「クソッこれじゃ挟みうちだっ!!!」
こっちは丸腰だどうするか。
さっき奪った剣は、ミリカを連れて逃げる時にだ。
重くて邪魔だから何処かに捨ててしまったしな~~。
ミリカは元から何も武器になる物を何も持っていない。
追い詰められたか。
「ジョージ、これ完全に・・・」
「ああっ囲まれたな・・・」
前方には、白い羽根付の赤いカウボーイハットを被り。
赤いマント付のコートを着てレイピアを構えた女剣士。
青灰色のダンゴムシのような飾りの付いた鎧。
同じくダンゴムシの飾りが付いた、ショートソード。
ダンゴムシの形をした、ラウンドシールドを装備した騎士。
黄緑のフードを被り、マスクで口元を隠し。
服にギリスーツのような葉っぱをつけ。
腰に、二本のナイフを下げた、鋭い眼光を向ける短弓を構えた弓兵。
派手な飾りが付いた、重そうな漆黒の鎧と漆黒のグレートヘルムを被り。
背にウォーハンマーを背負い、ハルバートを此方に向ける大柄な重騎士。
「なんだ、こいつらは・・・」
「アンデッドよ、放って置けないわ早く片付けなきゃね」
目の前に現れたジョージとミリカを見た四人の内、
重騎士と女剣士は、二人を見てそう言う。
そして、後方にはさっきの三人。
「おーーい、あんた等、そいつ等が逃げないように頼むぜ」
「我々に対して、ちょっかいを出したからな、そこのアンデッド二匹は?」
魔法使いと僧侶は、前方から現れた四人に対し。
ジョージとミリカ達、アンデッドを逃がさない様に頼んだ。
「ははっ!あんた等こそ逃がすなよっ」
その言葉を聞いた騎士は、笑いながら軽口を言って素早く剣と楯を構える。
ジョージは詰んだな、この数じゃあ流石に敵わないなと思ったのだが、その時。
『ガラッガラガラッドォーン』
急に洞窟内の右の壁が崩れる。
そして壁に穴が空き、崩れた岩やレンガの土埃が暗い洞窟内の中を舞う。
「ゴホッゴホッ!! 何があった?」
弓兵は突然の出来事に戸惑いながらそう言う。
そして、壁が崩れて出来た穴の側に居た剣士は。
「何かくるっ大男? うっうわあぁぁぁあああぁぁ」
「グオオオォォォーーーーーー!!!!」
剣士は叫び、穴から現れた大柄なハイゾンビに頭から食われた。
更に、ハイゾンビの後ろの穴からは大勢のゾンビ。
狼ゾンビ。
グールの群れが雪崩れ込んでくる。
「ジョージ・・・助かったのよね・・・」
援軍として偶然現れたアンデッドの群れを見たミリカは、ジョージに呟く。
「ああ形成逆転だっ! だが、まだだ、あいつ等がいるからな? さっきのお返しだ、追っての三に・・・いや二人になっ!」
「そうよね? ジョージ、倍返しにして殺ろうよっ!」
俺とミリカは混戦の中を駆け出す。
居た、俺は魔法使いに目を向ける。
魔法使いは、ゾンビに向かって火球を放っていた。
「くっくるなぁっ! 死ねぇっ!?」
『ボッボッ』
次々魔法を放つ魔法使い。
その後ろから、ジョージは近づき、羽交い締めにする。
「ごがっ!? がっ!?」
もがく魔法使いに対して、ジョージは情け容赦はしない。
さっきのお返しだと言わんばかりに、彼は更に力を入れて首を締める。
そして。
『ガブッ』
「んぐんぅぅー!??!?!!」
俺は首筋に噛み付いた。
そして、周囲のゾンビ達も魔法使いに一斉に殺到した。
魔法使いは貪られ、苦しそうに呻きながら事切れる。
一方、ミリカは。
「おじさぁん、どこに行くのおぉ?」
そそくさと逃げ出そうとする僧侶の後ろ姿を見つけたミリカ。
彼女は、背後から可愛らしい言葉を掛けるが。
「ひぃっ! 寄るなぁ不浄な魔物めえぇぇ」
「はあっ? 女の子をいたぶっておいて不浄な魔物ですってえっ!? もう怒ったわぁーーこれでも喰らいなさいっ!!」
そう言いながら、ぶちギレたミリカは僧侶に向かって一気に飛び掛かった。
「くそおーー」
勢い良く飛び掛かって来たミリカに対して、杖を向ける僧侶。
だが、その横から。
「グルゥゥゥッ!」
「うわっ! ああぁぁぁっーー!?」
狼ゾンビが、吠えながら飛び掛り、僧侶の右腕に噛み付いて地面に押し倒す。
「ナイスッ! ワンちゃん、そして、じゃあねぇ~~おじさ~ん」
「やめっやめろっ! やめろおぉぉーーーー!!」
ガブッと僧侶の腹にかじりつき、血を吸いまくり、僧侶を苦しめて絶命させた。
「他はどうなっているんだ?」
ジョージが辺りを見回すと。
ガブッ、ブシュッと肉を噛む音や血が吹き出る音が聞こえる。
「やっ! やめろーー助けてくれーー!?」
聞こえるのは音だけではなく、悲鳴が暗い洞窟内に木霊していた。
その悲鳴が聞こえる方に、視線を向けると騎士は。
「ぐあーーいてぇーー」
狼ゾンビとグールに倒されて、そのまま御飯になっていた。
弓兵は、遠くから弓を射ちながら逃げて行った。
重騎士はゾンビと化して、女剣士の火炎魔法の攻撃で倒された。
その女剣士も逃げ遅れて、数体のゾンビとグールと狼ゾンビに囲まれてしまい。
そのアンデッドの群れが一斉に襲い掛かり。
彼女は火炎魔法でゾンビ達を焼き払い、逃げようとするが。
「アガォオオォォ」
一番体格の良いハイゾンビが素早く女剣士を掴み。
高く掲げると壁に向かって勢い良く投げ飛ばす。
「きゃあああっ!?」
そして、女剣士はジョージの方に飛んで来て、そのまま壁に叩き付けられる。
「ううっ・・・?」
呻き苦しむ女剣士は、そのまま動かなくなる。
絶命したかなと思ったミリカは、女剣士の腕に一口噛みつき血を啜る。
「うーーん、おいひぃーー」
ジョージとミリカ達や他のアンデッド達。
彼等は、そのまま飽きるまで人間の死体を食べた。
『新スキル、獲得魔法を覚えました』
ジョージの頭の中に何かが聞こえると同時。
阿鼻叫喚の地獄はアンデッド側の勝利で終わった。