本作は、ムズキュンする青春ラブストーリーでもあり、切なくて泣ける恋愛ファンタジーでもあり、1作でいくつもの要素を楽しめます。
主人公太地と美少女サワメの一夏の日常は、何気ないけどリアルです。一夏だけの思い出だからこそ、振り変えれば尚更キラキラ輝いて見えます。それは、大人にとって失った青春の一コマのように思え、ノスタルジックな感傷も起こさせます。
太地が突然恋に落ちるのではなく、徐々に胸がキュンとする展開になっていくのも自然に感じられます。決してスクールカースト上位とは思えない太地が突然美少女と出会い、夏休み中、ずっと彼女と過ごす間に彼女に恋をする――読者(特に男性諸君?)はそんな夢もこの作品で味わえます。
冒頭の古典の授業の描写もリアルでユーモア、読者をクスッと笑わせます。太地の古典知識が危ういところと神様が結びつくアイディアも秀逸です。