌日。

約束通り、ショッピングモールにやってきた。

「買い物♪買い物♪」

「ゲーム♪ゲーム♪」

3人とも楽しそうだ。

息抜きと言っても油断はできない。

僕は、周りを注意深く警戒しながら、歩いていた。

そして、気が付いた。。。3人ともいない!!!

他の3人とはぐれてしまった。

今、襲われたらマズイ!

僕は、慌てて3人を探し回った。


ゲームコーナー。

「よし、ぬいぐるみゲット!」

円盤キャッチャーで遊んでいるのはロックだ。

「200円の投資でゲットだぜ!おいらって天才♪」

「ロック!見つけた!」

僕の声にロックが驚く。

「見てよ!ぬいぐるみゲットだぜ!」

「一人になったら危ないだろ!襲われたらどうする?」

「こんなに人が多いところで襲わないよ。」

「うるさい!単独行動禁止!」

「わかったよ。」


僕はロックと合流した。


同じころ、ショッピングモールの3階。

「買い物、楽しいね♪イボンヌ。」

「こんなに買って大丈夫か?桜花。」

「大丈夫。大丈夫。大魔法使いハック様はお金持ちだから♪」

「そうなのか?」

「そうだよ。あんなお屋敷に住んでるんだもん。」

「確かにそうだよな。」


2人の背後から忍び寄る、黒い影。

「・・・誰がお金持ちだって?」

「ひゃー!」

「何してるんだ?2人とも!」

「か、買い物です。。。」

「誰のお金で?」

「は、ハック様のお金で。。。」

「さあ、2人とも、一緒に来い!」

「ごめんなさい~!!」

・・・まったく、もう。


僕は、イボンヌ・桜花と合流した。


僕らは、フードコートで休憩することにした。

「モックバーガーにしよう♪」

みんなでハンバーガーを食べる。

「これ、美味いな!びっくりだ。」

ロックとイボンヌは、初めてだったか。

「本当だ。この肉は、何の肉だ?サーバルタイガーか?」

「牛の肉だよ。」

「牛って美味いんだな!」

喜んでくれてよかった。

ロックとイボンヌには、初めて見るものばかりで、大満足だったようだ。

あれこれ質問されて、僕は少々疲れたけど。

こうして、僕らの息抜きは終わった。




遡ること、数日前。関東地方某所。

光竜は、アバンの元に戻っていた。

「情けないぞ、弟よ。今は人間の姿とは言え、誇り高きドラゴンが、このような失態を晒すとは。」

「・・・た、助けてくれ。兄上・・・。」

「父上、いや魔王様もご立腹だ。」

「兄上、父上と話させてくれ!」

「お前は、もう助からぬ。せめて、我が血肉となって、生きよ。」

「・・・や、やめてくれ!兄上!」

「さらばだ、弟よ。」

「グワーッ」

光竜は、一瞬にして光の玉になってしまった。

そして、アバンは一気にそれを飲み込んだ。

アバンの体が青白く光る。

ウォーーーーーー!!!!

光が消えると、アバンはフーッと息を吐いた。

アバンからは、明らかに以前と違う闘気がみなぎっていた。

「もうすぐだ。もうすぐ、父上を、魔王を超えられる!」

ハハハハハハッ!!

アバン高らかに笑った。





現在。ハクの屋敷。

「つ、疲れた。」

大量の荷物を持たされた僕とロックは、荷物を床に置くとそのまま、倒れこんだ。

「こ、こんなに何を買ったんだ?」

「全部、必要なものよ。服とか、お化粧品とか。」

「こ、こんなに要らないと思うけど、おいら。」

「使うから、買ったんだよ。文句あるか?」

イボンヌが睨みを利かせて言う。

「・・・ないです。」

僕と、ロックは返す言葉が無かった。

その夜。

風呂に入りながら、僕は考え事をしていた。

光竜は、勇者一行に倒されたから、日本に転生してきた。

そして、『日記の男』アバンの仲間になった。

ほかの四天王も同じように転生していたら、かなりの強敵だ。

・・・僕も桜花もダークドラゴンに倒されて、そのあとのことは分からない。

もし、勇者が、ダークドラゴンと魔王を倒していたら、日本に転生している可能性があるんじゃないか?

僕は背筋が寒くなった。

勇者ユウが居ないこの日本で、魔王を倒すことなんて出来るのか?

どちらにしろ、今の僕の力では太刀打ちできないだろう。

とにかく、今はアバンを倒すことだけを考えよう。

ダークドラゴンと魔王が日本に転生している可能性があることは、他の3人には伏せておくことにした。

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