ダークボールを放たれた女格闘家は、体の腹の真ん中を撃ち抜かれる。
その当の女格闘家はと言うと。
「うっ!」
一言呻くと、顔は精気を、瞳は光りを失い、そのままどっと俯せに倒れて絶命する。
彼女の背中を見ると、見事に抉れた穴が空いていた。
「うわぁぁぁぁ」
その様子を見ていた商人が、恐怖で悲鳴を上げ、二人から逃げ出そうとするが。
「に・が・さ・な・い・わよぉ~~くも麗しい女の子の顔をキズモノにしてくれたわねぇ? この変態ぃ~~丸焼きにしてやるっ!!」
「ひぃっ! お助けを~~」
憤るミリカの前で、命だけは何とか助けてくれと商人は土下座しながら懇願する。
「だぁ~~めぇ」
ミリカは、最初だけ鬼母神の如く激怒していたが。
最後のだ~~めだけは眩しい笑顔で答えた。
顔の肉が溶け。
血が垂れ下がり。
脳がむき出しになり。
脳味噌のシワまで見える。
あの顔で言われるとさぞや怖いだろう。
そして、当の商人は、ミリカに右手の人差し指を向けられる。
「じゃあねぇっ! ばいばあーーい・・・フレイム」
「嫌だ、お助けをっ!」
最後の別れを告げるミリカに、直も商人は助けてくれと叫んだが。
当然それは。
「ボール」
「お助けっ! ーーーぎゃあああぁぁーーーーーー!?」
聞き入れられる事は叶わず、商人は顔に一発、フレイムボールを射ちまれた。
「死ねえっ! フレイムボール、フレイムボールッ!!」
更に、その後も立て続けにミリカは、紅蓮の火焔に包まれる商人に射ち続けた。
「ぁっ? ぁぁ」
商人は身体に何度も火球をくらい。
やがて、その身は全て灰になって崩れた。
その後、俺は俯せに倒れている女格闘家の両腕を引き抜き。
その右腕を食べる。
反対側の左腕は切り落として、ミリカに譲る。
「ほらっ! 食っとけ?」
「良いの、もらっても?」
ジョージが渡した右腕を受け取ったミリカは、良いのかと言って驚いた顔をする。
「良いも何も? お前あの商人を灰になるまで燃やしちゃったんだから、しゃあないだろ」
「ありがと~~ジョージ、じゃ遠慮いっただきまーーすっ!」
ジョージは、ミリカに仕方がないと告げる。
黒焦げになって、カスカスになった商人の死体を指差しながら。
「ガブリッ! チューーッ! ぷはぁっ! 美味しいっ♥」
ミリカは屈託のない笑顔で女格闘家の血を啜る。
そして、ミリカの顔のキズは血を吸う程元の形に回復していった。
「なあ、ミリカなんかさ、疲れないか?」
「何、ジョージ?」
突然、疲れたと言い出した、ジョージにミリカは何いきなりと思う。
だから、もう一度聞き返した。
「何が?」
「いやさぁ、ここは時間が分からないだろ? 地下道だから」
ミリカが聞き返すと、ジョージは疲れを感じる理由を話す。
それは時間の事だ。
「そうね、時計もないし太陽や月もないしねぇ」
「そうっ! だから今が朝方か夕方かわからないが眠くないか?」
確かにそうだと、ミリカも目を瞑って考え。
ジョージは更に時間の事を話す。
「うーーん、言われてみれば、そうね?」
「もう何時間、いや何日も不眠不休で戦っていたしな、アンデッドだから体が疲れるもんなのかは、わからないけど精神的にはこうずっと戦ってたら疲れるだろ」
納得した様子のミリカに、ジョージは肉体ではなく、精神が疲れを感じると言った。
「言いたいことは分かるけど、どこで寝るの、寝ている間に敵に襲われたらどうするの?」
ミリカは、この辺りで眠ることの安全性を心配する。
「それは・・・その? あっあれだ、この地下道には瓦礫が処所あるだろう、あのガレキのしたで寝るんだよ、ミノムシ見たいにな」
「ミノムシってま~あ現状それが一番ましな睡眠方法ね」
ジョージは脇に存在する瓦礫を指差し。
あそこで眠ろうとミリカに伝えると、彼女もそれなら安全だと納得する。
「一緒にガレキに隠れ、片方は見張り、片方は寝るこれでどうかな?」
「良いわね、でも寝ている間に変な事してきたらその頭・・・どうなるかわかっているのよね?」
ジョージの提案である交代制の見張りに、ミリカは右手の人差し指を天井に指差し。
「ぼっ!」
「あっ! もっ勿論さ、あの商人見たいになりたくないからな」
ミリカが、一言呟きながら火炎魔法を放つ真似をすると。
ジョージも、慌てて変な事はしないと否定する。
「ふぅ~~ん、本当かなぁ? なぁんかやらしい事考えてんじゃないの?」
「んな分けないだろっ! 疲れたから寝たいんだよ、もう勘弁してくれよ」
ジト目で見てくるミリカに、ジョージはそう言う目的は無いと必死で否定する。
「あははっ! じょーだんよ、じょーだんっ! ・・・それにぃ~~私達夫婦パートナー何だからそう言うことも・・・」
「んん? なんか言ったか?」
ミリカは、笑いながら小さな声で言ったが。
ジョージは、その言葉を聞き逃してしまった。
「何でもないっ! 何でもないってばっ!!」
「いや、今なんか言ったろっ」
顔を真っ赤にして騒ぐミリカを、直も問い詰めるジョージ。
そのしつこさにミリカは怒って。
「しつこいっ!」
「おい止めろっ! そのレイピアを俺の体に刺すのはよせっ! ちょっと止めて・・・あっあれをっ!?」
グサッ・・・グサグサグサグサ。
と、ミリカは鞘から抜き取ったレイピアを何度もジョージの体に突きだしてきた。
「その手には乗らないわよ」
「だからあのパックを・・・」
騙されないと、ミリカは更にレイピアを突きだす速度を上げるが。
ジョージは、商人のバックパックを指差して。
「パック?」
「戦利品さ、ミリカ、パックの中身が気になるだろ? 使える物が入っているかもしれないぞ」
ジョージは、人差し指を商人のパックへ指差す。
それを、怪訝な顔をしながらミリカも見つめた。