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第44話 また敵かあ・・・死体の振りしなきゃな・・・


 人間達がたくさん来た。

 全員合わせて三十人もの人間が歩いて行く。



「あーー? 誰かいるかあっ!」


「いるわけないだろ」


 人間達がゆっくり歩いていく。


 ジョージ達は扉の隅で床に伏せて隠れる。

 万一見つかっても死体の振りをしていれば敵も興味を持たないだろう。

 そう思い、じっと動かずに人間達が通り過ぎるのを待つ。



『タッタッタッタッタッ』


(・・・前も人間達から隠れていたな・・・)


 人間達の足音が地面を蹴る音。

 それが、ジョージ達の三メートル先から聞こえて来る。

 そして人間達の隊列が中頃まで過ぎると、人間達が此方の存在に気づいた。



「おいっアンデッドの待ち伏せだ」


「よせっ下手に刺激するな」


「ランサーが行くから手を出すな」


 人間達がジョージ達に迫り、彼等の体を槍で突っつく。



「こいつは死んでるな」


「おいっ本当かっ念のため頭を潰しておこうか」


「じゃあ俺が・・・」


 人間達は五人で、ジョージの頭を槍で突き刺そうとする。

 そこへ、ミリカが・・・。


「う・・・ん! ジョージッ・・・はっ! ・・・ああんっ! 何て事なのおぉっ!?」


 立ち上がったミリカは、芝井を始める。



「あーーん、ジョージーー!! うわあああんっ! ぐすんっぐすっ!?」


「おい、お前、何があったんだ」


「訳を話してくれ」


 泣きわめくミリカに、二人の人間達が声を掛けた。



「貴方達は?」


 ミリカは二人の前で、芝居を続ける。



「今来たばかりの大所帯パーティーチームだよ」


「さあーー何があったか話してくれるな」


 人間達はミリカを気遣う。



「私達四人は、この奥に進んだけど、敵が強くて負けて仕舞い、ぐすん・・・帰ろうとしている所を・・・ぐすん・・・ゾンビやスケルトンに・・・ぐすっ! ・・・襲撃されて」


 ミリカは直も嘘の芝井を続ける。



「それで、二人がアレリオとシャリル達がアンデッドに・・・ぐすんっ! ・・・なって私とジョージを追い掛けてきてそのまま戦闘になり」


 ミリカは口から、でまかせを吐きまくる。



「ジョージは私の手を取り逃げ出したんだけど、直ぐに追い付かれて、スケルトンとなってしまったアレリオは私と剣を打ち合って」


 詐欺師の如く嘘を言いまくるミリカ。



「私の剣が弾かれた時に、シャリルが私に襲いかかり、ジョージが私を庇ってシャリルに噛まれて、アレリオはまた私に掴みかかり私は投げ飛ばされて、最後にジョージを見た時は二人と戦ってやられてしまい・・・・・・」


 一人芝井を続けたミリカ。

 それを怪しむ僧侶。



「あの・・・お失礼しますが、少し私によーーく貴方の姿を見させてくれますか? アンデッドは死体だけではなく、人間にも化けますからなあ」


 そう言って、僧侶はミリカに近づいてくる。



「えっそっそれはちょっと・・・」


 ミリカは焦る、嘘がばれた子供の様に。



「駄目なのですか? では貴女はアンデッド、それもヴァンパイアとか、今の話も出来すぎていますからなあ」


 やはり、僧侶は怪しいとミリカを睨む。



「いやっ! だか~~らぁ、私は人間だって」


 ミリカの顔はかなり焦った表情になる。



「うごおっぉぉぉ!」


「えっえぇぇぇっ!」


 存在時、ジョージはミリカに襲いかかった。

 彼は驚いたまま動けない彼女の肩を掴み、顔を近づける。

 彼は、今にも首筋に噛み付きそうなくらい暴れる。

 そして、彼女は突然の事に慌てる。



「ミリカ、今度は俺が助ける番だこの間の借りを今な・・・」


 ジョージは噛み付く振りをして、ミリカの耳下で囁く。

 それに対して、彼女もヒソヒソ声で返す。



「分かったわ、ジョージ、ありがとっ! もう一芝井打ってみるねっ」


 ミリカとはジョージは芝井を続ける。



「いやああたっ! 助けてえぇぇぇぇ」


 こうして、ミリカは芝居を行い。

 元仲間だったゾンビに噛みつかれようとしている、人間の女性の振りをした。

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