あぁ、久々に眠い。この2日間の授業の疲れが出たのだろうか。
眠さが勝っている。しかもいい香りでより一層深く寝れそうだ。
「起きてくださいまし、灯生様。朝食の用意ができております。」
「もう少し寝させてよ・・・。もうちょっと・・・。」
「今日はお祭りに行かれるのでは?朝食も冷めてしまします。」
「ん~、そうだった・・・。はぁ~眠いたい~・・・!?」
俺は少しずつ目を開け・・・ち、近い!?顔が!?近すぎる!?
久々のこれか・・・。ロータスの整ったきれいな顔が目の前に!?いい香りがすると思ったのはこういうことか・・・。
「あ、あの、ロータスさん?」
「はい。何でございましょう?」
「近いです・・・。」
「あら、すみません。寝顔がかわいかったものですから。」
なんなんだこのメイドさんは!?かわいいのは君の方だとは言えない、ぐぬぬ~。
「起きるからちょっと待ってて。」
「わかりました。」
ー食卓にて。
「ひなりさんひなりさん!食べ歩きしましょー!お祭りなんて初めてです~!!」
「あー!リアもご主人様と一緒に食べ歩きするぅ~!!」
「2人とも!あたしたちもいるんですけど。」
「僕も兄ちゃんとお祭り、楽しみ!」
「最近はみんなそれぞれだったからなぁ、久々にはっちゃけようか!」
「いえぇーい!!」
朝から元気のいいことで。まぁでも久々の休日だからな、楽しまなきゃ!
「ロータスも行かないにゃ~?」
「私はメイドですから、お屋敷のお仕事がありますので。」
「今日ぐらいいいよロータス。灯生様と一緒に行ってきなさい。」
「承知いたしました、ネルビア様。それでは私もご一緒いたします。」
「やったにゃ~!」
「ロータスさん、よかったですね!」
たまにはメイドの仕事を休むのも息抜きになるかな。少し気合が入ってしまう!!
俺たちは出かける準備をしてサリヴァン魔術学校の城下にある広場へ向かった。
広場には神獣と呼ばれる鳥のシャスティフォルと思われる鳥の飾り付けがそこら中に彩られていた。
普段の広場とうって変わって出店が立ち並んでいた。
「出店のいいにおいが~!」
「さっき食べたばかりじゃないですかー。」
「ご主人様〜!早く行くにゃ〜!!お肉にゃ~、串焼きにゃ~!!」
「僕も兄ちゃんと行くのー!!」
「はいはい、みんな焦らない!串焼きは逃げないよ~!」
「ロータスも速くおいでー!」
「は、はい・・・。」
少し遠慮してるのだろうか。手を掴んでやるか。
「ほら、行くよー!」
「は!はい!」
なんだろう、この気恥ずかしさは。初めてデートしている気分だ。
俺たちは出店で買い食いをしては歩き回り、不慣れなロータスの手をとって楽しんだ。
少し疲れたのだろうか、木陰のベンチでロータスと休むことにした。
「ロータス、大丈夫?ほら、水飲みな!」
「あ、ありがとうございます・・・。ゴクッゴクッゴクッ」
いかんいかん、飲んでる姿をガン見してしまう〜!
「あまり外に出かけないの?」
「そうですね。メイドの仕事があるのでほとんどはお屋敷内にいます。」
「そっかぁ、じゃぁ今日は来てよかったね!たまにはこういうのもいいでしょ?」
「はい!とても新鮮です。このお祭り、一度は来てみたかったので。今日は連れ出していただいてありがとうございます!」
え、笑顔が、かわいい!!!!!!
前世の俺ならもう付き合ってたわ〜!!とか思う俺はキモいな・・・。
「初めて来てみてどう?楽しい?」
「はい!とっても!」
はーい、最高の笑顔いただきましたー!!
心臓にぶっささるわー!!!!!
「ロータスはミンチェスター邸に来てどれくらいになるの?」
「あのお屋敷は出来た当初からおりまして50年ほどおります。でもミンチェスター家にお仕えして300年ほどになるでしょうか・・・。」
んーーーーーー?なーーーーーにーーーーーー?
どゆこと?屋敷が出来た時からいる?50年?それから300年?
魔人族ってそんなに長寿だったの!?
「あ、あのー、ロータスさん?ロータスさんって魔人族ですよね??」
「え!?あ、いえ、違いますよ!ヴァンパイアです!」
え!?ヴァ、ヴァンパイア!?あの血を吸うあのヴァンパイア?
「あっ、そうだったのか、てっきり魔人族かとばかり・・・。」
「ヴァンパイアを見るのは初めてですか??」
「まぁね!ちょっとびっくりしちゃった・・・で、でも日光に当たっていいの??」
「あ、私はヴァンパイアの中でも上位のヴァンパイアクイーンなので大丈夫です!」
ヴァンパイアにクイーンなんてあるのか・・・。まだまだ世界は広いな・・・。
「そ、そうなんだね・・・その血を吸ったりとかは?」
「しますよ!それが食事なので!たまに灯生様のも吸っております!」
衝撃の事実。いつの間に!?あの朝目覚めた時に近かったのは血を吸ってたからか??
「もしかして・・・朝吸ってたの?」
「あーバレちゃいましたか!すみません!灯生様からは、その・・・美味しそうな香りがして・・・ちょっと味見するつもりだったんですけど!!あまりの美味しさにちょっと止まらなくなってしまって・・・。」
あぁ確信犯だわー。でもヴァンパイアに吸われたらヴァンパイアになるんじゃ?
「まぁそれはいいとして、血を吸われたら眷属になるんじゃないの?」
「私より下級の者はそうなりますが、灯生様は私より上位の存在なのでなりませんよ!それより・・・また吸ってもいいってほんとですか・・・?」
なるほど、そういうことなのか、ふむふむ・・・。俺はどんな存在なんだ~??
「そんなに俺の血って美味しいの?」
「それはもう!!300年近く生きていますがこんな美味しい人、初めてです!」
「そ、そーなんだ・・・。まぁたまにならいいかなー。」
「ありがとうございます!美味しくいただきます!!」
なんだろこの複雑な感情。美人のメイドさんが実はヴァンパイアで、300年近く生きていて、朝に俺の血を吸っていた、という衝撃の事実。なんというか・・・もうなんでもいいや!俺は考えるのを諦めた。
その後もみんなで広場を見て回り出店巡りをして1日は終わった。