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第27話 闘技場

扉の先には階段があった。

僕らは階段を降りていく。

生臭い、嫌な臭いが鼻をつく。

嫌な感じだ。

螺旋状の階段は、何処までも続いているようにみえる。

しばらく降りていくと、また扉があった。

扉を開けて中に入ると、そこは大きな広間だった。


ガルルルルッ

獣の声が聞こえた。

無数の光る目がこちらを睨んでいる。

これは、サーバルタイガーの群れだ!

僕らは身構えて、相手の出かたをうかがう。

奥には扉が見える。先に進むにはサーバルタイガーを倒すしかなさそうだ。

「ロック、イボンヌ、行くぞ!」

「炎よ、出でよ!インフェルノ!」

炎がサーバルタイガーを襲う。

ギャー!

炎から逃れたサーバルタイガーをイボンヌが弓で狙い撃ちする。

撃ち漏らした敵は、ロックが瞬足で斬りつける。

連携攻撃で、サーバルタイガーの群れを全滅させた。

「これで、終わりか?」

イボンヌが弓を構えて警戒している。

「もう、大丈夫そうだな。」

僕は、そう言うと、扉に向かった。


扉を開けると真っ直ぐ伸びた通路が現れた。

僕らは通路をドンドン進む。

「ここ、なんか出っ張ってるぞ。」

ロックが何かを見つけた。

壁の一部が出っ張って、ボタンのようになっている。

明らかに罠だ。

「ロック、押すなよ。」

まさかとは思うが、一応、ロックに注意する。

「え。もう押しちゃったぞ。」

・・・嫌な予感がする。

ゴゴゴゴゴッ!

後ろから何か音がする!

僕は後ろを振り向いた。

水だ!大量の水が流れてくる!

あっという間に、僕らは流された。

こうなったら、流れに身を任せるしか無い。


「助けて!苦しい!」

イブが溺れている!

僕は流れに逆らって泳いで、イブの手を掴んだ。イブの顔を水面に上げる。

「イブ!魔法は使えるか!バリアをはってくれ!」

「やってみる。バリア!」

バリアが風船のように僕とイブを包む。先の方に流されていた、イボンヌとロックも助け上げた。

「助かった。ありがとう。」

イボンヌもロックも息を切らしている。

バリアに包まれた僕たちは、そのまま流されて行った。


トン。


行き止まりに着いたらしい。

水が引き、バリアが解けた。

そこは、大きな闘技場のような場所だった。

「ここは、コロシアム?」

僕らは大きな闘技場の真ん中にいた。

ウオー!

客席は、無数の魔物で埋まっている。

正面には鉄格子があって、何かの姿が見える。かなり大きい。

「あれは、」

イボンヌが息を呑む。

「サイクロップスだ!」

鉄格子がゆっくりと開き、巨大な体が現れた。左手には巨大な棍棒を持っている。

サイクロップスは、ゆっくりと前に歩き出す。

「おいらの出番だな!影走り!」

まずは、ロックが足を活かした攻撃を仕掛ける。目にも止まらぬ速さで、サイクロップスを斬りつけて行く。

グウォー!!

全身を細かく斬りつけられて、地味に効いてきているようだ。

「雷よ、纏え!」

シュー!ビシビシッ!!

イボンヌの矢が体に突き刺さる。雷も効いている。

「よし!これでどうだ!炎よ、出でよ!インフェルノ!」

グゥアー!!

「イボンヌ!目を狙え!」

「わかった!雷よ、纏え!」

シュー!ザクッ!

サイクロップスの一つ目にイボンヌの矢が命中した。

ガーッ!

サイクロップスが前のめりに倒れた。

やった。倒したぞ。

その後ろから、さらに巨大な影が現れた。ゴーレムだ!!

ゴーレムは、サイクロップスを踏みつけ、前に出てきた。

「ロック!イボンヌ!」

「任せろ!」

ロックが影走りで斬りつけ、イボンヌが雷を纏った矢を連射する。

「水よ、轟け!アクアストリーム!!」

洪水のような水がゴーレムを襲う。

ヴヴォー!!

ゴーレムが倒れた。そして、砂になって消えていった。

僕らは開いた鉄格子の向こう側に向かって足を進めた。

鉄格子の向こうは、洞窟の中の広い空間のような場所だった。

その奥に巨大な竜のような生き物がいた。目は血走っていて、涎を垂らしている。唸り声を上げながらこちらを見た。その姿は・・・、

「アバン!!」

その竜は、紛れもなく闇竜・アバンだった。桜花の自爆魔法で消えたはずだ。なぜココにいる?

「ミカエルめ、息子をあの世から呼び寄せたな。」

イブが言った。

「あの世から呼び寄せる。そんなことが出来るのか?」

「魔王ミカエルなら、出来るな。あやつ、なり振り構ってられなくなったか。」

「ぼくの出番だな。束縛せよ!グラビティバインド!」

グワーッ。

アバンは上から何かで押し付けられているようにされている。

「強化せよ!リインフォース!エンパワー!」

僕らの攻撃力が強化される。

「あとは、防御せよ!バリア!」

僕らの体に防御魔法がかけられた。

「さあ、思う存分、戦え!」

「ありがとう!イブ!」

よし、今度こそアバンをこの手で倒す!

「影走り!行くぞー!!」

ロックの影がアバンの周囲を素早く動き回り、タガーで体を斬りつける。ノアとの修行の成果で、竜の皮膚をも切り裂いていく。

「雷よ、纏え!」

シュー!バシバシバシッ!

イボンヌの雷の矢がアバンに突き刺さる。

アバンは口から炎を吐いて反撃するが、僕らには当たらない。

どうやら、以前のような理性は失っているようだ。

「光よ、出でよ!ライトニング!」

光の矢が、アバンを貫く。

アバンは闇の霧を吐いて反撃するが、僕らはバリアで防ぐ。

これなら行ける!

「炎よ、出でよ!インフェルノ!!」

アバンの体が炎に包まれる。

ギャー!!

アバンは力尽きた。ついに、桜花の仇を獲った。

僕は、感極まって泣いていた。ついに、僕の手でアバンを倒したぞ!!

「ハク、泣いている場合ではないぞ。桜花を助けなければ。」

そうだ、イブのいう通り、泣いている暇はない。

「よし、みんな!行くぞ!魔王ミカエルを倒すんだ!」

「おう!」

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