目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第22話 贈り物

僕は、夢を見ていた。

ここは、エルドランドと呼ばれる異世界。

僕は、勇者パーティの魔法使いだ。

ついに魔王ミカエルの城に向かう。

いよいよ最後の戦いだ。

勇者ユウ、戦士コウ、紅一点のヒーラーのオウカ、そして、魔法使いの僕・ハック。

僕らは、あと一歩で魔王に辿り着くところまで来ていた。

そこに、魔王の側近である闇竜(ダークドラゴン)・アバンが立ちはだかった。

僕は渾身の火炎魔法・インフェルノでアバンを攻撃するが、炎は簡単に弾き飛ばされる。

次の瞬間、アバンの手が振り下ろされた。

そして、目の前が真っ白になった。

『ハック、ハック!』

遠くで、オウカが呼ぶ声がする。僕は声のする方に手を伸ばした。



僕は、目を覚ました。

また、同じ夢。

アバン、あいつは、いつまでも僕を苦しめる。

しっかりしろ!ハク!

こんなことでは、魔王ミカエルには、勝てない。

パンパン!

僕は両手で頬を叩いた。


リビングに下りて、テレビをつける。

朝のワイドショーを放送している。

いつもの光景だ。

僕はキッチンで、人数分の目玉焼きを焼いて、軽く炙ったベーコンを乗せる。コーヒーはインスタントだ。お湯を沸かして、コーヒーの粉を入れたマグカップに注ぐ。牛乳とオレンジジュースを用意して、あとは、パンを焼けば朝食の準備完了だ。

「おはよう。」

地下室からイブが上がってきた。まだ、眠そうだ、髪の毛が爆裂魔法を喰らったようになっている。

「これは、金〇焼きだな!」

「目玉焼きです。」

「そう、それ!ぼくは、目玉焼きが大好きだ。」

「歯磨いて、顔洗って来い。イブ。」

「わかったぞ。」

イブは、本当に女神なんだろうか?時々疑わしい。

「おはようー。」

イボンヌが2階から下りて来た。

「ロックのイビキには、もう、ウンザリだよ。」

今日も寝不足のようだ。

「歯磨いて、顔洗って来い。イボンヌ。」

「ああ。ハクは、良く寝れるよなぁ。」

イボンヌの寝不足対策は考えないとだな。

「ハク、おはよう。」

「桜花、おはよう。」

桜花も下りて来た。

「今日も朝食の支度ありがとう。」

どういたしまして。そう言ってくれるのは桜花だけだ。

「歯磨いて、顔洗って来い、桜花。」

「は〜い。」

まだ子供だな。

3人がリビングに戻って来て、朝食を食べ始めたころ。

2階から、ロックが下りて来た。

ドタドタドタッ

「おはよう!おいら、また最後か。」

「歯磨いて、顔洗って来い。ロック。」

「おいらの、目玉焼き、取っといてくれよ!」

誰も食べないよ。

ロックが慌ただしく、リビングに戻ってきた。

いつもの朝食風景。平和な光景だ。

しかし、魔王ミカエルの脅威も迫っている。


「みんな、そろそろ食材が無くなりそうだから、今日はスーパーに買い出しに行くぞ。」

今日は、僕らの味方、町の奥様御用達のスーパー「ヨサゲヤ」に買い出しに行く事にした。

「お菓子♪お菓子♪」

「お酒♪お酒♪」

「アイス♪アイス♪」

お菓子とお酒とアイスは、一つずつ!

「ケチッ!」

「ケチッ!」

「ケチッ!」

ケチじゃない!!

・・・まったく。


「良いじゃないか?お金なら、女神であるぼくが居るから心配ないぞ。」

「女神様ー!」

「女神様ー!」

「イブ様ー!」

「イブ、甘やかさないでくれ!」

困ったもんだ。


その様子を窺う影が。

ケケケケ。桜花を魔王ミカエル様にお届けするのだ。

転生した魔物だ。


「お菓子ー!!」

桜花がお菓子が欲しくておかしくなっている。

「桜花!単独行動は危ない!」

キャーッ!

