アメリカを完全に征服した伊藤博文は、その偉業を達成したばかりの人間とは思えないほど、軽やかな足取りで歩いていた。普段の彼なら、冷静に周囲の状況を観察し、次なる一手を練ることに集中しているだろう。しかし、今はその勝利の余韻に浸り、心の中で一つひとつの成果をかみしめている。戦争での犠牲者たち、あの血のにじむような日々を経て、ついに手に入れたアメリカという大陸。その圧倒的な力を手に入れたことに、彼は喜びを感じていた。
目の前に広がる世界地図を思い浮かべると、彼の中に新たな野望が湧き上がってくる。アメリカという新たな領土を支配することによって、伊藤博文は世界に対する支配力を確実に強化した。しかし、彼の野望はこれにとどまることなく、さらに先を見据えていた。軍事力の強化とともに、経済の発展が欠かせないということを、彼は十分に理解していた。
アメリカを征服しただけでは、世界に君臨する国家として安定した未来を築くことはできない。むしろ、これからが本当の挑戦だと彼は感じていた。経済の発展こそが、国を支える礎となり、次なる戦争への準備も進めるための重要な要素だ。財力がなければ、戦争を支えるための物資や兵器の供給も難しくなる。そうして、国内の経済を活性化させ、次の段階に進むための準備を着々と進めていった。
「最近、海外で発明されたもので、我が国にとって有益なものはないだろうか?」
伊藤博文は、経済発展のために新しい技術を取り入れることの重要性をしっかりと理解していた。技術革新こそが国力を強化し、時代を先取りする力となる。彼は、常に時代の先端を行く人間であり、未来を予測してその道筋を作ることに長けていた。
「そうですね……。最近、電話機というものがありますが」と側近。
その言葉に、伊藤博文の目が一瞬輝いた。新たな発明、電話。この技術がどれだけ画期的であるかは一目瞭然だった。世界中を瞬時に結ぶ通信手段は、経済の活性化のみならず、軍事的にも非常に有用なものとなるだろう。彼は即座に指示を出し、電話の製造とそのための通信網の構築を始めた。さらに、交換手の募集を行い、新たな雇用を生み出すことを考えていた。
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その後、電話は急速に普及し、国内外との連絡が格段に速くなった。遠くの地方や外国とのビジネス取引がスムーズに行えるようになり、物流や製造業も一層効率的に進んでいった。電話網の普及により、企業間の連携も強化され、国内経済は飛躍的に成長した。その上、電話交換手として働く女性たちの登場は、社会全体に新たな変革をもたらし、女性の社会進出が加速していった。
これまで女性に与えられなかった選挙権を認めるという決断は、国内外に大きな反響を呼んだ。国内では新しい時代の象徴として歓迎され、特に政治的な安定をもたらすと期待された。また、世界各国、特に先進国からはその先見性に賛同の声が上がった。
フランスからの反応もまた、伊藤博文にとって嬉しいものだった。彼の改革が国際的にも高く評価され、フランスは大日本帝国との同盟を提案してきた。日本が新たな経済大国、軍事大国として台頭する兆しが見え、伊藤博文はその流れに乗ることを決意した。
この新たな道を切り開く力は、間違いなく伊藤博文のものだった。彼の野心は、もはや一国の指導者としての枠に収まりきらない。彼は、世界の覇権を握るための確固たる道筋を描いていた。そして、その先に待つ未来に、ますます確信を深めていった。
「すべては天皇陛下のために」
そう呟いた伊藤博文は、窓の外を見やる。さらに国が発展するにはどうすればいいのか。フランスと同盟を組むべきか、他の一手を打つべきか。伊藤博文の決断が未来を左右する。フランスと同盟を結ぶべきかについて、彼は一つの答えを出していた。その答えを知るものはまだ誰もいない。