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第13話 ドラゴン討伐専門家、現る

「ちょっとした問題が発生した。ドラゴンをメインに討伐する冒険者だ」


「カルロスさん、別にいいんじゃないですか? 冒険者のスタイルですから」


 カルロスさんはため息をつくと「F級ばかり討伐するんだ」と頭を抱える。


 僕は、いつかの有名冒険者を思い出した。F級ドラゴンを討伐することで、名声を得ようとした彼が。


「しかも、そいつは『ドラゴン殺し』を自称している」


 もちろん、実際に殺すことはできない。でも、F級だけを倒して名乗るのは違う気がする。かなり、せこい。


「じゃあ、S級を投入しましょうよ」


 言った直後、エミリーさんが育成に苦労して負担がかかることに気づく。


「あのー、ドラゴンだから目立つのであって、ゴブリンならそうはならないのでは? つまり、ゴブリンの討伐の報酬を上げては?」


「シモン、それじゃあギルドが破産する」


 なかなかに難しい問題だ。


「じゃあ、期間を決めてドラゴンを配置しないことにしましょう。ドラゴンがいなければ、討伐はできません。そうすれば、『ドラゴン殺し』も懲りるでしょう」


「それでいこう。エミリーに相談してくる」





「ドラゴン撤退で合意が取れた。さて、明日からの動向が楽しみだ。特に『ドラゴン殺し』の」


 さすがに、彼の名声も地に落ちるだろう。


「ただ、エミリーは心配してたんだ。『何か嫌な予感がする』って」


「杞憂ですよ。問題ないように思います」



 数日後、「ドラゴン殺し」はダンジョンへ行くことはなくなった。これなら、ドラゴンを出しても問題ないはずだ。


「エミリー、ドラゴンを配置し直すぞ」


「言いにくいんだけど、そう簡単にはいかないの」


「なぜですか?」


 わけが分からない。配置だけなら一瞬で終わる。


「ドラゴンに問題が出てきたのよ。彼ら、実戦から離れてたから、なまってるのよ」


 まさか、そんな弊害があったとは。


「じゃあ、こうしよう。低層にドラゴンを配置する。そして、実践感覚を取り戻させるんだ」


「でも、新米冒険者には難易度が高くないですか?」


「大丈夫。簡単なミッションが増えるから」とエミリーさん。


「ドラゴンに負けた冒険者は、何かしらの落とし物をするわ。だから、こういうミッションを追加すればいいのよ。『冒険者の落とし物を拾え!』って。ギルドに要請しましょう。『レアアイテムも混ぜるように』ってね」

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