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第8話 The Future and Glass

閉鎖された小学校についての経過報告。

対策本部にやってきたポリスが、後ろの軍服に嫌な顔をしながら紙を読み上げる。

『事件の起きた小学校は現在封鎖されています。学校側が清掃が済み次第に開校したいと希望していますが、問題が解決していないことから生徒達は自宅待機、リモート学習。事件概要については対策本部のほうが詳しいのではぶきます。被害者はレスキュー隊員2名、軍人を除く全員が死亡、学校用務員の二人については。一人は病院へ搬送されましたが死亡、もう一人は細胞の一部が見つかり死亡が確認されました。犯人についてはレスキューと同行していた生き残りの軍人から話を聞いています。』

腕組をしてチャーリーが首をかしげた。

『一ついいだろうか?』

チャーリーの軍服を見て、ポリスは眉根を寄せると頷いた。

『どうぞ。』

『我々は今回の対策本部を立ち上げた際に、関わりになるであろう全ての者のためにグラスを準備していたが・・・。』

ポリスは自分のグラスを指で触ると鼻で笑った。

『ああ・・・あれねえ。そこのタカハシさんのグラスでしょう?この国ではねえ、もう随分とその方が作ったものよりも軽量で良いものが出回っている。私のつけているものがそうだ。必要ない。』

タカハシは椅子に座ると息を吐いた。

ポリスは続ける。

『ええと、なんでしたっけ?ハーモニーなんとか?ポリスにも科学者はいるんですよ。今回の事件もオカルトみたいなもんで少々困っている。あんたら軍が、しかも他国の軍が干渉するほうがまずいと思わんのかね?』

チャーリーは声に出して、溜息を吐く。

『今すぐ取り調べしている軍人を返せ。今すぐだ。やはりポリスには任せられない。』

ポリスはチャーリーの言葉にカチンと来たらしくポケットに手を突っ込んだ。

『他国を侵害している分際で。あの軍人ならもう解放されてるだろうよ。取調べの日本語すら危うかったらしいからな。ケッ。これで失礼する。』

軍服の開いたドアからポリスが去っていく。

いまいま々しげに視線を投げると舌打ちをした。

椅子に座っていたタカハシは両手で頭を抱える。

『この国は何も変わらないのか・・・。』

それを見てチャーリーは首を振ると本部から出て行った。



その頃、ポリスの署内に戻っていたカツラギは、上司から新しいバディを紹介された。

背の高い男で名はミライという。

温厚そうな顔つきだ。

『今日からよろしくお願いします。』

『ああ。なあ、お前・・・ミライっていったか? 』

『はい。』

ミライは背筋をピッとのばすと顎を引いた。

『まだ若いよな?いくつだ?』

『若いといっても二十八です。やっと捜査できるってワクワクしてます。』

『・・・そうか。うん。』

『なんですか?』

『嫌・・・俺はお前が生きてさえくれればそれでいい。行こう。』

『はい?・・・あ、はい!』

署を出て車に乗り込むと対策本部のある場所へと向かった。

『それでミライ。お前対策本部のデータは確認したのか?』

ハンドルを握るカツラギは横目に助手席を見る。

『はい、確認しています。署内でもオカルトだとかなんだか笑い話にされてました。』

『・・・お前もそう思うか?』

ミライは首を横に振る。

『いいえ。僕はわかるので。』

『はあ?』

カツラギが素っ頓狂な声を上げるとミライは笑った。

『僕は200です。』

『ちょっと・・・待て。200って・・・。』

『はい、僕はコントロールができるので、全ての検査において150をキープしています。今回の件は資料を読んだ時から僕の出番だろうと。ちなみにカツラギさんは175・・・。』

カツラギはシートにもたれこむ。

『なるほどな。でも俺にそんなこと話していいのか?』

ミライはカツラギを見るとニッと笑った。

『ええ。だってバディですよ。・・・それと。』




黒塗りの車がポリス首都本部前に到着すると、軍服を着た男達が降り立った。

颯爽さっそうと首都本部入り口から入っていくのを、ポリスの職員たちは黙って見つめている。

彼らの顔には憎しみが宿っている。

署長室のドアを開けると、部屋の中央に鎮座ちんざしている男を取り囲んだ。

署長のタカラダは、恰幅の良い体を椅子の背もたれにゆだねると指を組む。

『何だね?軍が乗り込んでくるとは。』

タカラダの前にいた青い目の男チャーリーは、タカラダの前にある机に書類をたたきつける。

『何故、命令を無視したんです?』

『・・・彼らは自分たちでそのように対応したんだろう。』

『理由を説明したのか?』

『勿論、我々は馬鹿ではない。あなた方の持ち込んだものが信用に値しないということだ。』

『ほう。』

チャーリーはタカラダの顔を覗きこむ。

『そのせいで何人死ぬことになるのか。それでいいのか?』

『まさか・・・我々のグラスも同じものだと聞いている。製造元にも確認を取った。国が、国家指定しているグラスだ。外から来た侵略者共の話など簡単に聞けるか。』

『侵略者か・・・。』

チャーリーの言葉にタカラダを囲んでいた軍服は失笑した。

『なんだ?』

タカラダは体を起こすと机を叩く。

『なんなんだ!』

チャーリーは胸のバッジに触れると冷たい目で言った。

『この国に何故、我々がいるのか。そして、本当は必要である同胞の軍が存在しないのか。ご存知ないでしょう?この国の罪を。』

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