「シモン、最近サボってないか? いくら仕事に慣れてきたからって、それはよくないぞ」
「そんなことありません! じゃあ、何か仕事くださいよ。暇で困ってるんです」
優秀になった部下を褒めないとは、カルロスさんも上司失格だな。
「よーし、分かった。仕事をやる。エミリーの手伝いをしてこい。モンスター管理課の一員として、どうやって育成されているかをしっかりと目に焼き付けろ。そういうことだ、エミリー頼んだ」
「ちょっと、勝手に押し付けないでよ。……仕方ないわね。シモン、ついてきて」
「ここがモンスターを教育する場所よ」
そこには柵に囲まれたスライムや筋トレをしているオークの姿があった。
「なるほど。それで、僕はどんな仕事をすればいいんでしょうか」
「最近、モンスター育成が間に合ってないの。具体的にはクラーケンが」
確か、一週間前に海のダンジョンが増えたはずだ。数が足りなくても当たり前だろう。
「ここにモンスターの作り方があるわ。カルロスから『シモンは新米卒業だ』と聞いたから、一人でできるわね?」
「もちろんです。ただ、心配なので最初だけ教えてください」
なんだ、モンスターを作るのも簡単じゃないか。これなら、エミリーさんの助手として活躍できそうだ。
「どう? 順調かしら」
「ええ、もちろんです! 数匹、ダンジョンに投入しました」
「ほんと? 助かるわ。その調子でお願い」
「念のため一つ確認させてください。クラーケンって足は十本ですよね?」
「クラーケンの足は八本よ! まさか……」
エミリーさんの顔が真っ青になる。
あ、やらかしたっぽい。
「じゃあ、経験値を増やしましょう。増えた足の分だけ」
「はあ。カルロスも大変ね。シモン、あなたはもとの仕事に戻りなさい」
「じゃあ、こうしましょう。十本足のクラーケンは見つけただけで報酬がもらえる。そうすれば、クラーケンを探す手間が省けます」
エミリーさんから本が飛んでくる。
「それじゃ、あなたが行きなさい! 報酬があれば働かなくて済むわよ。もし、生きていれば、だけれど」