・・・言わんこっちゃない。

「桜花!どうした!」

僕らは、叫び声がした方に駆けつける。

そこには、数人の男に絡まれている桜花がいた。

「ケケケケッ。桜花、捕まえた。魔王様が喜ばれるぞ。」

コイツら、転生者か!

「束縛せよ!チャーム!」

桜花の魔法が炸裂する。

ケケケーッ!

男達が、捕縛され動けなくなった。

「イボンヌ、お願い!」

「よし!あたしの矢を喰らえ!」

シューッ!バシッ!

グゲッ!

男達の急所に矢が命中して、男達は消えた。僕とロックは出る幕無しだな。

「大丈夫か?桜花。」

「うん。私も強くなったでしょ。」

「僕が居なくても大丈夫そうだ。」

でも、少し寂しい。

ハプニングもあったが、買い物を続けた。イブの許しが出たので、お菓子とお酒とアイスは、2つずつにした。

抱え切れないくらいの買い物をして屋敷に戻った。

あー、疲れた。それにしても敵が襲って来るとは、いよいよ気を引き締めないといけない。

「今日、襲って来た敵は、明らかに

桜花を狙ってた。魔王ミカエルの手下だろう。今回は、底辺の転生者だったけど、これからは、ボスクラスも襲って来ると思う。今までよりも気を引き締めて行こう。」

僕は、みんなに話した。

「ごめんなさい。私のせいで。」

桜花が謝る。

「桜花は謝らなくて良いよ。」

イボンヌが言う。

「そうだよ。おいらが桜花を守るから、安心しな。」

ロックは頼もしい。

「そう言えば、ぼく、君たちに言わないといけないことがあるんだ。」

イブが切り出した。

「君たちが転生した時に、ぼくからプレゼントを贈っておいた。」

「プレゼント?」

「新しいスキルを追加しておいた。ハクは、光属性の魔法。桜花は、自然属性のスキル。イボンヌは、雷属性のスキル。ロックは、影属性のスキル。これからの戦いに役立つはずだ。」

「イブ、ありがとう!」

「早速、訓練しないとだな。」

僕は、早くも訓練メニューを考えていた。

翌日、早速、新スキルを試してみることにした。


「まずは、ロック。影属性だ。影を利用して、いろいろなことができる。隠密行動に役立つと思うよ。」

「よし、やってみよう。シャドウ!」

ロックの体が影の中に消えた。影だけが素早く動いている。そして、影からロックが現れた。

「これは便利だ。気に入ったよ。」

ロックの特性にピッタリのスキルだ。


「次は、桜花。自然属性のスキルだね。動物と会話したり、天気を操ったり出来る。」

「やってみるね。雨よ降れ!」

晴れ渡った空が急に曇り、雨が降り出した。ドンドン激しくなる。

「空よ晴れろ!」

激しい雨がピタッとやんだ。

このスキルも使えそうだ。


「次はイボンヌ。雷属性のスキルだ。

矢に雷を、纏わせて攻撃できる。」

「よし、やってみよう。」

イボンヌが弓を引く。

「雷よ、落ちよ。」

矢の先に稲光が起きる。イボンヌが矢を放つと、稲妻を纏った矢が真っ直ぐに飛び、木に命中した。そして、木が燃え出した。

「うわー、これは良いな。使えるよ。」


「最後はハク。光属性の魔法だね。これは、アバンやミカエルが使うのと同じ。」

「よし、やってみよう。ライトニング!」

光の矢が一瞬で真っ直ぐに飛んでいく。遠くの大木に命中した。

「うん。使いこなせそうだ。」

「ぼくから君らへのプレゼントは、以上だ。使いこなせるように頑張ってくれ。」

「ありがとう、イブ。使わせてもらうよ。」

それから、僕らは新スキルの訓練を始めた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?