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第17話 激闘、フロアボス

 お供のダイヤウルフは三匹、全速力でこちらに突進してきた。

 その後ろをワーウルフさんが悠然と歩いて来た。

 うん。

 なんだかイケメン魔物だね。

 シュッとしている感じ。

 狼系は格好いい。

 オーク系は豚さんなので鈍重な感じがするし、ゴブリンさん達は背が小さくて蛮族っぽい感じだ。

 それに比べると狼男さんは圧倒的にイケメン感あるね。


「ヒ、ヒデオ~~!! 何してるのーっ!!」


 勇者ケインさんがダイヤウルフに襲いかかられて悲鳴を上げた。


「大丈夫、ゴリ次郎が詰めているからね」


 ゴリ次郎がダイヤウルフの尻尾を持ってつり上げ、握りつぶした。

 空中でバッチャンと血がはじけ飛んだ。


 狼男さんは眉をひそめ、険しい表情でこちらを見た。


 ボキュン!


 ゴリ太郎のパンチでダイヤウルフが天井まで飛び、首を折って落ちてきて倒れた。


「ガウガウ?」


 残りのダイヤウルフは一匹、なんだか警戒してこちらに近づいてこないね。

 匂いや気配でゴリ達の位置を掴んでいるかな?


 ヒカリちゃんが矢を放つ。

 ミキちゃんが呪歌【威力倍増】の歌を歌い始めた。

 次の攻撃の威力が倍になるという歌だね。

 ただ、聞こえている全員の威力が上がるので、敵の攻撃も上がるのが難なんだよな。

 ヤヤちゃんが【頑健プロテクト】の聖句を詠唱する。

 我々の体に光る膜のような物が現れた。

 これは防護膜で装甲値を少し上げてくれる感じの奇跡だという。


「やああああっ!!」


 ケインさんがダイヤウルフに斬り掛かるが、ひらりと避けられた。

 そろそろ狼男さんが前衛と戦う間合いに入るね。


 現在はゴリ太郎を前に出し、ゴリ次郎を足音を潜ませて狼男さんの背後から近づけている。


 ダイヤウルフが俺とケインさんの間を抜けて、後衛を襲おうとジャンプして移動しようとした。

 まあ、ゴリ太郎が待ち構えている訳ですけどね。

 ゴリ太郎は空中でダイヤウルフをキャッチして、両手で握りつぶした。

 ダイヤウルフは空中でひしゃげて血をまき散らして死骸となった。

 よし、お付きの狼はいなくなったぞ。

 あとは狼男さんだけだ。


 GUAOOOOON!!


 狼男さんは天を向いて咆吼を上げた。

 うお、凄い迫力だな。

 う、ケインさんが動かなくなった。


「ヒデオ、敵のスキル【咆吼】!」

「なんと!!」


 いかん、ゴリ次郎は後ろから接近中、ゴリ太郎は少し遠い。

 ケインさんが攻撃されてしまうぞ。


 狼男さんは流れるように蹴りをケインさんにむけて放った。

 しょうがない!

 俺は盾を前に出すようにして狼男さんの蹴りの軌道に割り込んだ。


 バッキャーン!!


 ひゃあ、盾で受けたのに衝撃で手がジンジンするっ!

 ケインさんは頭を振って動きだした。


「すまない、ヒデオ」

「いいって!」


 お互い様だしね。

 ケインさんは両手剣を振り上げて狼男さんに斬り掛かる。

 狼男さんは鼻で笑って回避した。

 おおー、さすがはフロアボス、強いねえ。


 だが。


 ゴリ次郎の間合いに入ったね。

 狼男さんは空中につり上げられて、目を丸くして大暴れした。

 うん、透明なゴリラってネタを知らないと、対処出来ないよね。

 狼男さんも対処出来ずに、ボキボキと体の骨を折られてコンパクトになって死んだ。


 あたりは急にシンとした。

 これでフロアボスクリアかな?


「「「やったーっ!!」」」

「おおおお、やったー、フロアボスクリアだーっ!!」


 クリアで良いみたいね。


『やっぱりヒデオはすげえ』

『透明なゴリラは足音立てないで移動するとどうにもならないな』

『あれでワーウルフ兄貴は感覚が鋭いはずなんだけど、やっぱり【気配察知】とか無いと駄目なのかな』

『ケインも危なかった』


 魔物の死骸が粒子になって消え、紫色の魔力が漂って、俺達の胸に吸い込まれた。

 どくんと体が膨れるような感覚があって、レベルアップしたのが解った。


 魔石が落ちてきて、そして、目の前に金色の箱が落ちてきた。


『うおお、金箱ドロップだぜ!!』

『あ、半箱!! これはスキル来るか?』

『ヒデオが使えるスキルかなんかならいいんだけどな』


 なんだか、豪華なドロップが出たっぽい。


「ええと、どうするのこれ? 等分」

「一応等分がルールだけど、なかなか分けるの大変な物とかでるのよね」

「とにかく開けてみましょう」

「戦士系装備なら、僕が頂くよ」

「えー、ケインさんレア武器あるから良いじゃないですか、ヒデオに上げましょうよ」

「え、だって、自分で出した金箱だよ、もったいないさ」


 俺が宝箱に手を掛けようとしたら、ヤヤちゃんに手を取られて止められた。


「罠がありますから気軽に触らないで」

「あ、ごめんね」


 しかし『盗賊シーフ』さんいないから、鍵開けが出来ないよ。

 どうするんだろう。

 と、思ってたらミキちゃんが懐から鍵を出して穴に差し込んだ。

 あ、鍵があるのか。


 カチリ。


 ミキちゃんが鍵を回すと、音がして、そして蓋が開きはじめた。


『うおおおお、スキル箱だ!!』

『なんだろなんだろ、『吟遊詩人』バード系ならミキちゃん行き、『射手アーチャー』向きスキルならヒカリちゃん行き、『僧侶プリースト』スキルならヤヤちゃん行きだな』

『戦士系なら、ケインか、ヒデオ行きだな。どっちにしろ面白い』


 ミキちゃんが宝石箱みたいなオーブ箱を開いた。

 そして、がっくりと膝を付いた。


「スキル【さちここばやし】だわ……」

『『『『ネタスキルだーっ!!!』』』』


 ネタスキルってなんだ?


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