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【西郷隆盛・伊藤博文】それ、初めてみたんだけど

 西郷隆盛は、自分が感じる焦りの波を必死に押し込めていた。しかし、その心は既に壊れかけていた。反乱軍との戦闘が長引き、陸軍の犠牲は増すばかりだ。



 最も頭を悩ませているのは、アメリカ人が使う「全自動式機関銃」という新型兵器だった。その威力と恐ろしさに、陸軍は一度も近づくことすらできず、死体の山を築くばかりだった。まるで銃弾の雨が降るような状況だ。連続して発射される銃弾は、敵を目の前にしながらも、何もできずに死んでいく兵士たちを無慈悲に襲った。戦線を維持するのが精一杯で、ついに次第にその兵力を削られつつあった。



 その時、伊藤博文からの催促の電報が届いた。伝えられたのは、鎮圧の報告を早急に求めるという内容だ。西郷の胸は締めつけられるような思いでいっぱいになった。もし、このまま戦局が続けば、彼の名誉は失墜し、ひいては陸軍大将の座をも剥奪されかねない。それだけはどうしても避けたかった。



 だが、目の前の問題は深刻だ。アメリカ人の兵器には太刀打ちできない。何度試みても、突撃しても無駄だ。それならば、別の方法を考えるしかない。西郷はしばし考えた後、暗い決意を固める。「夜間の奇襲だ」そんな思いが脳裏をよぎる。だがその矢先、「伊藤首相からの使者が着きました」という報告が入る。それがまた、西郷を更に追い詰める。伊藤の側近が来たということは、もう隠し通せるわけもない。


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「つまり、今回の問題はアメリカ人が使う兵器にあると?」伊藤の側近が尋ねた。



「その通りだ」と西郷は答える。「あの機関銃、奴らは手品のように一人で何発も撃ち続ける。そのため、我が軍は近づくことすらできない。鎮圧にはまだ数か月はかかるだろう」



その言葉に、側近は驚愕し、「数か月!? そんな報告をすれば、私が殺されかねない!」と叫んだ。しかし、西郷はただ冷静に言葉を返した。「それが現実だ。伊藤首相も理解してくれるだろう。だが、この間にメキシコでも反乱が起きるかもしれない。少なくとも、俺ならそうする」



「そんな……。早く鎮圧してください!」側近が必死に訴えるが、西郷は内心でふと考える。 「側近も伊藤博文そっくりになってきたな」 彼の焦りとプレッシャーが、もはやその言葉の裏に隠されていないことに気づく。


**


 その後、西郷は部下たちと共にアメリカ兵器の解析に取り組み、ついにその兵器が「全自動式機関銃」であることを突き止めた。その原理は理解できたものの、軍の技術力では到底同じものを作ることは不可能だった。西郷の心は完全に折れ、彼は決意を固める。「軍人たるもの、切腹して責任を取るべきだ」と。自室に籠り、一人でその覚悟を決めた瞬間、遠くから砲撃の音が響いた。それが、彼の運命を一変させる音だった。



 西郷はその音に反応し、外に飛び出した。すると、海岸線の向こうに煙が立ち上るのが見えた。その煙の向こうには、港があることが分かった。「あれは……」と西郷の胸に希望の光が差し込む。それは、勝海舟率いる海軍が助けに来たのだと確信した。もしも海軍の支援があれば、勝利の可能性は格段に高くなる。すぐに指揮官としての冷徹な判断が働く。 「挟み撃ちだ」 彼はその一言で、作戦を決めた。



 前回のメキシコ攻略戦では陸軍が協力し、今回も海軍の援軍があれば勝機が見えてくる。戦局が一気に有利に傾くと信じ、彼は再び戦場へ向かう決意を固める。「これなら勝てる。いや、勝ってみせる。」その心に誓いを立て、戦いの準備を進める。


**


 数日後、伊藤博文はようやく西郷からの報告を受け取る。内容は謝罪とともに、アメリカ人が使っていた「全自動式機関銃」が回収されたというものだった。側近はその銃を持ち帰り、伊藤の前に差し出した。「これがわが軍を苦しめた武器です。アメリカ人からはすべて取り上げました」



 伊藤博文はその武器を見つめ、その恐ろしさに背筋が凍る思いだった。「西郷が手間取るのも仕方ない」と彼は心の中で感じる。この武器の存在が、今後の戦争の行方を左右する重大な要素になると直感した。「これを量産しなければならない」その決意が固まった。伊藤はすぐに側近に命じた。「この武器の考案者はどこにいる? そいつを捕まえて、構造から作成方法まで職人に教え込んでもらえ!」



 側近は少し躊躇し、答えた。「その武器の考案者、今回の戦争で捕虜にしましたよ」


伊藤の目が鋭く光る。「ならば、今すぐその者を連れてこい」

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