路地裏に男が
足元は汚く仕事着とハイヒールが汚れるのを嫌がりながらも、男の誘いに乗っている。
奥まった場所は少し開けていてそこで男は女に
スーツの胸元から財布を取り出してピン札を指で数える。
女は札を数えてから頷くとそこに座った。
出勤前の同伴、本来ならば食事をしてから店に行くはずなのに、なんでこんな事になっているのか。
女は
幸せそうだからまあいいか。
そう思って男の手を握る。
こんなことするならモーテルに行ってくれればいいのに、女の頭にそれがよぎったのは男が彼女の下着を
行為は嫌いじゃない、けどこんな場所でするようなこと?
荒い息の先で男の動きが早くなる。
壁に手をついているせいか、鼻にすえた臭いがして顔を
ふと路地の奥、人が通り過ぎていくのが見えた。
そのうちの大きな黒い影が立ち止まりこちらを見ている。
『え?』
女が声を上げても男は気付かない、行為に夢中で息を荒くしている。
女の視線の先に、黒い影の頭にあたる部分に二つの光がパチパチと
人?
人にしては・・・大きい?
ぐっと男に腕を引かれて女は片手で壁に捕まりながら、黒い影から目を離せなかった。
『ねえ・・・。』
女は行為に夢中になっている男を呼ぶも、彼には聞こえていないらしい。
体を揺らし続けてまだ果てることがない。
『ねえ、ちょっと!あれ!』
声を荒げて男に
彼は不機嫌そうに女の顔を見た。
『何?まだだよ。もう少し楽しませて。』
『違うって・・・ねえ、あれ、見て。』
女は路地の向こうに
男は仕方ないと視線を向けると息を飲んだ。
体が硬直したのか女の中で痛みが走った。
女は眉をひそめて男を見る。
男の口からは泡が出て白目を向いている。
『え?』
繋がったままの体をよじるも、男の手が腕を
はっと顔を上げて先ほどの黒い影が見えたほうを見た。
女の目に世にも恐ろしい物が見えた。
『はい、今から現場に向かいます。』
ポリスのヨジミは、カツラギとの電話を切ると走りだした。
丁度、食事休憩で繁華街に来ていた。
ラーメンの汁をすすり終えた頃に、路地裏で変死体が見つかったと連絡が入ったのだ。
カツラギもこちらに向かっているが、署にいるため少し時間がかかる。
ヨジミはポリスカーを見つけると駆け寄った。
『あ、一課のヨジミです。状況説明をお願いします。』
ポリスカーの傍にいた制服の二人はヨジミに大きく頷く。
『はい、ワタクシ安全課のヒメキです。こちらはタカダ。』
説明を受けながら路地へと足を進めていく。
現場は路地裏、男女の変死体で結合したまま、それぞれが潰されていた。
検死はまだ到着していないため確認されていないが、見たままがそれである。
ヨジミは遺体の前に立つと
『酷いな・・・。』
『はい、なんでこんなことに・・・。しかもよく分かるように結合部分は潰されていないんですよ。』
タカダは真っ青な顔をすると首を振った。
『こんな死に方したくないなあ。』
ヨジミはうんと
『もしかしたら最近起きている連続殺人事件と関係があるかも知れない。そのうま連絡をお願いしていいですか?』
ヒメキは『はい!』と返事をするとポリスカーに戻った。
タカダはぶるっと体を震わせて両手を巻きつける。
『大丈夫?タカダさん、慣れてないでしょ?車に戻っていいよ。もう少ししたら、うちのカツラギが来るので。』
『はい、助かります~。実はちょっと気持ち悪くて。』
ヨジミは小さく頷くと、走っていくタカダの背中を見送った。
路地裏で変死体と二人きり、いや三人。
ヨジミは少し開けた場所を調べ始める。
ふと視線を感じて真上を見ると黒い影がスッと横切った。
『なんだ?』
ヨジミは黒い影が動いた方へ進む。
丁度路地が続いており、その先にも開けた場所があるようだ。
長く細い道を抜けて少し明るい場所に出ると天井を見上げる。
ビルが
ビルの上は暗い。
その先に二つの光りが見えて、それが瞬きをするように消え、また光ると黒い影がヨジミのほうへと降りてきた。
『何だ・・・これ・・・。』
ヨジミはホルスターからピストルを取る。
両手で
六発入り、一発は空砲。
ヨジミは息を荒くして歯を食いしばると引き金を引いた。
銃声が響いて、ポリスカーにいた二人が路地のほうに振り返る。
丁度カツラギが向こうからやってくるのが見えて、お互いに目を見合わせた。
『銃声?え?』
カツラギはハッとしてタカダの肩を
『一課のカツラギだ。ヨジミは
『え?はい。現場にいらっしゃいます。この奥の・・・。』
聞き終える前にカツラギは路地へ走り出した。
異様な変死体を確認してその周りを見回す。
ヨジミの姿はない。
チラっと何か動いた気がして、開けた場所から続く路地に進んだ。
鼻につく
カツラギはゆっくりと明るい場所へと出た。
赤く染まっている。
明るく四角い袋小路には中央にピストルが落ちており、壁に肉片がびしゃりとついていた。
カツラギはピストルを見下ろした。
『・・・ヨジミ?』