お供のダイヤウルフは三匹、全速力でこちらに突進してきた。
その後ろをワーウルフさんが悠然と歩いて来た。
うん。
なんだかイケメン魔物だね。
シュッとしている感じ。
狼系は格好いい。
オーク系は豚さんなので鈍重な感じがするし、ゴブリンさん達は背が小さくて蛮族っぽい感じだ。
それに比べると狼男さんは圧倒的にイケメン感あるね。
「ヒ、ヒデオ~~!! 何してるのーっ!!」
勇者ケインさんがダイヤウルフに襲いかかられて悲鳴を上げた。
「大丈夫、ゴリ次郎が詰めているからね」
ゴリ次郎がダイヤウルフの尻尾を持ってつり上げ、握りつぶした。
空中でバッチャンと血がはじけ飛んだ。
狼男さんは眉をひそめ、険しい表情でこちらを見た。
ボキュン!
ゴリ太郎のパンチでダイヤウルフが天井まで飛び、首を折って落ちてきて倒れた。
「ガウガウ?」
残りのダイヤウルフは一匹、なんだか警戒してこちらに近づいてこないね。
匂いや気配でゴリ達の位置を掴んでいるかな?
ヒカリちゃんが矢を放つ。
ミキちゃんが呪歌【威力倍増】の歌を歌い始めた。
次の攻撃の威力が倍になるという歌だね。
ただ、聞こえている全員の威力が上がるので、敵の攻撃も上がるのが難なんだよな。
ヤヤちゃんが【
我々の体に光る膜のような物が現れた。
これは防護膜で装甲値を少し上げてくれる感じの奇跡だという。
「やああああっ!!」
ケインさんがダイヤウルフに斬り掛かるが、ひらりと避けられた。
そろそろ狼男さんが前衛と戦う間合いに入るね。
現在はゴリ太郎を前に出し、ゴリ次郎を足音を潜ませて狼男さんの背後から近づけている。
ダイヤウルフが俺とケインさんの間を抜けて、後衛を襲おうとジャンプして移動しようとした。
まあ、ゴリ太郎が待ち構えている訳ですけどね。
ゴリ太郎は空中でダイヤウルフをキャッチして、両手で握りつぶした。
ダイヤウルフは空中でひしゃげて血をまき散らして死骸となった。
よし、お付きの狼はいなくなったぞ。
あとは狼男さんだけだ。
GUAOOOOON!!
狼男さんは天を向いて咆吼を上げた。
うお、凄い迫力だな。
う、ケインさんが動かなくなった。
「ヒデオ、敵のスキル【咆吼】!」
「なんと!!」
いかん、ゴリ次郎は後ろから接近中、ゴリ太郎は少し遠い。
ケインさんが攻撃されてしまうぞ。
狼男さんは流れるように蹴りをケインさんにむけて放った。
しょうがない!
俺は盾を前に出すようにして狼男さんの蹴りの軌道に割り込んだ。
バッキャーン!!
ひゃあ、盾で受けたのに衝撃で手がジンジンするっ!
ケインさんは頭を振って動きだした。
「すまない、ヒデオ」
「いいって!」
お互い様だしね。
ケインさんは両手剣を振り上げて狼男さんに斬り掛かる。
狼男さんは鼻で笑って回避した。
おおー、さすがはフロアボス、強いねえ。
だが。
ゴリ次郎の間合いに入ったね。
狼男さんは空中につり上げられて、目を丸くして大暴れした。
うん、透明なゴリラってネタを知らないと、対処出来ないよね。
狼男さんも対処出来ずに、ボキボキと体の骨を折られてコンパクトになって死んだ。
あたりは急にシンとした。
これでフロアボスクリアかな?
「「「やったーっ!!」」」
「おおおお、やったー、フロアボスクリアだーっ!!」
クリアで良いみたいね。
『やっぱりヒデオはすげえ』
『透明なゴリラは足音立てないで移動するとどうにもならないな』
『あれでワーウルフ兄貴は感覚が鋭いはずなんだけど、やっぱり【気配察知】とか無いと駄目なのかな』
『ケインも危なかった』
魔物の死骸が粒子になって消え、紫色の魔力が漂って、俺達の胸に吸い込まれた。
どくんと体が膨れるような感覚があって、レベルアップしたのが解った。
魔石が落ちてきて、そして、目の前に金色の箱が落ちてきた。
『うおお、金箱ドロップだぜ!!』
『あ、半箱!! これはスキル来るか?』
『ヒデオが使えるスキルかなんかならいいんだけどな』
なんだか、豪華なドロップが出たっぽい。
「ええと、どうするのこれ? 等分」
「一応等分がルールだけど、なかなか分けるの大変な物とかでるのよね」
「とにかく開けてみましょう」
「戦士系装備なら、僕が頂くよ」
「えー、ケインさんレア武器あるから良いじゃないですか、ヒデオに上げましょうよ」
「え、だって、自分で出した金箱だよ、もったいないさ」
俺が宝箱に手を掛けようとしたら、ヤヤちゃんに手を取られて止められた。
「罠がありますから気軽に触らないで」
「あ、ごめんね」
しかし『
どうするんだろう。
と、思ってたらミキちゃんが懐から鍵を出して穴に差し込んだ。
あ、鍵があるのか。
カチリ。
ミキちゃんが鍵を回すと、音がして、そして蓋が開きはじめた。
『うおおおお、スキル箱だ!!』
『なんだろなんだろ、
『戦士系なら、ケインか、ヒデオ行きだな。どっちにしろ面白い』
ミキちゃんが宝石箱みたいなオーブ箱を開いた。
そして、がっくりと膝を付いた。
「スキル【さちここばやし】だわ……」
『『『『ネタスキルだーっ!!!』』』』
ネタスキルってなんだ?