ドミルコからプメールにワープし、外交都市 マトシリカに向かうことにした。
「ここからは荷車で移動だ。カメ吉、頼めるか?」
「任せてくだせぇ親分!!」
ここからは荷車の旅だ。マトシリカまでどのくらいかかるのだろう。
考えても仕方がないし、久々の旅を楽しもう。
しばらく走り、右側に城壁が見えた。
「あれは王都の城壁か?」
「そうだと思いますよ。今は入らない方がよいかと思います。ドミルコで買い物をしている時に聞いたんですが、王都の中は今、戦争の準備をしているみたいです。」
「そうか。獣人国のこともあるし、少し気になるな。今は素通りで行こう。」
獣人国との戦争。リアみたいに奴隷にされた獣人もいるかもしれないな。
そしてまた戦争。今度はどこと戦争を始める気なのか。
人間はどこへ行っても争うことが好きな種族だな。反吐が出る。
王都にも行く機会があるだろう。注意して行く必要があるな。
数日過ぎた頃、いつものように荷車を走らせていると、目の前に盗賊に襲われている人がいた。
「盗賊に襲われているようです!!助けましょう、ひなりさん!!」
「いや、みんなはここにいて。俺が様子を見に行く。」
「一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。すぐ戻ってくるから。」
この世界に来て、モンスターや動物を狩ることはできた。
でも人間はまだ殺したことがない。俺は人間を殺すことができるのか。
ー前世で自分自身を殺しただろう。
そうだ。そうだった。俺はもうこの手で自分を殺している。
今更人間を殺せるかだなんて、無意味な感情だった。
それに盗賊も、人を襲い儲けている。その盗賊も襲われる覚悟くらいはあるだろう。
「どうも、みなさん、こんにちは。どうやら楽しいことをしているようで。」
「はぁ?なんだてめぇ。この状況が分からないのか?」
「えぇーと、あなたは見たところ商人の方でしょうか?」
「は、はい!そうです!どうかお助けください!!お願いします!!」
「わかった。それじゃ彼らを殺してしまっていいんですね?」
「は、はい、そいつらは賞金首のラビ盗賊団です!!倒せば報奨金もでるはずです!!」
「分かりました。」
ラビ盗賊団、5人か。それなりに悪さをしているやからだろう。
殺して首をギルドに持っていけば確かに金にはなる。
なるが、それではこいつらの罪はどうなる。
ただ殺して終わり?それでいいのか。
そういえば・・・『禁忌録』に隷属魔法があったな。
奴隷に落としてこの世界のために働いてもらうのはどうだろう。
殺すよりも残虐なやり方だ。だが、罪を償うにはいいだろう。
それに、この魔法を試すには絶好の機会だ。
俺は一旦荷車に戻った。
「みんな、盗賊団らしいから捕えてプメールのギルドまでワープしてくるよ。」
「私もついていきます!!」
「大丈夫!一人で大丈夫だから。」
さて、試すとするか。
「最後に言い残すことは何かありますか?」
「はー??何言ってんだこいつ?やっちまいましょうぜ兄貴!!」
「おうよ!ガキにはちゃーんと躾けてやらねーとな!お前ら!やれー!」
5人一斉にかかってきた。
「隷属魔法、身分を『隷属』に。」
そう俺が唱えた瞬間、5人は苦しみだした。
そして、彼らの首、手首、足首に、首輪に手枷足枷がついているように見える。
これはタトゥーか?
いや、よく見たら細かい文字が書かれていた。
その文字の集合体が首輪のように見えていたのだ。
何の文字か分からない。
日本語でもないし、この世界の言葉でもない、知らない言葉だ。
なんにせよ、上手くいった。
ー5人を身分『隷属』に設定しました。命令を設定してください。
なんだ!?頭の中で文字が!?
命令の設定?どんな命令にするか・・・ということか。
それじゃぁ。
「命令する。お前たち5人は、この世のために人のために奉仕し、一切の危害を許可しない。」
ー命令を設定しました。
これでいいみたいだ。
よし、プメールまで移動しよう。
ワープ!
俺は5人を引き連れて、プメールの路地裏にワープした。