目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第28話:バグきのこ(1)

 信玄を送り返したすぐ後、ヨッシーのスマホがぶるぶると震えた。何事かと思い、スマホを懐から取り出す。


「……信玄殿からLINEメッセージがきたでおじゃる」

「どれどれ? わぁ……めっちゃおじさん構文」

「拙者にも見せてほしいでござる。えっと……わぁ……めっちゃおじさん構文でござる」


 ノッブとミッチーですらドン引きしていた。


―――――――――――――――――

チュッ。今日は楽しかったよ? ( ^ω^ )ニコニコ。


ヨッシーと撮った写メを見てるとまた会いたくなっちゃった。(´;ω;`)ブワッ。


また呼んでね? わしの格好いいところ見せちゃうから。(;゚∀゚)=3ハァハァ。


P.S.今度はもっとエッチな写メが見たいニャン。1枚5000円で買うニャン。(∩´∀`)∩ワーイ

―――――――――――――――――


 信玄が変な気を起こさないように、TVカメラに向かって、信玄のおじさん構文メッセージを見せつけた。


"うっわ、きっつーーー!"

"さすが信玄。ラブレターメッセージの大御所だぜ!"

"俺も気を付けないとな……"

"気をつけるって、何を?"

"そりゃおめー、エロ写メ送って? ってメッセ送って、それを晒さること"

"おまりわーん、こいつです"

"おい、やめろ。俺がエロ写メを要求してる相手はJDだ"

"【審議中】 ( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )"


 コメント欄が賑わってくれている。それに合わせて、ほんのりと内閣支持率が回復してくれた。


 どうやら、自分に同情してくれるひとが少なからずいるようだ。信玄からのLINEメッセージを晒した甲斐があった。


 ヨッシーはスマホを懐に仕舞う。そうしている間にも地面に倒れているミノタウロスの方へと女神がつかつか歩いて近づいていく。


「えいっ(ぶちっ!)」

「チョオマ! 何をしているのでおじゃる!?」

「何って……バグの原因となってるっぽいきのこをむしり取っただけよ?」

「ミノタウロスが起きたら、どうするつもりだったのじゃ!?」

「大丈夫、大丈夫。わたくしはここの世界のゲームマスターだもん。わたくしが作り出したモンスターに襲われるわけがないわっ!」


 女神がこちらに向かって、空いた手でVサインをしてきた。しかし、女神の後ろでのっそりとミノタウロスが起き上がった。


 頭が割れて、目玉がデロンと取れかけているというのに、ミノタウロスが動いた。そのことに驚きを隠せない。


 女神は後ろに立っているミノタウロスに気付いていない。ミノタウロスが両手を握りこんで、さらに振り上げた。


「ぶもあああ!」

「ん? キャアーーー!」


 一刻の猶予もない。すぐさまミノタウロスを倒さなければならない。素早く足を動かす。ミノタウロスの懐へと飛び込む。


「鹿島新當流が一の太刀……でおじゃる」


 腰に佩いた刀を一閃させた。チンッという音とともに刀を鞘に納めた。ミノタウロスの肘から先が宙を舞った。


「熊さえ撃ち殺せるコルトパイソン357マグナムの威力を喰らえでござる(パーンパーン!)」


 ミッチーがこちらに合わせてくれた。ミッチーが拳銃を発砲する。坑道内に乾いた音が響き渡る。


 ミッチーが放った弾丸は全弾、ミノタウロスの頭に吸い込まれていく。威力を吸収しきれなかったのか、ミノタウロスの後頭部がスイカのように弾けた。


「うわっ、グロッ! んもう。ヤるならヤるって一言言ってよね? わたくしのドレスが血で汚れちゃうじゃないのっ!」

「この駄女神……自分の命よりもドレスのほうを気にしているでおじゃる」

「剛毅な女神様ですね。しかし……飛び散った脳漿のうしょう自体に菌糸が絡みついています」


 ノッブが皆の視線を誘導してくれた。信玄が倒し損ねたというよりかは、ミノタウロスはバグきのこによってゾンビ化していたのだろうと女神が教えてくれた。


「う~~~ん。バグの原因はわかったけど、これじゃ対処療法だわ」

「どうしたのじゃ? ミノタウロスは倒したから、これで終わりではないのかえ?」

「ちがうちがう。ミノタウロスはこのバグきのこに寄生されたの」

「あっ察し。この大元のバグきのこをどうにかしないといけないわけじゃな?」

「そういうこと~。ノッブ、焼き払ってきてくれる?」

「……ヨッシー、援軍要請を」

「……ノッブ。きのこに寄生されたら、少しはまともになるんじゃないでおじゃる?」

「得体の知れないものに近づきたくありませんよー? あと、先生は至って正常です」

「どの口で言っているでおじゃる?」


 好奇心が強すぎるノッブにしては珍しく拒否してきた。火炎魔法を使えるノッブがこの場で一番適役である。


 しかし、ノッブはその場から動こうとはしない。今回はいやに警戒心が強い。不思議に思い、ノッブに改めて聞いてみた。


「端的に言うと……野生のきのこが苦手なんです。戦国時代にその辺に生えたきのこをパクっと食べたら、腹痛と眩暈と吐き気に襲われたので……」

「おぬし……すでに好奇心ばりばりに発揮していたのでおじゃるな……」

「スーパーで売ってるきのこなら安心して食べますけどねっ」

「おぬし……それはそれで割り切っててすごいでおじゃるな!?」


"ノッブでも苦手なものがあるのか"

