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第13話:初クエスト(6)

 ゴーレム軍団を指揮していた巨大ゴーレムを破壊した。それによって、ゴーレム軍団は瓦解する。ゴーレムたちは四方八方へ逃げ出す。


 逃げ惑うゴーレムたちをミッチーが操縦する装甲車もとい機関銃を装備した輸送車が追い掛け回す。


"ミッチー……"

"なんとかに刃物ってやつ?"

"私は戦争が好きだ!"

"掃討戦が好きだ!"

"クリーククリーク!"


 ヨッシー自身は追討しないつもりであった。だが、今のミッチーを止める手段などない。ミッチーの気が済むまで、やらせておくしかなかった……。


「義昭様。それでは自分はこれにて戻ります」

「おお、顕如殿。ご助力感謝でおじゃる」


 顕如の石頭には助けられた。また今度、助けてもらおうと思えるほどの活躍ぶりだった。


 別れを惜しみつつもゲートを開く。顕如が丁寧にお辞儀をして、元の世界へと戻っていく。


「将軍様ーーー!」

「おお、謙信殿! そちらもかたがついたでおじゃるか!」

「ゴーレム500体。全て駆逐完了しましたぞ!」


"えっ……この軍神、強すぎない?(´・ω・`)"

"存在がチートすぎるな"

"ここ、難易度SSダンジョンですよね?"

"【悲報】ピンク髪スケバン刑事JKが無双しすぎたせいでJCヨッシーの出番がない"

"JCヨッシー、強く生きて……"

"何言ってんだおまいら。JCってだけで存在価値爆上がりだろ!"

"でもJKには勝てないから……"

"JCの需要はロリコン層のみ"

"なんでや工藤! JCは至高だろうがっ!"


 コメント欄でまたもやJCvsJKバトルが始まってしまった……。ヨッシーは自分の罪深さを呪うしかなかった。


「将軍様……黒髪ツインテールJCのお姿、うらやましく思いますぞ」

「いやいや。おさげのセーラー服JKもなかなかに視聴者のツボを押さえているでおじゃる」


 コメント欄では戦争が勃発しそうであったが、こちらは謙信と仲良く握手する。ロリコンには厳しい世の中だ。それでもJC好きとJK好きの両方が存在していいのだ。


 これこそ、お互いを認め合うというという尊い行為だ。


"俺たちも仲直りしようぜっ"

"そうだな……JCとJK、どちらにも良さがあるっ"

"ふっ。つまんねーことでいがみ合っちまったぜっ"

"JCとJK、どちらも日本の宝だよなっ"

"【悲報】わい氏、JD好きとは言えない雰囲気になる"

"JDはババア"

"おい、待て"

"久々にキレちまったよ……"

"屋上へ行こうぜ(`・ω・´)"


 せっかくコメント欄が落ち着いてきたというのに、JDというワードが出てきた瞬間、また荒れだした。


 ヨッシーはモニターから視線を外し、ゲートの向こう側へと進む謙信を見送った。


 この頃になって、ようやく装甲車を操るミッチーがこちらへと戻ってきた。ハッチを開けて上半身を出し、さらには煙草を咥え、ジッポで火をつけた。


「ス―――、ぷはぁ。一仕事終えた後の一服は最高でござる」

「おぬし……清々しいまでにやらかしてくれたでおじゃるな!?」

「ん? やりすぎの追討戦のことでござるか?」

「そっちじゃないわい! 装甲車のことじゃわい!」


ーー追討戦。崩壊した敵に追い打ちをかける戦いだ。時代が時代ならば、相手の命だけでなく、鎧や武器もはぎ取る。まさに戦場のリアルな地獄がそこに展開される。


 これを嫌ったのが意外なことに織田信長だ。


 織田信長は本願寺勢や武田勝頼に対してだけ、彼らを徹底的に潰した。それ以外では軍規の乱れになるとのことで、熱心な追討戦は兵たちに行わせなかった。


 しかしながら、今回、ノッブはゴーレム軍団に対して、ミッチーを止める様子は見られなかった。


 そうして良いと判断したのであろう。だからこそ、自分もミッチーが逃げ惑うゴーレムたちを装甲車で轢き殺しまくったのは不問にしておく。


 問題は装甲車そのものだ。


「ロケットランチャーでも国会が紛糾しておかしくないのに、何故に装甲車を呼び出したのじゃ!」

「ふむ? 装甲車を呼び出したのは拙者ではござらぬ。主君であるノッブ様でござる」

「あ、あれ?」


 意外な返答であった。拳銃やロケットランチャーなどの武器の類を呼び出せる何かしらのスキルを所持しているのだろうと予想できた。


 だが、装甲車は別であるとミッチーにきっぱりと言われた。ならば、ミッチーはただ単に装甲車を運転していただけである。


 ノッブの方を見た。ノッブがきょとんとしている。


「ノッブ殿……?」

「ん? ミッチーが言っていることは本当ですけど」

「おぬしかっ! そもそもの原因はっ!」

「ははは。ロケバスではゴーレム軍団に突っ込むのは無理がありすぎます。ロケバスが大破しちゃいますからねっ。ここは装甲車でしょう!」

「アホかー!」

「でも、聞いてください。自衛隊の装甲車って、輸送車扱いなんですよ?」

「へっ!?」


 ノッブの言っている意味がよくわからなかった。そんな自分に対して、コメント欄に補足が流れた。


"ノッブの言ってることはマジなんだぜ……?"

