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第21話 四精獣

数日後。

僕らは、イブの話を聞いて、訓練を再開していた。


「腕立て、300回!」

「は、はい!」

「スクワット、300回!」

「は、はい!」

「桜花は、魔法連続詠唱、300回!」

「イボンヌは、射的、300回!」

「ロックは、ダッシュ、300本!」


ロックがヘロヘロになっている。

「おいら、もう無理だ。」

イボンヌも腕が上がらないようだ。

「あたしも、もう無理だ。」

桜花は、また一人で怒っている。

「ハクも訓練しなさいよ!」

「僕もこう見えて訓練中なんだ!」

今後、予想される戦いを考えれば、もっと鍛えなくては。

僕だって、両手両足に付けている重りを以前の3倍の重さにして鍛えているんだ。

魔法使いだって体力勝負なのだ。

「訓練の後のごちそうはもちろん、今回もカレーだ!」

誰が何と言おうと、僕のカレーは美味い・・・はずだ。

たとえ10日連続であろうと。

「10日目のカレーが一番美味しいんだ!」

「もう、勘弁して。。。」

桜花、イボンヌ、ロック、3人ともウンザリしている。

「このカレーライスという料理は美味しいな!」

イブだけは、喜んで食べてくれた。



「イブ!この世界には、どうやって来るの?」

桜花とイブはだいぶ打ち解けたみたいだ。

「ぼくは、エルドランドとこの世界を自由に行き来できるんだよ。」

「へぇ、便利だね。」

イボンヌも話に入る。

「ミカエルも同じ力を持ってるんだ。だから、ぼくとミカエルは、2つの世界で、ずっと戦い続けてる。」

「ずっとって、いつから?」

ロックも入ってきた。

「そうだなー。200年以上かな?」

「200年以上って、イブは何歳なの?」

桜花の疑問も当然だ。

「250歳くらいだったかな。」

「250歳!やっぱり敬語使わなきゃ。」

「だから、年の話はしたくなかったんだよ。敬語は禁止ね。」

まぁ、女神って時点で、そうだろうなと思ったけど、どう見ても、高校生くらいにしか見えない。羨ましい。


「イブ。先代の勇者ノアって、どんな人なんだ?」

イボンヌは、先代の勇者のことが気になるらしい。

「ノアは、ミカエルと戦って、自分の命と引き換えにミカエルを封印した。それで、ぼくの力でこの世界に転生させた。見た目は、小汚いおっさんだな。ただ、その力はぼくのお墨付きだ。」

「小汚い・・・。」

「ノアは、エルドランドでは、魔法使いとヒーラーとアーチャーの4人パーティで旅してたな。」

「アーチャー・・・。」

イボンヌの様子がおかしい。

「勇者ノアと旅したアーチャーって、エルフなのか?」

ロックが何かに気づいたようだ。

「そうだ、エルフの男で凄腕だった。名前は確か、イワンだったか。」

「イワン・・・。」

イボンヌがやっぱりおかしい。

「実は、先代の勇者パーティのアーチャーは、あたしの父だ。」

「えーっ!」

桜花とロックと僕が同時に叫んだ。

「父とは、わけあって疎遠でね。ろくに話もしないうちに、あたしが家を出たから、その後のことはあまり知らない。」

「アーチャーは、生き残って帰って来たってきいたから、エルドランドにいるはずだ。」

「そう、たしかに父は帰って来たけど、飲んだくれの廃人になったって聞いた。あたしは、そんな父のようにはならないと思って、同じアーチャーになった。」

イボンヌ。彼女もいろいろと辛かったんだな。


「イブ、ノアは今どこにいるんだ?」

「ぼくの指示で、魔城村を調べてくれてる。」

魔王は、まだ真城村を拠点にしてるのか。

「イブ、四精獣のことはわかるか?」

「青龍、朱雀、白虎、玄武。の4体。それぞれに特技を持っている。一体ずつ細かく説明すると、

青龍: 水属性。治癒能力に加え、天候を操る力を持つ。

朱雀: 火属性。不死身の能力に加え、炎を操り、空間を歪める力を持つ

白虎: 風属性。速度を操る能力に加え、風を刃に変え、敵を切り裂く力を持つ。

玄武: 土属性。防御力を高める能力に加え、地震を操り、地形を変化させる力を持つ。

こんな感じだな。皆、自分の意思に反して、魔王ミカエルに操られている。」

「魔王ミカエルに操られているってことは、正気に戻る可能性があるってことか。」

じゃあ、倒すのではなく、正気に戻して、元の世界に帰してやればいい。

「四精獣。また、厄介な敵だね。」

イボンヌが身震いしている。


「それから、魔王ミカエルは、エルドランドの魔物を転生させて、魔物の軍隊を作ってる。この屋敷も狙われる可能性が高い。女神のぼくが居れば、防御は問題ないと思うが。」

とにかく、前回以上の激しい戦いになるのは、間違いないな。

「2つの世界を支配しようとしてる魔王ミカエルの細かいことは、実際に戦った経験のあるノアから聞けば良い。ぼくがここにいると分かれば、きっと、フラッと帰って来る。」

勇者ノアが鍵か。

僕らは、さまざまな情報を一旦、整理することにした。



今日は、カレーにアレンジを加えた。カレーのルウに日本のダシを加えて煮込む。それに、うどんを入れる。そう、カレーうどんだ。僕だって考えているのだ。

「カレーうどん、美味しい!」

桜花は、高評価だ。

「ダシか効いてるのが良いな。」

イボンヌの評価も高い。

「うどんもシコシコして美味しいぞ。」

ロックの評判も良い。

「ぼくは、なんでも美味しいぞ。」

イブは、この世界の料理が気に入ったようだ。

アレンジ作戦、成功だな。

プシュッ

トクトクッ

ゴクゴクッ

プハーッ

「この一口の為に生きてるな。」

イボンヌが上機嫌だ

「おいら達はアイスもらうぞ。」

未成年の、桜花、ロック、イブはアイス。イブは未成年ではない気がするが。

僕もお酒でイボンヌに付き合う。

テレビでは、お笑い芸人のバラエティ番組が流れている。

僕らは束の間の団欒を楽しんだ。




一方、その頃。

関東地方。魔城村。

黒衣の男こと、魔王ミカエルが転生魔法で、次々に魔物を呼び寄せていた。

「まもなく、魔物の軍が完成する。四精獣よ、準備を整えるのだ。」

「世界を混沌で覆い尽くすのだ!」


魔王ミカエルは、高らかに笑った。

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