"いやまあ、野生のきのこに手を出して、生きてるノッブもすげえよ"

"ノッブがそれで死んでたら、日本の歴史が変わってただろうな?"

"歴史の教科書に「織田信長、野生のきのこで食中毒を起こして死んだ」とか書かれてたら、授業中なのに大爆笑しそう"

"そういや、俺、徳川家康が天ぷらに当たって死んだってのに吹いたなw"

"ちなみにあの当時の天ぷらは健康食なんだっぞい"

"健康食で当たって死ぬとか、いやすぎるw"

"んま現代でも健康用サプリで健康被害とか普通に起きるからなぁ……"

"ちなみにノッブは何で野生のきのこを食べたんだろ? 同じく健康に良さそうだったから?"


 コメント欄が賑わっている。自分も気になったのでノッブに詳しく聞いてみた。


「戦国時代の京の都って、椎茸を調理して食べてたじゃないですか」

「うむ。わっちもよく食べたのう。寺に出された子じゃったから」

「なので、舞茸にもチャレンジしたんですよ」

「あっこいつ……」

「いやあ……油断しました。まさか舞茸そっくりの毒キノコがあるなんて思いもしませんでしたよ」


 戦国時代において1番に食べられていたのは椎茸だ。その次に人気だったのが舞茸だ。室町時代から戦国時代にかけて、犬を使って舞茸を採るのが流行った。


 だが、それと同時に舞茸に似た毒キノコで命を落としかける者も続出した……。


「そ、それは災難じゃったな?」

「はい。当たりを引くと天国に昇る気分になるのですが、ハズレを引くと天国に召される気分になります」

「……お、おう」


 もう、ツッコミが追い付かない。それよりもバグきのこをどうにかしなければならない。信玄はすでに追い返してしまった。


 もう1度呼んでみようかと、スマホを取り出す。しかし、LINEアプリを立ち上げた瞬間、軽く眩暈を覚えてしまった。


「……これが40代のエロ大好きおじさんのパワーでおじゃるか!?」

「40代のエロ大好きおじさんのパワーを舐めていましたね」


 スマホの画面をノッブに見せる。ノッブは「たはは……」と苦笑している。こちらがメッセージに既読マークをつけていないというのに、信玄からのメッセージが10件以上、ずらりと並んでいた。


 しかも1文ごとに顔文字が添えられている……。


「ふぅ……信玄殿はラストウェポンじゃな……」

「そうですね。さすがは織田徳川をボコった信玄殿です。あのひとを止めれるヒトは現代日本でもいませんね」


 ヨッシーは仕方ないとばかりにミッチーにスマホを渡して、今の自分の姿を撮影してもらう。


 そのうちの数枚の写メを試しに送ってみた。すると、20行に渡るLINEメッセージが飛ばされてきた。


 これぞ、40代エロおじさんパワーなのだろうと思いながら、スマホをスッ……と懐に仕舞う。


「さて……信玄殿はやはり却下なのじゃ!」

「では、誰に犠牲になってもらいましょう?」

「ここは越後の龍と呼ばれた謙信殿の出番じゃな!」


 そうTVカメラの前で言った瞬間、スマホが間断なく震えまくった。スマホの画面を見るまでもない。きっと信玄がワンモアチャンス! とメッセージを送ってきているに違いない。


 LINEアプリを立ち上げて、信玄アカウントからのメッセージを目に入れないようにしつつ、新潟県知事の謙信にメッセージを送ってみた。


 すると、返事がすぐにやってきた。スマホから発する光を地面に当てる。そうすることでゲートを開く。


 そのゲートの向こう側からものすごく顔色の悪いJK謙信がやってきた。


「ちょおま! やってくるなり吐きそうな顔をしているでおじゃるよ!?」

「うぇっぷ! 二日酔いにこの魔素はきついですぞ! おえっぷ!」

「誰かエチケット袋を持ってくるでおじゃる! 放送事故が起きかけているでおじゃる!」


―――――――――――――

現在、JKのエロエロエロ……すぎる放送事故が起きました。

代わりにキレイなお花畑をご覧ください。

提供:日本放送協会

―――――――――――――


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?