エルドランドと呼ばれる異世界。
ドラゴニアの戦いで、光竜を倒し勇者の称号を得た戦士ユウのパーティは、もう一体の四天王・水竜と戦うため、湖に向かっていた。
「ユウ、水竜の住処まで、もうすぐだな。」
「コウは、戦いたくてウズウズしてるんじゃないか?」
「もう、ザコ相手は飽きたよ。強い奴と戦いたい。」
ユウもコウも、やる気満々だ。
「私の仕事が増えるから、あまり無茶はしないでね。」
オウカが2人を嗜める。
「オウカ、わかってるよ。無茶はしない。」
ユウくんがこたえた。
水竜が相手なら、僕の炎の魔法が有効なはずだ。僕の一番得意とする魔法だから、今から腕がなる。
「さっきから、ハックは何も言わないな。緊張してるのか?」
コウにいじられる。
「武者震いしてるんだよ。僕の炎の魔法の威力が見せられるから。」
「なんて言ったって、大魔法使い様だもんな。」
なんか、馬鹿にされてる気がする・・・。
湖の畔に、洞窟の入り口を見つけた。
どうやらここに水竜がいるようだ。
「闇を照らせ。ライト!」
オウカが魔法で洞窟の中を照らす。
僕らは洞窟の中に足を踏み入れた。
洞窟を奥まで進むと、広い場所に出た。
天井もかなり高い。すると、奥の方に2つの光る眼が見えた。
グォォッ!!
水竜だ!
「我が名は、ウォータードラゴン。お前らは人間か?」
「そうだ!僕は勇者ユウ!お前を倒しに来た!」
「ハハハハハ!人間ごときが何を言うか!返り討ちにしてくれる!」
そう言うと、水竜は口から激しく水の矢を噴出した。
僕らは、水の矢を避ける。
ユウとコウが水竜に切りかかる。
「強化せよ!エンパワー!」
「炎よ、出でよ!インフェルノ!」
オウカの攻撃強化魔法と僕の炎の魔法が炸裂する。
グサッ!
水竜の固い皮膚に勇者ユウの剣が突き刺さる。
ズシャッ!
戦士コウの攻撃も効いている。かなり深い傷を付けた。
ゴォー!!
僕の炎の魔法で水竜の体が燃え上がる。
「人間ごときに、こんな力が!!」
勇者ユウは、攻撃の手を緩めず、何度も切りつける。
流石の水竜も弱っている。
戦士コウの剣が、水竜の胸に突き刺さった。今だ!
「炎よ、出でよ!インフェルノ!」
炎が水竜の胸に直撃する。そして、
ウォーッ!
「これでも喰らえ!」
ザンッ!!
勇者ユウが、水竜の首を切り落とした。
僕らは、水竜に勝利した。
「やったな。ユウ。」
「ありがとう。コウ。」
「今回も、ユウくん、かっこ良かったね。」
「ユウくん、流石だよ。」
僕らは水竜の首を持って、都に凱旋した。
これで、四天王を2体倒した。あと2体。
そして、その先には魔王がいる。
この世界の平和に、また一歩近づいた。
「どうしたの。ハック。浮かない顔して。」
オウカは鋭い。
「いや、どうしても不安が消えないんだ。このままじゃ済まない気がして。」
「そうだね。この先はきっと簡単じゃない。でも、私たちは勇者とその仲間。先に進まなくちゃ。」
「オウカは強いな。」
「そんなことないよ。私だって怖い。平気なふりしてるだけだよ。」
「そうか。僕はどうしても仲間を失うのが怖いんだ。」
「でも、怖さや不安は強さの裏返しだと思うよ。大魔法使いハックは、そんなことでは負けない。」
「はは。そうだな。僕がオウカたちを守ってやる。」
「そうじゃなきゃ。ハックは。」
オウカには、いつも背中を押される。
こんな時に、伝説の先代勇者ノアがいれば、どう切り抜けただろう?
ユウくんもきっとノアの助言が貰いたいはずだ。
魔王を封印し、そのまま消えた勇者ノア。
今も何処かで生きているのだろうか?