"うんうん。なぜかわからないけど、輸送車にたまたま偶然機銃がついてるだけなんだよなぁ!?"

"紛争地帯で護身用に機銃が後付けで装着できるようになってるだけなんだよなぁ!?"

"憲法第9条には違反してないんだよなこれが……"

"自衛隊の皆さま、かわいソース"

"けっこう前のPKO派遣の時に拳銃しか持たされなかったから、それはさすがにアカン……って他国からツッコミが入ったんだったよな"

"そうそう。日本国内では機銃は装着してないんよ。他国の紛争地帯ではさすがに機銃装着OKになった"

"でも発砲はかなりヤバすぎる時だけに限られてるけどな……"

"やっぱマジで憲法改正したほうがいいと思うんよな……"


 なるほど……とコメント欄を読むしかないヨッシーだった。


 これくらい総理が知っておかなければならないと思えるが、そもそも国会では武器の使用云々の前に自衛隊に関する発言をすること自体が禁忌とされている。


 そうであるがゆえにヨッシーの不勉強は許されるという矛盾が起きていた。


「こほん……これは輸送車じゃ! 装甲車ではないのでおじゃる!」

「理解が早くて助かります。ミッチー、一応、機銃は外しておいてもらえますか?」

「え……マジで言っているでござるか!?」

「ヨッシーが壊れてしまいますからね☆彡」


 ミッチーが渋々と言った感じでゲートから現れた自衛隊とともに装甲車から機銃を取り外す。


 これからの道中、まだまだモンスターが現れるであろう。だが、それでも内閣支持率の方が大事だ。


 言っていることは自分でもクソすぎるという自覚がある。自衛隊の気持ちがわかる気がしてならない。


 総理が自身の内閣を守るために武装解除するのだ。こんな噴飯な話は他国なら起きるはずもない。


 ミッチーが自衛隊の皆様に代わって、わざとらしく大きく「チッ!」と舌打ちしてくれた。心の中で自衛隊の皆様に土下座モード全開しておく。


「さて……悪い魔法使いを倒しにいくのじゃ!」

「そうですね! 輸送車で頑張りましょう!」

「うんうん。輸送車でなんとかするのじゃ!」


 ヨッシーたちは装甲車改め輸送車に乗り込む。さすがは8輪走行だ。舗装されてない道であるにも関わらず割と快適に走ってくれる。


 ロケバスよりかは遥かに乗り心地が良い。ヨッシーたちを乗せた輸送車はどんどん突き進む。途中でゴブリンみたいな何かをグチャっと轢き殺しているが一切合切無視だ!


 ヨッシーたちは順調に西へと進む。だが、森林地帯の入り口に差し掛かったところで、輸送車が止まってしまった。


 運転席に座るミッチーが後部座席のこちら側へと振り向いてきた。


「どうするでござる?」

「どうするって……いつものように突き進めばいいのでおじゃる」

「……はぁ!?(クソでかため息)」

「なんじゃ、その態度はっ!」

「……はぁ!?(重ねてクソでかため息)」


"Oh……これはヨッシー。無能指揮官"

"見通しの良い平地ならいざ知らず、森林地帯に武装も何もない輸送車で突っ込むとか……"

"俺ならこんな無能、ぶん殴ってる"

"強く生きて……ミッチー"


「誰もわっちの味方がいないでおじゃるー!」

「よしよし。先生はヨッシーの味方ですよ」

「頭を優しく撫でるなでおじゃる! トゥンクしてしもうたわ!」

「ふふ……そのまま身体も心も先生に委ねてください?」


 ノッブが溺愛スパダリの気質を否応なく発揮してきた。このままではノッブの優しさに包みこまれてしまう。


 ミッチーはこれ以上、輸送車を前に進める様子を見せない。ミッチーの判断は正しいのであろう。だが、ここで立ち往生することになる。


「わかったでおじゃる! わっちが援軍要請するでおじゃる!」

「外した機銃の分の働きをしてくれるくらいの人物を寄こせでござる」


 なんとも冷たい言い方をするミッチーであった……。


 戦国時代ではノッブと自分の間に立ってくれて、時にはこちらの意向をノッブに押し通してくれたりもしてくれた。


 だが、今のミッチーは蛇蝎を見るような目を向けてきていた……。


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