「カルロスさん、大変です!」
「シモン、どうした。そんなに慌てて」
カルロスさんはのんびりと読書をしている。
「ご、ゴブリンがストライキ中です」
「なに?」
さすがに異常事態だと思ったようだ。ガバッと起き上がると鋭い視線を投げつけてくる。いや、いつもこうであって欲しいんだけど!
「奴ら、理不尽だって言うんですよ。『自分たちの待遇を改善しろ』って」
「待遇改善? 具体的には何を要求している?」
「それが、いつも一層目に配置されるのが不満らしいです。『俺らは雑魚モンスターじゃない』って」
確かにゴブリンたちの言い分も分からなくはない。しかし、それでは新米冒険者の相手がいなくなってしまう! そうなれば、ダンジョン運営に支障が出る。そして、モンスターを管理する僕たちに雷が落ちる。それだけは避けなくてはならない。
カルロスさんは顎に手をやると何やら考えているようだった。
「そうだな……。奴らの配置を変えよう。三層目に置く。代わりにオークが一層目だ」
「了解です! さっそくダンジョンに行ってきます」
「お前、死にたいのか? それは、モンスター教育係のエミリー担当だ。彼女なら奴らをうまく扱える」
言われてみれば、ダンジョンに行ったところで役には立てないだろう。そして、僕の遺骨を拾うミッションが追加される未来が見える。それだけは勘弁だ。
「では、エミリーさんに報告します!」
数日間、問題はないように思えた。が、僕の考えはすぐに打ち砕かれた。
「カ、カルロスさん!」
「そう慌てるな。で、何があった?」
「それが……今度はオークが『冒険者が弱すぎる』と訴えてきました」
まさか、こんなことになるとは。確かに三層目にいた彼らにとっては物足りないかもしれない。それに、新米冒険者は歯が立たず辞めてしまう。そうなれば、ギルドからお金が来なくなり、管理課の運営に問題がでる。
「なるほど。俺はさっき『ゴブリンが不満を示しいている』という話を聞いた」
「え、三層に移動させたはずでは……?」
カルロスさんは「奴ら、今度は冒険者が強すぎると文句を言いだした」と頭を抱える。
「しょうがない、配置を元に戻す。そうすれば、ゴブリンとオークの不満は解決されるだろ」
もし、それで解決するならありがたい。
「きっと、ゴブリンも満足するだろうよ。『一層にいるのも悪くない』って」