エルドランド。
ユウと僕がパーティを組んで、1年ほど経ったある日。
旅先の街の酒場で、2人でお酒を飲んでいた時、事件が起こった。
「小娘の分際で、何してくれた!」
「あ、ご、ごめんなさい!」
大きなイカつい男が3人。
少女に因縁をつけている。
「俺の大事な装備がビールまみれになったじゃねーか!どうしてくれるんだ?」
「ご、ごめんなさい!弁償します!」
「じゃあ、体で払って貰おうか。」
「ひぃっ!」
男が少女の腕を掴んだ。
もう、見ていられない。ユウと僕が飛び出した。
その時、もう一人の男が現れた。
「君たち、こんな小さな娘に因縁ふっかけて楽しいのかい?」
「誰だ?お前は?」
「俺はコウ。冒険者だ。」
「そんな体で、俺たちに勝てると思っているのか?いい度胸だ。」
マズイ、3対1だ。流石にやられるだろう。
僕とユウは、コウに加勢することにした。
コウが驚いて聞く。
「君達は?」
「僕は、戦士のユウ、彼は魔法使いのハック、助太刀するよ。」
「クソ、やっちまえ!」
3対3の喧嘩が始まった。
数分後、、、。
僕らが勝った。
男達は、店の外に逃げて行った。
「ありがとうございました!」
少女にお礼を言われた。
「酒場は、荒くれ者が多いから、気をつけてね。」
「はい。気をつけます。」
少女は申し訳なさそうだ。
「君、名前は?」
「私はオウカ・ブロッサム。回復師(ヒーラー)です。」
ユウがとんでもないことを言い出した。
「僕は、戦士ユウ、彼は魔法使いハック。コウとオウカ。2人とも仲間にならない?」
「えっ、確かに、今一人だけど、良いんですか?」
「もちろん、ヒーラーなら大歓迎だよ。」
「俺も良いぜ。アンタら良い人そうだし、面白そうだ。」
コウも乗り気のようだ。
「じゃあ、決まりだね。」
「邪魔も入ったし、4人で飲み直そうか?」
こうして、戦士コウとヒーラー・オウカがパーティに加わった。
僕らが四天王と戦うのは、もう少し後のことである。
水竜を倒し、
僕らは扉の先に進んだ。
また階段だ。
階段の先には、また、大きな部屋があった。
部屋の奥には玉座があり、男が座っている。
男は、炎のように真っ赤なスーツを着ている。
右目が潰れていて、顔の半分には、魔法攻撃の跡のような痣がある。
「よく来たな。魔法使い、ヒーラー。」
「アーチャーと、シーフもいるぜ!」
ロックが身構えながら叫ぶ。
「そんなパーティで、私に勝てると思っているのか?」
「勝てるさ!」
イボンヌが相手に弓を引きながらを叫ぶ。
「私は、四天王の火竜(ファイアドラゴン)。前世での雪辱を晴らさせてもらう。」
そう言うと、火竜は構えた。
「戦闘態勢!」
僕が叫ぶと、みんなは、戦いの陣形になった。
「先に行かせてもらうぞ!ファイアブレス!」
火竜の口から放たれた激しい炎が向かってくる。
「防御せよ!バリア!」
桜花のバリアが炎を防ぐ。
その隙を突いて、イボンヌの矢が連射される。
クッ!
確実にダメージは与えているようだ。
ロックが瞬足で畳み掛ける。
目にも止まらぬ速さで、火竜に斬りつけた。
「どうだ!おいらのスキルは!」
「なかなか、やるじゃないか!しかし、私は四天王の一人。この程度では倒せぬ!」
「氷よ、出でよ!ブリザード!」
猛烈な吹雪が起こり、火竜に襲いかかる。
火竜は、身構えて耐えている。
僕は、もう一段階、魔力を上げる。
「もっとだ!」
吹雪で火竜の姿が見えない。
しかし、手応えは確かにあった。
でも、まだ足りない。
「桜花!攻撃補助魔法をかけてくれ!」
「わかった!強化せよ!リインフォース!」
吹雪が、さらに強くなる。
ウガーッ!!
ふっと手応えが無くなった感覚がした。
目の前には、全身氷漬けになった火竜がいた。
「イボンヌ!今だ!」
僕は叫んだ。
「よし、わかった!」
イボンヌが矢を連射する。
氷漬けの火竜にヒビが入り砕け散った。
しかし、粉々になった破片が一塊になって、青白い光に包まれる。
宙に浮いた破片の塊は、フッと消えた。
「またか。」
僕は溜息をついた。
気を取り直して、前に進もう。
同じ頃、ダンジョンの奥深く。
瀕死の水竜と、バラバラの氷の破片になった火竜が、アバンの前にいた。
「その身を捧げよ。」
アバンがそう言うと、水竜と火竜は、青白い光の球になった。
その球を手に取って、アバンは2つとも飲み込んだ。
ウオーーーーッ
アバンの闘気が、また大きくなった。
「見事だ、わが息子よ。全てを見ていた魔王が満足そうに話す。
「そなたは、ダークドラゴン改め、エレメントドラゴンと名乗るが良い。」
アバンは魔王に近づく。
「父上、いや、魔王よ。私は、すでに、あなたを超えた。」
「アバン?何を言っている?」
魔王は動揺している。
「私が、魔王となる時が来たのだ!」
「アバン、何をする!」
「もう、父上の好きにはさせん!死ね!ダークネス!」
アバンが魔王に向かって、闇魔法を唱えた。
「裏切ったな!アバン!」
その言葉を最後に、魔王の姿が消えた。
「これで、ついに私が魔王だ!!」
アバンは、満足げに笑った。