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第26話 魔城村再び

「ハック!起きろ!」

ここは、エルドランドと呼ばれる世界。僕ら、勇者ユウ一行は、ファイアドラゴンと戦っていた。

「ハック!気が付いた。良かった。」

オウカが安堵の表情を浮かべている。

僕は、どうしたんだっけ?

「ハックはしばらく休んでいろ。ここは、僕とコウで何とかする。」

そうだ、僕はファイアドラゴンの炎の直撃を受けて、酷い火傷を負って倒れたのか。

「オウカ、ありがとう。」

僕が助かったのは、オウカの回復魔法のおかげだ。

「ハック。もう無茶しないで。」

オウカを泣かせてしまった。僕も起きて戦わなくては。

「僕も戦うッ!」

体が言うことを聞かない。ダメージが大きかったようだ。

「ハックは寝てて。後はユウくんが何とかしてくれる。」

「オウカ!強化魔法を頼む!」

コウが苦戦しているようだ。

「わかった!強化せよ!エンパワー!」

「よし、いくぞ!」

コウが火竜に切りつける。

ウオー!!

火竜がコウに気を取られている。今がチャンスだ!

勇者ユウが空中から、火竜の首めがけて落下してきた。

「喰らえ!」

頭から首、胴体へと、ユウが振り下ろした剣が、火竜の体を真っ二つに切り裂く。

バターンッ!

火竜の体は左右に分かれて倒れた。

やった。ユウくんが火竜を倒した。

「ハック!やったよ!ユウくんがファイアドラゴンを倒した!」

「ああ、やったな。」

「ハック!僕らついにやったな!」

ユウが駆け寄ってくる。

「さすがは勇者だ。」

コウもやってきた。

僕らは無敵のパーティ。何が来ても大丈夫。


僕は足手まといじゃないだろうか?

そんな思いが頭をよぎった。



現代。日本。

僕らは、魔城村に乗り込む準備をしていた。

四精獣から授かった闇属性の魔法は、正直、魔王に通用するとは思えない。でも、一応は強化することにした。中級レベルの魔物になら効果があるはずだ。

イボンヌとロックは、休養してもらうことにした。四精獣との戦いでかなり疲れているはずだ。英気を養ってもらわなくては。

イブは、回復魔法と光魔法、それに、時間と空間を操る魔法が使える。桜花がいない穴を埋めてもらうには申し分ない。魔王ミカエルの情報も教えてもらわなくては。

四精獣との闘いから、一週間後。

僕らは、魔城村に向かって出発した。

車を走らせること数時間。魔城村の城跡まで再びやってきた。

アバンとの戦いが、つい昨日のことのような気がする。

標識の所に車を停めて、森を抜けると、

そこには洋風の城があった。

周囲は黒い霧に覆われ、木々が立ち枯れている。

「こんな城、あったっけ?」

ロックが口をあんぐり開けている。

「これは、ミカエルの仕業だな。ここは日本だぞ。まったく趣味が悪い。」

イブがあきれて言う。

城の前には悪魔の像が装飾された城壁がそびえ立っていて、その真ん中に鉄製の門があった。

僕らが門の前まで行くと、勝手に門が開いた。

ゆっくりと門の中に入る。すると、

ガシャリ。

門が閉まった。

「開かないぞ。」

ロックが開けようとしてもビクともしない。

僕らは、城に向かった。

門の外から見た時よりも広く感じる。城までが遠い。

どうやら空間が歪んでいるようだ。

敵が全く出てこないのも逆に気味が悪い。


いかにもという感じの魔王の城は、グレーの石で出来ていて、禍々しい雰囲気を漂わせている。

入口の扉は、高さ3メートルはある大きさだ。

「いよいよ、ここからが本番か。」

僕は息をのんで、扉をゆっくりと開けた。

ギィという音を立てて扉が開く。

中は薄暗い。何とかその広さが判るくらいの明るさだ。

「よし、闇を照らせ。ライト!」

イブが魔法を唱えると、周りが明るく照らされ、全体が見えた。

中央に大きな階段。左右に扉があって、奥に部屋があるようだ。

「一つずつ、潰していくしかないな。」

まずは左の扉から行くことにした。

扉を開けると、大きな部屋があった。どうやら食堂のようだ。

中央には大きな肖像画がかかっている。

「あれは、魔王ミカエルだな。本人に似て不細工だ。」

イブがいつになく毒舌だ。

食堂の奥には台所があったが、特に何も無いようだったので、僕らは元の広間に戻った。

今度は、右の扉だ。

扉を開けると、何かの作業部屋のような部屋があった。奥にもう一つ扉がある。

僕は、その奥にある扉をゆっくりと開けた。


魔王の城の奥深く。

魔王ミカエルが、両手をかざす。

その先には、魔法陣が怪しい光を放っている。

「死者の国より、甦れ。そして、我の僕として、再び働くのだ。我が息子よ!」

魔法陣が光り、黒い稲妻が走る。その中心から巨大なドラゴンが現れた。それは、桜花の自爆魔法で死んだはずの、エレメントドラゴン・アバンだった。

「父上。」

「よくぞ、戻った。息子よ。」

「父上の為、このアバン、再び仕えます。」

「頼むぞ。」

復活したアバンの目は、復讐に燃えていた。

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