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第9話 亜種創造計画、予想外の結果

「新しいモンスターが欲しいと上から要望があった。エミリー何か案はあるか?」


「そうね……。なかなか難しいわね」


 エミリーさんもお手上げらしいが、僕には考えがある。


「こうしてはどうでしょうか。今までのモンスターの亜種を作るのは」


「亜種? 簡単に言えば派生系か……。よし、それでいこう。それなら――何でもない」


 カルロスさんは、続きを言おうとしていたようだ。たぶん「それなら、手を抜ける」みたいなことだろう。僕にもカルロスさんの考えが分かるようになってきたんだ、自信はある。


「そう簡単にいかないわよ。亜種というからには、既存種より多少強い必要があるわ。その微調整、結構時間かかるわよ?」


「そうか? 色を変えれば、あっという間に亜種の完成だ。これなら、シモンにもできるはずだ」


 あ、その発言はエミリーさんがキレるぞ。


「何か閃きそうなんだけど……」


 エミリーさんは別のことを考えているらしい。


「あのー、群れのボスだけ色を変えてはどうでしょうか。冒険者にとってもメリットがあるはすです」


「シモン、それだ! うちにとっても大きなメリットがある!」


 カルロスさんは興奮気味だ。


「いえ、それはダメよ。今までのイメージが崩れちゃうわ」


 イメージが崩れたら、冒険者も困惑するかもしれない。なかなかに難しいな、これは。


「でも、あのモンスターなら……」


「何か適任がいるのか?」


 カルロスさんの目は期待で光り輝いている。


「少し時間をちょうだい」


 エミリーさんはそう言うと部屋を後にした。





「これが、スライムの亜種よ」


 スライムたちは水色だけではなく、黄色、赤色などバリュエーションが多い。スライムなら見た目ですぐに判別できる。ドロッとしていれば、スライムだから。さすが、エミリーさんだ。


「なるほど、これならいけそうだな。さっそく上に報告だ」


「その必要はないわ。すでに話を通してあるから」


 さすが、エミリーさん。仕事が早い。


「実践投入は明日からよ。亜種だから少しだけ報酬を高めにしましょ」


「いいや、ダメだ。色違いなだけで報酬を増やしたらギルドが破産する」


 ジャスミンさんが乗り込んでくるに違いない。


「しょうがないわね。代わりに今月の給料を増やしてちょうだい」


 カルロスさんは「色を変えただけで手取りが増えるなら、俺もやろうかな」とボソッとつぶやいた。





「さて、実践投入から一週間。冒険者側の反応はどう? ジャスミン」とエミリーさん。


「あのー、反応はいいんですが……」


 ジャスミンさんは「これは言っていいのだろうか」と迷っているらしい。


「冒険者たち、スライム討伐をやめてしまって」


「討伐をやめた!? 嘘だろ……。反応はいいんだろ?」


 カルロスさんは状況が飲み込めないらしい。もちろん、僕にも分からない。


「彼ら、遊びだしたんです。スライムで」


「遊ぶ? 話が見えないぞ」


「カルロスさん、赤、緑、青を混ぜるとどうなるかしら?」


 少し考えて「白だな」とカルロスさん。


「それが問題なの。スライムは、ドロッとしていて混ぜられるわ。つまり――」


「冒険者が白色のスライムを作ろうとしていると?」


「シモンの言う通り。彼ら、白いスライムを作る遊びにはまちゃったみたい」


 エミリーさんが少ししてこう言った。「冒険者が亜種を増やすなら、上も喜ぶんじゃない?」と。

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