俺たちはアンデッドだ。
人間だった頃の常識は少しは残っているが。
人間にたいする情けなど無いに等しい。
だから思いっきり殺させて貰うぞ。
と、思っている間女格闘家と商人は俺達に近づいてくる。
格闘家は機敏に動けそうだ。
商人は腰から、袋や瓶を下げ、背中にはバックパックを背負っている。
あんなに重そうなバックパックをしょって。
見るからに、あれじゃあ戦闘になったらまともに動けないだろうに。
「まるで、自分が動けませんって言っているようなもんだぞ」
「ジョージ、あいつ見るからに鈍くさそうね」
背中に背負う、バックパックを揺らしながら歩く商人を見た、ジョージとミリカ達。
二人は、鈍くさそうだと思う。
「ああミリカ、確かにな・・・まっ! あいつはミリカが、俺は女格闘家を狙う、じゃあ出てく準備しとけ」
「はぁーーぃ」
ジョージとミリカ達は待つ。
敵が近付いて来るのをひたすら待つ。
それでもまだ敵は来ない。
「いいかもう少し・・・」
「わかってるわ」
後、もう少し、もう少しで二人は来る。
小さな声を出してジョージとミリカは待つ。
「もう少し近づいたら・・・」
「もう少しね」
まだだ、まだだとジョージとミリカは思いながら、早く来いと二人の敵に思う。
「後ちょっとだ・・・」
「まだなの」
後少しだとジョージが言うと。
待ちきれないとばかりにミリカは、まだかと彼に問い掛ける。
「ミリカ、今だっ! ダークボール」
「ちょっ! 今っ? フレイムボール」
二人は一斉に魔法の玉を放つ。
ジョージの魔法は女格闘家に簡単に交わされる。
一方、ミリカの攻撃は、フレイムボールが。
商人に当たりはしたのだが、直前に奴が。
「ひぃぃ」
叫びだして、頭を下げたので背中のバックパックに当たって、燃えてしまい。
「ああぁぁ~~大事な物資がっ!?」
商人がそれを背中から下ろし、バックパックに付いた火を慌てて払い消す。
「ふぅ危なかった」
と、商人は言う。
その間に女格闘家は、飛びはねながら此方に近づいて来る。
なので、俺は再びダークボールを放つ。
「ダークボール」
放つ放つ放つ。
だが、紙一重でダークボールは交わされてしまう。
その間も、どんどん飛びはねながら間合いを積めて来る。
ヤバい俺の本能が感じた。
そして、女格闘家は大きく跳躍する。
その間も、魔法を放つが当たらない。
そして、一気に距離を積め俺の目の前にくると、強烈な飛び蹴りを叩き込んできた。
「ぐっ!」
更に猛烈な勢いで、女格闘家は何度も強烈な蹴りを放つ。
「ジョージッ! フレイムボール」
ミリカが魔法を放つだが当たらない。
女格闘家は、簡単にそれを避け後ろに飛び下がったからだ。
そうこうしている間に、商人は袋から瓶を取りだして、こっちに投げてきた。
「これでもくらえぇっ!?」
商人の投げたビンは回転しながら孤を描きながら宙を舞う。
女格闘家もそれにあわせて跳躍し、空中を舞い女格闘家がビンを蹴って割った。
瞬間バリンと破裂音が地下道に木霊する。
中からは何かの液体が周囲に飛び散る。
それは、一見ただの水に見えるが。
俺とミリカは避けきれず、液体が体に掛かってしまう。
液体は体に掛かると。
途端に、シュウゥゥーーと不快な音を立てて嫌な匂いを発する。
「酸かっ!?」
いやただの水だ。
だが体が痛む。
幸い、俺は余り謎の液体は掛からなかったが。
「なにっ! これぇーーと言うか痛いっ! 痛いーー!?」
ミリカは、余りの痛みに耐えきれず、苦痛で歪めた顔を左手で覆う。
それでも、彼女の痛みは止まなかった。
「いったーーい、つぅーー!!」
どうやら、俺よりもミリカの方が、かなり大量に水を顔に浴びてしまったようだ。
「大丈夫か、ミリカ」
ミリカの顔が溶け、赤く爛れている。
まるで、お岩さんのようだ。
お岩さんって、いや今はそれどころじゃない。
「よくも、ミリカを」
俺は女格闘家の方へ勢いよく迫る。
すると、女格闘家は冷ややかな視線を送り。
「馬鹿ね、突っ込んでくるなんて」
そう言うと、俺の頭を狙って両手の鉄の爪で斬りかかって来る。
だが俺は笑う、待っていたぞ、この時を。
両爪が俺の頭に届く直前に、盾で両手の爪を弾き。
そのまま、女格闘家の腕を掴み。
爪を地面に突き刺し女格闘家は動けなくなる。
そして、四つん這いになって、動けなくなって焦っている奴の顎に膝蹴りを入れる。
「ぐはぁっ!?」
そして、追撃で腹にも一発、力強い蹴りを入れる。
その攻撃に、女格闘家は苦しそうに呻く。
「ぐっ? ううぅぅっ!」
「さっきのお返しだ喰らえっ! ダークボール」
まだ攻撃を受けて回復していない女格闘家。
その正面から、ジョージは至近距離から魔法を撃ち込んだ。