「ちょっとした問題が発生した。ドラゴンをメインに討伐する冒険者だ」
「カルロスさん、別にいいんじゃないですか? 冒険者のスタイルですから」
カルロスさんはため息をつくと「F級ばかり討伐するんだ」と頭を抱える。
僕は、いつかの有名冒険者を思い出した。F級ドラゴンを討伐することで、名声を得ようとした彼が。
「しかも、そいつは『ドラゴン殺し』を自称している」
もちろん、実際に殺すことはできない。でも、F級だけを倒して名乗るのは違う気がする。かなり、せこい。
「じゃあ、S級を投入しましょうよ」
言った直後、エミリーさんが育成に苦労して負担がかかることに気づく。
「あのー、ドラゴンだから目立つのであって、ゴブリンならそうはならないのでは? つまり、ゴブリンの討伐の報酬を上げては?」
「シモン、それじゃあギルドが破産する」
なかなかに難しい問題だ。
「じゃあ、期間を決めてドラゴンを配置しないことにしましょう。ドラゴンがいなければ、討伐はできません。そうすれば、『ドラゴン殺し』も懲りるでしょう」
「それでいこう。エミリーに相談してくる」
「ドラゴン撤退で合意が取れた。さて、明日からの動向が楽しみだ。特に『ドラゴン殺し』の」
さすがに、彼の名声も地に落ちるだろう。
「ただ、エミリーは心配してたんだ。『何か嫌な予感がする』って」
「杞憂ですよ。問題ないように思います」
数日後、「ドラゴン殺し」はダンジョンへ行くことはなくなった。これなら、ドラゴンを出しても問題ないはずだ。
「エミリー、ドラゴンを配置し直すぞ」
「言いにくいんだけど、そう簡単にはいかないの」
「なぜですか?」
わけが分からない。配置だけなら一瞬で終わる。
「ドラゴンに問題が出てきたのよ。彼ら、実戦から離れてたから、なまってるのよ」
まさか、そんな弊害があったとは。
「じゃあ、こうしよう。低層にドラゴンを配置する。そして、実践感覚を取り戻させるんだ」
「でも、新米冒険者には難易度が高くないですか?」
「大丈夫。簡単なミッションが増えるから」とエミリーさん。
「ドラゴンに負けた冒険者は、何かしらの落とし物をするわ。だから、こういうミッションを追加すればいいのよ。『冒険者の落とし物を拾え!』って。ギルドに要請しましょう。『レアアイテムも混ぜるように』ってね」