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第17話 火竜

エルドランド。

ユウと僕がパーティを組んで、1年ほど経ったある日。

旅先の街の酒場で、2人でお酒を飲んでいた時、事件が起こった。

「小娘の分際で、何してくれた!」

「あ、ご、ごめんなさい!」

大きなイカつい男が3人。

少女に因縁をつけている。

「俺の大事な装備がビールまみれになったじゃねーか!どうしてくれるんだ?」

「ご、ごめんなさい!弁償します!」

「じゃあ、体で払って貰おうか。」

「ひぃっ!」

男が少女の腕を掴んだ。

もう、見ていられない。ユウと僕が飛び出した。

その時、もう一人の男が現れた。

「君たち、こんな小さな娘に因縁ふっかけて楽しいのかい?」

「誰だ?お前は?」

「俺はコウ。冒険者だ。」

「そんな体で、俺たちに勝てると思っているのか?いい度胸だ。」


マズイ、3対1だ。流石にやられるだろう。

僕とユウは、コウに加勢することにした。

コウが驚いて聞く。

「君達は?」

「僕は、戦士のユウ、彼は魔法使いのハック、助太刀するよ。」

「クソ、やっちまえ!」

3対3の喧嘩が始まった。

数分後、、、。

僕らが勝った。

男達は、店の外に逃げて行った。


「ありがとうございました!」

少女にお礼を言われた。

「酒場は、荒くれ者が多いから、気をつけてね。」

「はい。気をつけます。」

少女は申し訳なさそうだ。

「君、名前は?」

「私はオウカ・ブロッサム。回復師(ヒーラー)です。」

ユウがとんでもないことを言い出した。

「僕は、戦士ユウ、彼は魔法使いハック。コウとオウカ。2人とも仲間にならない?」

「えっ、確かに、今一人だけど、良いんですか?」

「もちろん、ヒーラーなら大歓迎だよ。」

「俺も良いぜ。アンタら良い人そうだし、面白そうだ。」

コウも乗り気のようだ。

「じゃあ、決まりだね。」

「邪魔も入ったし、4人で飲み直そうか?」

こうして、戦士コウとヒーラー・オウカがパーティに加わった。

僕らが四天王と戦うのは、もう少し後のことである。




水竜を倒し、

僕らは扉の先に進んだ。

また階段だ。

階段の先には、また、大きな部屋があった。

部屋の奥には玉座があり、男が座っている。

男は、炎のように真っ赤なスーツを着ている。

右目が潰れていて、顔の半分には、魔法攻撃の跡のような痣がある。

「よく来たな。魔法使い、ヒーラー。」

「アーチャーと、シーフもいるぜ!」

ロックが身構えながら叫ぶ。

「そんなパーティで、私に勝てると思っているのか?」

「勝てるさ!」

イボンヌが相手に弓を引きながらを叫ぶ。

「私は、四天王の火竜(ファイアドラゴン)。前世での雪辱を晴らさせてもらう。」

そう言うと、火竜は構えた。


「戦闘態勢!」

僕が叫ぶと、みんなは、戦いの陣形になった。

「先に行かせてもらうぞ!ファイアブレス!」

火竜の口から放たれた激しい炎が向かってくる。

「防御せよ!バリア!」

桜花のバリアが炎を防ぐ。

その隙を突いて、イボンヌの矢が連射される。


クッ!


確実にダメージは与えているようだ。

ロックが瞬足で畳み掛ける。

目にも止まらぬ速さで、火竜に斬りつけた。

「どうだ!おいらのスキルは!」

「なかなか、やるじゃないか!しかし、私は四天王の一人。この程度では倒せぬ!」

「氷よ、出でよ!ブリザード!」

猛烈な吹雪が起こり、火竜に襲いかかる。

火竜は、身構えて耐えている。

僕は、もう一段階、魔力を上げる。

「もっとだ!」

吹雪で火竜の姿が見えない。

しかし、手応えは確かにあった。

でも、まだ足りない。

「桜花!攻撃補助魔法をかけてくれ!」

「わかった!強化せよ!リインフォース!」

吹雪が、さらに強くなる。

ウガーッ!!

ふっと手応えが無くなった感覚がした。

目の前には、全身氷漬けになった火竜がいた。

「イボンヌ!今だ!」

僕は叫んだ。

「よし、わかった!」

イボンヌが矢を連射する。

氷漬けの火竜にヒビが入り砕け散った。

しかし、粉々になった破片が一塊になって、青白い光に包まれる。

宙に浮いた破片の塊は、フッと消えた。

「またか。」

僕は溜息をついた。

気を取り直して、前に進もう。




同じ頃、ダンジョンの奥深く。

瀕死の水竜と、バラバラの氷の破片になった火竜が、アバンの前にいた。

「その身を捧げよ。」

アバンがそう言うと、水竜と火竜は、青白い光の球になった。

その球を手に取って、アバンは2つとも飲み込んだ。

ウオーーーーッ

アバンの闘気が、また大きくなった。


「見事だ、わが息子よ。全てを見ていた魔王が満足そうに話す。

「そなたは、ダークドラゴン改め、エレメントドラゴンと名乗るが良い。」

アバンは魔王に近づく。

「父上、いや、魔王よ。私は、すでに、あなたを超えた。」

「アバン?何を言っている?」

魔王は動揺している。

「私が、魔王となる時が来たのだ!」

「アバン、何をする!」

「もう、父上の好きにはさせん!死ね!ダークネス!」

アバンが魔王に向かって、闇魔法を唱えた。

「裏切ったな!アバン!」

その言葉を最後に、魔王の姿が消えた。

「これで、ついに私が魔王だ!!」

アバンは、満足げに笑った。

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