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【速報】ギルド通信

第16話 緊急通信

【緊急 ギルド通信】


 我々はいったい何と相対しているというのだろう。


 大地の咆哮と共に放たれた光は天を咲き、ファルムンドダンジョン攻略に向けレイドを組んでいた冒険者たちの野営地を破壊した。


 幸いにも死者は出なかったが、多くの負傷者を出すこととなり、また、その穴から何かが地上に飛び出してきたとの情報もあって、レイドは中止にせざるを得なかったそうだ。


 地面に開いた大穴は現在ダンジョンの修復機能によって完全に塞がってしまったが、現場に居合わせたものの報告によると暗黒領域まで続いているようにも見えたと聞いている。


 数名の冒険者が縦穴から侵入を試みたそうだが、いずれの冒険者も未だ帰還していない。深層でモンスターの餌食となったか、それとも帰還に手こずっているのか。

 できば後者であることを祈る他ない。


 冒険者諸君、生きて帰ってこその冒険者である。


 無謀と勇猛を履き違えてはならない。

 自らの限界を知り、不測の事態に備えるのだ。

 常に限界一歩手前で引き返すことを心がければ、不測の事態に出会したとき、その残りの一歩で切り抜けることも出来るだろう。


 臆病者になれと言っているわけではない。


 自らの力で出来ることとそうでないことを見極めて欲しいのだ。

 どうか、生きて帰って来て欲しい。

 そうすれば、今再び、君たちはダンジョンに挑むことが叶うのだから。



 ここで朗報を一つ届けておきたいと思う。


 光によって大穴が穿たれる数日前、彼の剣聖がファルムンドダンジョンに入っていく姿を何名かの冒険者が確認したそうだ。


 剣聖・フリアリーゼ、またの名をダンジョン壊し。


 彼女の手によって再起不能に陥ったダンジョンは数知れず、大主人殺しの異名を持つ剣を抜かぬ剣聖だ。


 兼ねてから行方が分からなくなっていたのだが、先日突如ファルムンドに現れ、ダンジョンに入っていったらしい。


 彼の剣聖の考えは常人の計り知るところではないが、一説によると放たれた光は剣聖と大主人との戦闘の余波ではないかと考えられている。


 レイドに参加していた冒険者の中にデーモン種に詳しい者がおり、放たれた光はデーモンがよく使用するデス・デストラクションによく似ていたというのだ。


 ただし、地下から放たれ、減衰していたのにも関わらずかつてみたものとは比べ物にならない威力であり、仮に剣聖がこの攻撃の餌食となっていた場合、人間である以上、無事では済まないだろうとのことであった。


 ここから先は私の希望的観測にはなるが、剣聖は無事であると思う。

 以前私は御前試合で彼女の戦い見たことがあるが、彼女もまた化け物である。


 大主人討伐を成し遂げたかどうかは定かではない。


 だが、あの破滅の光以降、ダンジョン内のモンスターたちの動きが鈍いとの報告も上がっている。


 もしかすると、手負いの剣聖を逃すまいとダンジョンの悪意が彼女を絡め取らんとしているのやも知れぬ。


 いや、不安を煽るようなことを書いてしまい申し訳ない。


 私ももうじきファルムンドへ着く。

 突然の事態に負傷者も少なくはないだろう。

 だが、ここにギルド本部長ではなく、元一人の冒険者として現役の諸君らにお願いしたい。


 私に力を貸してくれ。


 英雄を失うなどの悲劇は繰り返してはならぬ。

 剣聖が無事であるのならば、地上に連れ戻らねばならない。


 もし、この通信を読み、賛同の意を表して貰える者はファルムンドのギルドにて会おう。


 ギルドの予算だけではなく、私財を投げうち、かの呪いの地に共に立ち向かうことを約束する。


 ――サクラミア大陸ギルド本部長、アルムンド・べナスティア


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