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第16話 水竜

夜が明けた。


前日のオーガ襲来で寝不足気味だが、山の向こうの城跡に向かう。

しばらく行くと、『魔城城跡 500m→』という看板が出てきた

僕は看板の手前で車を停めた。

「よし、ロック。偵察を頼む。何か怪しいことがあったら、すぐに戻ってくれ。」

「わかった。行ってくる。」

そう言うと、ロックの姿はあっという間に消えてしまった。

目にも止まらぬ速さとはこのことだな。


数分後。


ロックが無事に帰ってきた。

「どうだった?」

桜花が聞く。

「ちょっと高くなった丘みたいのがあって、これが城跡かな?って思って裏に回ったら。」

「・・・裏に回ったら?」

僕とイボンヌがシンクロした。

「ダンジョンの入り口があった。」

「ダ、ダンジョン!?」

僕は驚いた。この現代日本にダンジョンだって!?

「うん、石でできたダンジョンの入り口だった。下に続く階段があったし。」

僕は、考えた。

これは、明らかに罠に違いない。

それでも、行くか?

どうする?

「よし!行こう!」

僕は、覚悟を決めた。

そして、

装備を整えた僕らは、ついにダンジョンの入り口に立った。


日本の遺跡のそれとは明らかに違う、西洋風の装飾が施された石造りの入り口は、元の世界のそれと同じように見えた。

これは、魔王がその魔力で作ったのだろうか?

僕は、ごくりと唾を飲み込んだ。

「よし、入るぞ。」

僕たちは意を決して、ダンジョンに足を踏み入れた。


「光よ、照らせ。ライト!」

桜花が魔法を唱えると、周りが明るく照らされた。

僕達は階段を降りていく。

すると、

ゴゴゴゴ・・・

「あっ、入り口が閉まってく!」

後ろを振り返って、イボンヌが叫んだ。

「大丈夫、桜花の脱出魔法がある。」

このダンジョンで使用可能ならだけど。

とにかく、退路が絶たれたからには、前に進むしか無い。


しばらく階段を降りると、広い部屋に出た。

「大きな部屋だな。」

「見て!あそこに扉がある。」

桜花が扉を見つけた。鍵は掛かっていないようだ。

扉を開けて奥に進むと、また、大きな部屋があった。

バタン

音に驚いて後ろを振り返ると、扉が閉まっていた。

慌てて開けようとしても、開かない。

そして、低い声がした。

「ついに、ここまで来たか。待っていたぞ。」

空中に黒い煙の塊が現れ、それが人の形になっていく。

青いスーツを来た男が現れた。

左目が潰れて、傷が出来ている。

「ハック・フォクサーに、オウカ・ブロッサム。久しいな。」

コイツは!

「水竜(ウォータードラゴン)!!」

「覚えていてもらったとは、光栄だ。」

「こいつが水竜。。。」

ロックとイボンヌの声が震えている。

無理もない。

四天王の一人・水竜が目の前にいるのだ。

「みんな!戦闘態勢だ!!」

僕は叫んだ。


「君たちにここを通す訳には行かないな。ウォーターボール!」

水竜の両手から強力な水の塊が放たれる。

「炎よ、出でよ!フレーム!」

僕の魔法で水の塊を打ち消す。

「あたしの矢を喰らえ!!」

イボンヌが矢を放つが簡単に弾かれてしまった。

「クソっ!あたしの矢が効かない。」

「おいらの足について来れるかな?」

ロックが瞬足で攻撃を仕掛ける。

が、弾き返された。

「うわー!くそう!」


「桜花!」

「任せて!拘束せよ、チェーン!」

桜花が拘束魔法を放つ!

「こんなもの!」

いとも簡単に弾かれてしまった。


こうなったら、相手に隙を与えない波状攻撃しかない!

「みんな、攻撃の手を弛めるな!波状攻撃だ!」

僕の炎魔法、桜花の拘束魔法、イボンヌの矢の連射攻撃、ロックの瞬足を活かした撹乱攻撃。流石の水竜もダメージが大きいようだ。

「ぐぬぅ。なかなかやるな。だが、まだまだ。」

水竜は気を溜めている。

これは、マズイやつだ。

「みんな!集まれ!桜花は、防御魔法頼む!」


「わかった。防御せよ、バリア!」

僕らの周りにバリアが張られた。

水竜の魔法攻撃が襲いかかる。

「水よ荒ぶれ!!ウォーターハザード!!」

猛烈な水流だ。

しかし、バリアで、防げている。

僕は炎魔法の連弾を喰らわす。

「炎よ、出でよ。インフェルノ!」

水流を炎で一気に押し返した。


ガーッ!グオオオッ!


「イボンヌ!今だ!」

「任せろ!」

シューっ!ビシッ!

矢が左胸に命中した!

グオォーーー!!! 

トドメだ!ロック!

「よし!」

ロックのタガーが水竜の右目を潰す。

クッ、グハッ!

ついに水竜が倒れた。


「む、無念、、、悔しいが完敗だ。・・・さらばだ。」

水竜の体が青白い光に包まれる。

そして、水竜も空中に消えた。

光竜に続いて、水竜まで。

何か悪い予感がする。

しかし、勝ちは勝ちだ。

僕らは先へ進んだ。

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