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第6話 当社比1.25倍です!

「シモン、最近サボってないか? いくら仕事に慣れてきたからって、それはよくないぞ」


「そんなことありません! じゃあ、何か仕事くださいよ。暇で困ってるんです」


 優秀になった部下を褒めないとは、カルロスさんも上司失格だな。


「よーし、分かった。仕事をやる。エミリーの手伝いをしてこい。モンスター管理課の一員として、どうやって育成されているかをしっかりと目に焼き付けろ。そういうことだ、エミリー頼んだ」


「ちょっと、勝手に押し付けないでよ。……仕方ないわね。シモン、ついてきて」





「ここがモンスターを教育する場所よ」


 そこには柵に囲まれたスライムや筋トレをしているオークの姿があった。


「なるほど。それで、僕はどんな仕事をすればいいんでしょうか」


「最近、モンスター育成が間に合ってないの。具体的にはクラーケンが」


 確か、一週間前に海のダンジョンが増えたはずだ。数が足りなくても当たり前だろう。


「ここにモンスターの作り方があるわ。カルロスから『シモンは新米卒業だ』と聞いたから、一人でできるわね?」


「もちろんです。ただ、心配なので最初だけ教えてください」





 なんだ、モンスターを作るのも簡単じゃないか。これなら、エミリーさんの助手として活躍できそうだ。


「どう? 順調かしら」


「ええ、もちろんです! 数匹、ダンジョンに投入しました」


「ほんと? 助かるわ。その調子でお願い」


「念のため一つ確認させてください。クラーケンって足は十本ですよね?」


「クラーケンの足は八本よ! まさか……」


 エミリーさんの顔が真っ青になる。


 あ、やらかしたっぽい。


「じゃあ、経験値を増やしましょう。増えた足の分だけ」


「はあ。カルロスも大変ね。シモン、あなたはもとの仕事に戻りなさい」


「じゃあ、こうしましょう。十本足のクラーケンは見つけただけで報酬がもらえる。そうすれば、クラーケンを探す手間が省けます」


 エミリーさんから本が飛んでくる。


「それじゃ、あなたが行きなさい! 報酬があれば働かなくて済むわよ。もし、生きていれば、だけれど」

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